タバコ・禁煙

iQOS(アイコス)も肺がんリスクあり!iQOSのウソ・ホント

【医師が解説】iQOSとタバコはどっちが体に悪いのでしょうか? すっかり定着した加熱式タバコ・「iQOS(アイコス)」ですが、タバコと違い火を使わず、煙も出ず、ニオイが少ないという特徴があります。「アイコスで禁煙」といった間違った捉え方もまだあるようですが、肺がんリスクなどがある点は覚えておかなくてはなりません。アイコスの健康・肺への影響、タバコとの違いなどを解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

iQOSはタバコとどう違う? 煙が出ず臭くない、肺に悪くないタバコ?

アイコスとタバコの違い

最近目にするようになった新しいタバコ、iQOS(アイコス)。ニオイも煙もほとんどないタバコとして売れているようですが…

先日のこと、とある方と会食することになりました。業界の大先輩でもあるその方は、ヘビースモーカーというよりも、チェーンスモーカー。ひっきりなしにモクモクとタバコを楽しまれます。人当たりも柔らかく、お話も面白いので、あっという間に引き込まれてしまうのですが、いつも家に帰ると洋服や鞄、髪の毛や体全体にもタバコのニオイが付いてしまい、それだけが少し憂鬱な悩みの種でした。

しかし、その日はちょっと様子が違いました。いつものようにビールで乾杯したあと、机の上にぽんっとおかれたのは見慣れない黒い入れ物と黒い筒状の機械。そして、おもむろにポケットから箱を取り出すと、そこには見慣れた西洋タバコのロゴが……。しかし、その箱は普通のタバコよりもちょっと小さく、その中から出てきたのは、普通のタバコの半分ぐらいの長さのものでした。

思わず、「それ、タバコなんですか?」と聞いてしまいましたが、これが私が初めて見たアイコスでした。「最近、迷惑かけるから、これにしたんだけどね……。」 先輩は苦笑いしながら、ちょっと物足りなさそうにアイコスを吹かしておられたのです。

<目次>    

電子タバコとiQOSの違い

電子タバコとアイコスの違い・健康への害が気になる人

一昔前にちょっと流行した電子タバコ。でも、iQOSは少し違うようです。

その日は、いつものように話に花が咲いて終わったのですが、それ以来アイコスのことが少し気になっていました。少し前には電子タバコというものがブームになったことがありました。

電子タバコは、液体を加熱して霧状にし、それをタバコのように吸って楽しむもので、多くはその液体にいろいろな味やフレーバーが付けられており、基本的にはニコチンやタールなどは含んでいませんでした。そのためタバコの健康への害が気になる方や禁煙したいがなかなか止められないという方にはおすすめだということで、テレビでも芸能人が試すシーンを時々目にしたように思います。当時の電子タバコの情報については「電子タバコの一部にニコチン含有!? 購入前の注意点」をご覧ください。

しかし今回ブームになっているアイコスは、電子タバコとは全く別のもののようです。何しろ、私が見たパッケージはいつものあの銘柄だったわけで、タバコであることには間違いないわけですから……。
 

本物のタバコ葉をヒーターで加熱? 加熱式タバコ・iQOSの特徴

ではアイコスはどのようにして使うものなのでしょうか? 最近は繁華街で販促ブースが置かれていることもあり、目にしたことがある方も増えているかも知れませんが、アイコスの最大の特徴は、タバコの葉を使っているということです。私が初めて見たときに「普通の半分ぐらいの長さのタバコ」と思ったものは「ヒートスティック」と呼ぶもので、それを、黒い棒状の機械にセットします。すると「ヒートスティック」の先端が特殊な装置で加熱され、タバコの葉の成分が放出され、それを吸い込んで楽しむというメカニズムになっているようです。棒状の機械は電気で動くのですが、箱形の充電器を携帯電話のように夜間に充電し、昼間は、それを使って棒状の機械を充電して用いるのだそうです。

火を使わずにタバコの葉を熱しますから、灰も出ず、ニオイも少なく、副流煙も極めて少ないようで、環境にも周囲の人々にも優しいけれども、タバコを吸った感じはちゃんとあるのがアイコスの特徴のようです。

確かに、冒頭の大先輩も会食中ずっと吸っておられましたが、帰宅したあとに私の鞄や衣服、髪の毛や体全体に着いたニオイは、0ではなかったものの大幅に軽減されていると感じました。
 

iQOSは健康的か? 体への影響と害

アイコスの健康への影響と害・タバコとの違い

医師としては、ニコチンはニコチン。健康な生活を送るためには、きっぱりと禁煙されることを強くお勧めします

このような特徴を持つアイコスですが、健康への影響はどうなのでしょう? 「アイコスでタバコが止められたから禁煙成功!」と話している人までいるようですが、医師として結論からいうと、アイコスでは禁煙になりません

アイコスの健康に関しての答えは、ヒートスティックの入った箱を見ればわかります。通常のタバコのパッケージに書かれているように「肺がんの原因のひとつとなり、心筋梗塞や脳卒中の危険性や肺気腫が悪化する危険性を高める」と明記されています。

また、未成年は決して吸ってはいけないことや、副流煙の危険性についてもタバコと同様の注意がきちんと書かれているのです。

確かに、火を使わず、灰を出さず、煙は少ないかも知れませんが、タバコ葉を加熱するために、ニコチンを初めとする様々な物質を摂取することには変わりがありません。ニコチンの依存性は極めて強いので、アイコスだけでもやはり止めづらいのに変わりはないようです。長期にわたって吸い続けると、重篤な健康被害を自分自身だけでなく周囲にも及ぼしかねないという点は、アイコスも通常のタバコと同じということでした。

ところで、冒頭の先輩ですが、こんなことをおっしゃっていました。
「こんなんしても、一緒なんだけどね……。止めないとダメだわ……。」

わかっちゃいるけど、止められない。これがニコチン依存症が根底にある喫煙習慣の大きな問題だと改めて感じさせられました。

おしゃれなデザインと質感で、なんとなく物欲も刺激されるデバイスではありますが、やはり、本当の意味での健康を手に入れて生活したい方に対しては、医師としてはアイコスも含めた禁煙を強くお勧めいたします。禁煙を考えている方は、「禁煙できない原因は?意志の弱さではなく「ニコチン依存症」」「禁煙できない!タバコの禁断症状と医師が勧める克服法」などもあわせてご覧ください。

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