通常のマンションでは、キッチンのコンロ上部に換気扇を固定しています。料理で発生する煙は、換気扇から排気ダクトを通って、建物の外部に排気します。そのため、天井にキッチンから建物外部までの長さの排気ダクトを通す必要があります。
さらに、給排水用の配管と電気配線が必要です。例えば、キッチンのシンクから流れ落ちる水は、床下を通って、「PS(パイプスペース)」にある共用管に流します。一定の高低差(勾配)がなければ水が流れないので、移動できる範囲が限定される場合もあります。
このように、キッチンを移動させるには、排気ダクトや配管配線なども移動させることになり、天井も床も含めて大がかりな改修工事になります。工期も長くなりますし、費用もかかります。だから、大変になるのです。
後から簡単にキッチンが動かせる秘密とは?
キッチンの移動や間取りの変更が簡単にできるマンションとは、三井不動産の「パークホームズ赤羽西(北区赤羽西六丁目)」です。総戸数160戸の大型マンションですが、そのうち6戸が「Imagie(イマジエ)※」と名付けた、キッチンが動かして間取りを変えられるタイプになっています。※Imagieとは、imagination(想像力)と ie(家)を合わせた造語で、住む人が想像をふくらませられるすまいを表している。
「パークホームズ赤羽西」の赤枠の6住戸が、キッチンが動かせるImagieタイプとなっている
・キッチンと一体となった循環式レンジフードを設置していること
・キッチン下部にキャスターが付いていて、固定する際には、耐震マットが貼られた脚を床面にしっかり設置するようになっていること
・配管や電源の設備をまとめた「キッチン接続ポート」と呼ばれる点検口を、床面に3カ所設置していること
この3つの条件をそろえたことで、移動を可能にしています。
循環式レンジフード付きキッチン。IHクッキングヒーター、両面グリル、ビルトイン食器洗浄乾燥機、コンセントなどが付いている
キッチン下部のキャスターや耐震マット付き脚
キッチンを接続ポートの上に設置し、接続ポート(右)と接続すればOK
レンジフード裏に吹出口がある
でも、キッチンを動かすだけが目的ではありません。間取りを変えやすくすることが、目的です。次からは、室内の好みに合わせてレイアウトできるポイントを紹介しましょう。