この4月から障害者雇用促進法が変わります
障害者雇用はこれからです
しかし障害者白書等によると、日本には人口の約6%に当たる788万人の障害者がおり、18~64歳までの在宅の障害者324万人の約2割程度しか就労していません。障害者雇用はまさにこれからなのですね。
そこで障害者雇用をさらに推進していくために、この4月から障害者雇用促進法が改正・施行されます。新しい制度を説明する前に、これまでの障害者雇用について振り返っておきましょう。
これまでの障害者雇用政策は量の拡大が中心
障害者雇用については、これまでも一定規模以上の企業に対して、一定数の障害者の雇用を義務づける政策がなされていました。これを障害者の雇用割当制度(法定雇用率制度)といいます。障害者の就労を社会全体で支えていこうという趣旨から、企業規模に応じて雇い入れる障害者を平等に割り振っていこうというものです。
障害者の法的雇用率という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。法定雇用率は現在、民間企業で2.0%です。そうすると、障害者を1人以上雇用する義務が発生する会社は、従業員規模50人以上の会社となります(50人×2.0%=1人)。
ちなみに、法定雇用率を達成できていない企業(常用労働者数100人超の企業が対象)は、達成している企業との公平を図るため、不足障害者1人に対して原則月額5万円の雇用納付金を支払う必要があります。一種のペナルティです。
一方で、法的雇用率を達成している企業(常用労働者数200人超の企業が対象)は雇用調整金として、超過障害者1人当たり月額2万7千円受給できます。うまく仕組みが作られていますね。
障害者雇用が進まない中、障害者の雇用量を何とかして増やそうというのが、これまでの政策でした。
これからは質的な面が重視される
平成28年4月からは、これまでの量的な拡大策に加えて、障害者差別禁止という新しい取り組みが加わります。これは、募集・採用、賃金、配置、昇進等の労働条件における障害者の不当な差別を禁止するとともに、障害者が抱える支障(ハンディキャップ)に対して企業が「合理的配慮」(就労上の不利の是正)を提供することを義務づけることで、障害者が雇用されうる職域を広げようという質的なアプローチです。
たとえば、聴覚障害を有する応募者に対しては、筆談等による採用面接を実施するなど配慮が必要となります。同様に在職中の障害者に対しても、ハンディキャップ克服のための合理的配慮が求められます。
企業の負担が大きくなりそうですね。しかし合理的配慮の提供義務については、事業主に「過度な負担」を及ぼすこととなる場合は除かれることになっています(障害者雇用促進法36条の2、36条の3)。
どのレベルであれば事業主に過度な負担となるかについては、企業規模や事業活動への影響等を総合的に勘案しながら個別に判断することとされています。
結局、合理的配慮の内容については、事業主と障害者本人との話し合いによって決めることになります。なお、合理的配慮の提供義務違反についての罰則はありません。