サーティワンの業績が悪化している
サーティワンが業績悪化している理由とは
サーティワンの現状
サーティワンの店舗数は全国で1000店舗を超える。他にもコールド・ストーン・クリーマリーやディッパーダンなどもB−R社が運営しているが、サーティワンの店舗数が圧倒的に多い。一方、アイスクリーム市場を見れば拡大の一途を辿り、2014年度が約4369億円と10年前と比較して1.2倍の規模になっている。一般的に、市場が拡大すれば、マーケットのリーダー的なポジションにある企業はより多くの恩恵を受ける。しかし、市場の成長に反して、サーティワンは苦戦しているのだ。なぜ業界トップを走り続けてきたサーティワンが苦戦しているのか。コンビニの影響はあるのか?
サーティワンが苦境に陥った要因として市場環境の変化はある。セブンイレブンをはじめとするコンビニエンスストアが、より高価格帯のアイスクリームの発売を強化した。今や300円前後のアイスクリームをコンビニで買う人も珍しくない。それを後押しするのは自宅で持ち帰りの美味しいご飯を楽しもうという中食トレンドだ。お惣菜、お弁当、コンビニコーヒー、スイーツ。アイスクリームだけでなく、コンビニにおける多くの食べ物の品質がアップしている。コンビニはメーカーとのコラボによって、常に店頭をフレッシュな状態にし、消費者を飽きさせない努力をしている。カップ麺であれば有名店とのコラボ商品、弁当でも有名シェフ監修のものやテレビ番組と連動したもの、アイスに関してもロングセラー商品である赤城乳業のガリガリ君とのコラボ商品や、人気のあまり売切店が続出したハーゲンダッツとのコラボ商品などもある。たしかに、コンビニには魅力的な商品が増えている。
街には競合となるプレイヤーが続出
コンビニだけではない。街に溢れるスイート店の種類も数も増えてきた。高級チョコレートの代名詞だったゴディバはコンビニでのアイスクリームだけでなく、市中にもショップを開き、アイスクリームを販売し始めた。同じくリンツのショップも増加した。アイスクリーム店では表参道にベン&ジェリーズが上陸すれば行列ができた。それ以外にも、ポップコーン、かき氷、パンケーキ、マックス・ブレナーのようなチョコレート店、さまざまなスイーツ店が、雨後の筍のごとく出現し、消費者は毎年異なったスイーツ店に興味を持つようになった。サーティワンが言うように、コンビニの影響は確かにある。しかし、コンビニだけに影響されたのではなく、それ以外の強いプレイヤーも続々と出現しているのだ。
ライバルに人気が集まった理由とは
根本的に、コンビニのアイスクリームよりもサーティワンのアイスに魅力があれば、消費者はサーティーワンを選ぶ。スイーツやレストランなどは、本当に食べたいものがあれば、お客さんはわざわざ足を伸ばしてでも食べに行くものだ。また行列に並んでも食べるものだ。今夏もっとも人気となったスイーツ店の一つ、表参道ICE MONSTERには行列では足りず、整理券を配布してまで人たちが食べに来た。全盛期ほどの人気はないものの、いまだにギャレットのポップコーンは行列ができている。今夏、千駄木・根津近辺でもかき氷が人気になり、あえて足を伸ばして食べに行く人たちも多くなった。
人々が体験した美味しかった店、話題になっている店の情報は、ソーシャルメディアによってどんどん拡散されていく。拡散したくなる情報に共通するのは、人々の心を動かした情報だ。とても高い評価だけでなく、美味しくなかった、対応が酷かった等のとても低い評価の情報、いずれにしても心が動かされた情報ほど拡散されていく傾向にある。
問題の根幹は「商品力が上がっていないこと」
確かにサーティワンの知名度は高い。しかし、そのイメージは数十年間変わっていない。また劇的に商品が変化したという話も聞こえてこない。一方、同じくアイスクリームの老舗ブランド、ハーゲンダッツを見てみると、コンビニでの高級アイスクリーム販売へと戦略変更したり、ハーゲンダッツの世界観を感じられるようなブランディングイベントを仕掛けたりしている。このブランディングイベントとは、暗いイベント会場に寝転がれるチェアーを置き、リラックスしながらハーゲンダッツを食べられるというものだ。味の良さではなく、ハーゲンダッツを食べる時の心理を体感して欲しいというのが狙いだろう。
コンビニではコンビニのPB商品、ハーゲンダッツを始めとする高級商品、今までは地方でしか食べることが出来なかったアイスクリームなど、消費者からすれば、食べる楽しみだけでなく、選ぶ楽しみまで揃っている。