免税事業者は取引からはずされるかも
インボイス方式では課税事業者が発行するインボイスに記載された消費税額のみが控除されます。日本では免税事業者が発行した請求書の税額控除を容認しており、これが益税となっています。ヨーロッパでは免税事業者と区別するため、課税事業者には固有の番号を付けてインボイスにはその番号をつけなければなりません。免税事業者には固有番号がありませんのでインボイスを発行できません。インボイスが発行できないと取引からはずす動きが出てきます。
免税事業者は課税売上高が1000万円以下のいわゆる父ちゃん、母ちゃんだけでやっている家族経営の個人事業を想定しており、丼勘定で帳簿もまともにつけられないのに正確な税額計算はムリだろうと導入されている制度です。ただ皆が皆、さんちゃん企業ではなく、なかにはしっかり青色申告している免税事業者もいます。
インボイスが導入されると取引に影響する可能性があるので、財務省では現在、免税事業者になっている500万超のうち少なくても100万ほどは課税事業者になるとみています。実際、インボイスが導入されているフランスでは小さな農家も課税事業者になっている例が多くあります。
免税事業者には益税があるといっても免税事業者も経費や仕入で消費税を払っていますので、実際は大したことはありません。ですので取引からはずされる怖れがあるのなら課税事業者になる事業者が増えるでしょう。
免税事業者が課税事業者になるには消費税課税事業者選択届出書を所轄の税務署へ出すだけです。個人事業であれば年末までに出せば、翌年から課税期間になり、翌々年の確定申告時に消費税を納税します。(納付期限は3月末)
個人事業主から法人成りする動きが加速するかも
ヨーロッパではインボイスに税務署へ登録した固有の番号が印字されています。日本でも課税事業者の登録が必要になります。てっとりばやいのがマイナンバー制度の法人番号を使うことです。インボイス用に別の番号体系を作ることになれば新たなシステム開発を行わなければならず、壮大な無駄使いに終わった住基ネットの二の舞になるかもしれません。
法人番号をインボイスに使えば、問題となるのは法人番号がなく課税事業者になっている個人事業主だけです。
2016年1月からマイナンバー制度がスタートし、企業がセミナーなどを依頼し講師に謝金を支払う場合、相手が個人事業主であれば講師からマイナンバーを収集しなければなりません。企業にとっては手間なので、免税事業者と同様に個人事業主を取引からはずす動きが出始めそうです。ですので個人事業主から法人成りして法人番号を取得する動きが出てくるでしょう。
ただ法人成りすると利益をあげていなくても支払わなくてはいけない法人税均等割(約7万円)が発生します。また法人税率の引下げに伴い中小企業にも外形標準課税の導入が検討されているので、決まれば経費が増えます。
また決算書が必要となりことと、法人成りしたといっても実質的には個人企業ですので自宅住所が法人番号公開サイトで公表されることになります。バーチャルの住所を登記できるレンタルオフィスがこれから流行りそうです。
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