定年・退職のお金/定年後の仕事と働き方

シルバー人材センターで収入を得て年金不足を補う

老後資金として必要な額は1人あたり3000万円ともいわれています。しかし自分の貯蓄や年金収入だけでまかなうのは厳しいはず。不足分を補うのに最も有力な手段は、働いて収入を得ること。中でもシルバー人材センターで紹介してもらう仕事は、報酬こそ低いけれどチャレンジしやすいものばかりです。

松岡 賢治

執筆者:松岡 賢治

クレジットカードガイド

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シニアライフに必要なお金は1人あたり3000万円以上!?

年金収入だけでは老後の家計は赤字に

年金収入だけでは老後の家計は赤字に

定年退職後のいわゆる「シニアライフ」を過ごすために必要とされる貯蓄額は、年々、増加傾向にあります。

現在、世帯主が60歳以上の「高齢無職世帯」の家計をみると、毎月約6万円が不足しています(※)。この不足額を貯蓄が補っているわけですが、65歳で定年退職をして85歳まで生きたとすると、20年間貯蓄を取り崩すことに。その合計金額は6万円×12カ月×20年=1440万円となります。

教育費のピークが定年退職後にくる場合も

また、家計の内訳をみると、住宅ローンを払い終わっている持ち家の世帯の割合が高いため、住宅ローンが残っている人はローンの支払い、借家の人は家賃の負担が加わります。持ち家の人もリフォーム代が必要となるでしょう。1人当たり必要とされる貯蓄額の相場は、2000万~3000万円といったところでしょうか。

これが最近では「もう少し必要」と考えられています。晩婚化・晩産化の影響で、定年以降に子どもの教育費のピークがくることも多く、さらに、平均寿命が伸びているため医療費が増加傾向にあります。物価の上昇も考慮しなければならなくなってきました。ファイナンシャル・プランナーによっては、1人あたり4000万~5000万円が必要という人も少なくありません。

(※)総務省「家計調査報告(家計収支編)平成26年(2014年)平均速報結果の概況(要約)」より

老後資金不足を補う最も有力な方法は「働く」こと

ただ、こうした金額の貯蓄が必要といわれても、ピンとこない人が多いのではないでしょうか。正直に言うと筆者自身も、老後を迎えるまでに、3000万円どころか2000万円といった金額を貯める自信はまったくありません。せいぜい1000万円がやっとだと思っています。4000万円、5000万円といった金額は気の遠くなるような数字です。

しかし、老後に必要とされる金額は、前述したように根拠のないものではありません。でも、お金はなかなか貯められない。じゃあ、どうするか……答えは単純です。定年退職後、60代、70代、場合によっては80代も働くのです。

ファイナンシャル・プランナーがはじき出す老後資金額は、老後に働くことは前提とされていません。そこで、働いて収入を得て、不足額を補てんするわけです。

定年後のシニア世代の働き口は意外に豊富

そこで、定年退職後に働くとして、どんな職業に就けるのか? どのくらいの収入が得られるのか? について簡単にガイドをしたいと思います。

実は、高齢者が仕事を得る窓口は結構あります。おなじみの「ハローワーク(公共職業安定所)」や「シルバー人材センター」など、都心部・地方問わず存在しています。今回は、得られる収入が最も少ないがハードルも低い、シルバー人材センターから紹介していきましょう。

シルバー人材センターは全国にある

人の役に立ち、年金収入の足しにもなる

人の役に立ち、年金収入の足しにもなる

シルバー人材センターとは、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献することを目的とした、社団法人です(したがって、民間の職業をあっせんする組織とは異なります)。原則として、市(区)町村単位に置かれ、都道府県知事の許可を受けて、それぞれが独立した運営をしています。

民主党政権時代のいわゆる「仕分け」によって事業規模が縮小された、という経緯はあるものの、2013年3月末時点で、全国の団体数は1267団体あり、会員(=就業または就業を希望する高齢者)は74万人に上っています(会員になれる条件は「概ね60歳以上の健康で就業意欲のある高年齢者」とされています)。

シルバー人材センターの仕組みは、一般家庭や事業所、官公庁から、地域社会に密着した臨時的かつ短期的な仕事を請け負い、その仕事を希望する会員に提供する、というもの。会員は実績に応じて一定の報酬(配分金)をもらいます。

提供されている仕事は、清掃、除草、自転車置き場管理、公園管理、宛て名書き、植木の剪定、 障子・襖張り、福祉・家事援助サービスなど。中には、学習教室の講師や翻訳・通訳、パソコン指導といった専門色の強いものや、地方には、観光ガイド、門松製作、カブトムシの飼育販売、農作業と販売、花苗育苗作業といった変わったものもあります。

シルバー人材センターの仕事で得られる報酬の例

肝心の収入ですが、おもなもので、以下のようになっています。

●一般事務 1000円~(1時間)
●パソコン入力 1200円~(1時間)
●ビル・マンションの清掃 1000円~(1時間)
●駐車場などの施設管理 1000円~(1時間)
●高齢者向け福祉サービス 1000円~(1時間)
●家事援助(食事作り、洗濯、室内清掃など) 1100円~(1時間)
●パソコンレッスン(出張サービス) 3000円~(2時間)
●語学レッスン(英語) 1500円~(1時間)
●庭・プランターの草取り 1500円~(1時間)

※公益社団法人 中央区シルバー人材センターの例(東京都、2015年7月時点)。上記の料金は、仕事の発注側が支払う金額で、市区町村によっては、この料金から事務経費(5~10%)が差し引かれるケースもあり。

月収4万円程度でも長く続ければ1000万円近くに

また、シルバー人材センターを活用するにあたって、気を付けるべきポイントがあります。会員が公平な就業機会を得るため、通常、ローテーションにより就業します。簡単にいうと、1人の就業時間が限られているのです。

全国シルバー人材センター事業協会のサイト(http://www.zsjc.or.jp/index)を見ると、「一定した収入保障はありませんが、全国平均で月8~10日就業した場合、月額3万~5万円程度になります」と説明されています。

厚生労働省の資料をチェックすると、2012年の実績では、月平均就業日数が9.3日、月平均配分金収入3万5221円となっています。1日の労働時間の目安は4時間程度とされているので、平均的な時給からすると1日4000円、月10日就業で、月収は4万円程度にはなる計算です。

月4万円というと、微々たる収入に聞こえるかもしれません。でも、例えば夫婦で就業すれば月間8万円、年間では100万円近くになります。もし、10年間続ければ、1000万円稼げる計算になります。

1日4時間で月10日間くらいなら、あまりストレスを感じずに働けるのではないでしょうか。むしろ気分転換、あるいは運動になるかもしれません。シルバー人材センターの目的には、高齢者の就業機会の確保とともに、高齢者の技能の地域社会への寄与も含まれています。実際、会員同士の交流や、地域社会に溶け込めるといったメリットもあるようです。
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