マーケティング/家電マーケティングのプロが語るお得な家電との付き合い方

家電量販店なのにトイレットペーパーを売る理由

レトルトの離乳食、トイレットペーパー、箱入りペットボトル飲料、フライ返しなど、家電量販店では"家電以外の商材"の取り扱いが増えています。その理由を解説します。

伊森 ちづる

執筆者:伊森 ちづる

家電マーケティングガイド

 日用品・生活用品の取り扱いを増やす家電量販店

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カラフルな調理道具は目をひく。写真はヨドバシカメラマルチメディアさいたま新都心駅前店

ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの3階「理美容・化粧品」売り場。

ここではドライヤーや美顔器などの美容家電の近くに、オムツ、粉ミルク、レトルトの離乳食といったベビー用品を並んだ売り場を作っています。さらに、5階の「キッチン家電」売り場に行くと、炊飯器やオーブンレンジの近くに、シリコン製の焼き型、"デコおにぎり"の型、フライパンといった、調理雑貨・調理道具も並べられています。こうした展示は秋葉原だけでなく、ほかのヨドバシでも展開されています。

また、池袋にあるヤマダ電機 LABI1日本総本店池袋では、地下1階に日用品、加工食品の売り場を設けています。さらに、ほかのヤマダ電機でも日用品を扱う店舗が増えています。

家電量販店が、生活用品が扱うようになったのには大きく4つの理由があります。

理由1:ポイントの利用範囲の拡大

ポイントは、一般的に、"貯めやすく、使いやすいもの"が選ばれる傾向にあります。家電量販店のポイントは10%前後と高還元率のものが多く"貯めやすいもの"です。一方、使いやすいという点に注目するとどうでしょうか。家電の買い替えサイクルは長くて10年と、頻繁に買い換えるものではありません。そこで、日用品や生活用品など、買い替え頻度が高いものを取り扱うことで、ポイントの利用を促し、"使いやすいポイント"になるようにしています。ポイントの魅力をあげることで、お客の囲い込みに役立てようというわけです。


理由2:来店頻度の増加・来店客の増加

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日用品はレジ周りなど目立つ場所に配置されることが多い

先日オープンしたある家電量販店では、オープン特売品として「珪藻土のバスマット」を販売したところ、これを目当てに多くのお客が来店し、10時オープンだったにもかかわらず、昼前には売り切れてしまったそうです。

このように、日用品・生活用品を扱うことで「家電は買わないけれど、日用品・生活用品なら買いに行く」というお客の来店を促すことができます。どんなに商品の提案に力を入れても、まずはお客に店に来てもらえないと商売は成り立ちません。家電量販店としては、日用品・生活用品を扱うことで、数ヶ月から数年に1度の家電の購入のための店ではなく、日常的に使う店として、お客に利用してもらいたいという考えがあるわけです。


理由3:お客の需要を喚起する

都市型は不特定多数のお客のニーズに応えるため、取り扱い商材の種類を増やしています。一方、ロードサイドにある郊外店では、車を使って来店するお客が多く、商品を持ち帰る人が少なくありません。よって、箱入りのペットボトル飲料や、トイレットペーパーなどかさばる商材も持ち帰ることが可能で、こうした商品も取り扱います。

郊外店で日用品を扱う店舗は、レジ前などお客が気が付きやすい場所に売り場を展示しています。これには、需要を喚起し、お客の「ついで買い」を促すという狙いがあります。さらに、レジ前などに目立つ場所に売り場をつくることで、お客に"あの店にいけば日用品が買える"と認知させ、ワンストップショッピングによる利便性を提供しようという考えもあります。


理由4:売り場の"鮮度"を保つ

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コジマ×ビックカメラ八王子高倉店では、お風呂で使える美容家電とあわせてバスマットなどを展示する

家電量販店では、具体的な生活シーンを提案することに力を入れている店舗が増えてきています。例えば、話題の腹筋マシンと体組成計を一緒に並べた"ダイエット提案売り場"、食器とトースターを一緒に並べた"朝食提案売り場"、寝具と家電を並べた"眠り提案"、お風呂関連グッズと家電を並べ"バスタイム提案"のように、テーマを決めて複数商品を展示する店舗も増えてきています。日用品・生活用品を扱うことで、季節ごとの提案や、世の中の話題にマッチした提案がしやすくなります。


玩具は、ファミリー客と男性客の誘引の重要商材

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YAMADA IKEBUKURO アウトレット・リユース&TAXFREE館は7階にガンダム専門フロアを用意

日用品ではありませんが、最近売り場が増えている商材の1つが「玩具」です。玩具は、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ジョーシン、エディオン、ヤマダ電機など多くの量販店で取り扱いが広がっています。

その狙いは大きく2つ。1つはファミリー客の獲得です。玩具を扱うことで祖父母が孫にプレゼントする、親が子供にプレゼントするなど、ファミリー客の来店を促すことができます。某妖怪アニメのメダルが発売された際、新店の店長が「メダルが新店の目玉商品」というほど、お客が開店前に並び、その地域のファミリー層に一気に店舗の存在を知らせることができたといいます。

このほか玩具は男性客誘引の重要な商材にもなっています。家電量販店の客は男性客が中心です。そうした男性客に人気がある「ガンプラ」などを扱うことで、男性客のさらなる来店につなげようというしています。


都市型店では訪日客対応の側面もあり

家電量販店には多くの訪日客が訪れます。炊飯器や美容家電といった商材が人気ですが、そのほか「セラミック包丁」などの刃物類、「ガンプラ」などの玩具類、オムツや粉ミルクといった日用品類もお土産として人気です。都市型店を中心に、訪日客が多い店舗では、訪日客対応として、これらの商品の売り場を広げているという側面もあります。

家電量販店の日用品は安いのか?

気になるところは、家電量販店で日用品を買うのはお得なのかという点です。例えばですが、3月某日、粉ミルク「明治 ほほえみ大缶 800g」をヨドバシカメラで買うと2190円、10%ポイント還元となっています。ちなみ同日にAmazonで調べた「ゴダイドラッグ」では2245円1%ポイント還元でした。

 全ての商品が安いとまではいきませんが、「ポイントが付与される※」さらに「家電を買った時のポイントが利用できる」ということを考えると、家電量販店での日用品はお買い得といえます。

※一部対象外のものもあります
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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