懐かしい風貌とフィット感!
就職や異動、転勤、転職などをされる方の多い、心機一転のタイミングでもある4月。大事な時だからこそ、しっかりした作りの、どこに行っても恥ずかしくない紳士靴で、足下から気合を入れたいものです。そんな思いに応えてくれる面々が銀座ヨシノヤに出揃ったとのことで、いくつかご紹介しましょうか。最初はこの靴店の看板商品である「九分仕立て」シリーズの復刻版です。今でこそ若い世代が手作りの紳士靴の製作に様々なアプローチから再び取り組むようになりましたが、一時期は風前の灯火だったこの分野を守り抜いた最大の立役者が、(何度も書きますが)この銀座ヨシノヤ。
よって過去のアーカイブスも当然豊富で、今回はその中から約四半世紀前=1990年前後に登場したものを二作、木型も含めできる限り忠実にリバイバルしました。
一応お話し申し上げますとこの1990年前後と言うのは、日本の紳士靴の売り方・買い方双方の価値観が大きく変わり、要は国産のライセンス生産品に代わって本物のインポート品、ことさらイギリスの紳士靴が一気に脚光を浴び始めた時期です。だからでしょうか、この二作も例えば今日のものに比べ力強さを感じるブローギングなどに、当時の英国の紳士靴からの影響をダイレクトに感じます。この種の勇壮なデザイン、個人的には大好きなのですが、最近の靴では見なくなったよなぁ……。
木型に関しては、流石に当時のものそのままのEEEだけあって、ボールジョイントの部分には確かに余裕を感じます。ただ、二の甲より上は小指側をしっかり落とした結構タイトな造形で、同じEEEのものであっても現行のものとは明らかに異なり、細い足の持ち主である私であっても羽根が閉じ切りません! つまり甲と踵でホールドさせて履かせるタイプの靴なので、足との相性の良し悪しをあまり気にせずに済むのです。実はこの木型、当時は足囲をEEEではなくEEと表記していたそうですが、それも納得の履き心地です。
また今回の二作はともに内羽根式ですが、パンチドキャップトウとフルブローグとでは木型を意図的に僅かに変えていて、後者の方が爪先を僅かに高く設定し小指の前方にも余裕を持たせています。それと共に後者は、羽根と鳩目を若干踵寄りに備えトップライン(履き口)を狭くしているので、より「後ろ半分でホールドする」感覚が味わえるのです。木型と型紙の双方でフィット感を微調整して来るのは、このお店の昔からの得意技。どちらがお好みの着用感か、是非とも店頭で履き比べて欲しいです!
【商品案内】
◎ 九分仕立て復刻版シリーズ
・モデル:A.内羽根式パンチドキャップトウ(平コバ仕様) B.内羽根式フルブローグ
・色: 黒・キップ(A・Bともに。フランス・アノネイ社製ボカルー)。茶・スエード(Bのみ。イギリスC.F.ステッド社製スーパーバック)
・底材: シングルレザーソール
・製法: ハンドソーン・ウェルテッド九分仕立て
・サイズ: 23.5~27.0 0.5ピッチ EEE
・税込価格: A・Bともに11万8800円
こちらも1990年前後のモデルをほぼそのまま再現した、内羽根式フルブローグです。僅かにコロッとした木型の造形が、この靴の雰囲気に非常に合っています。色:黒・茶スエード。価格:11万8800円(銀座ヨシノヤ)
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