ジャズ/ジャズ入門

ブラインドフォールドテスト・ゲームで楽しく学ぼう!(3ページ目)

ジャズにはちょっと興味があるけど、難しそうでという人は結構多いのでは。そこで、ゲーム感覚でジャズを楽しく学べる3つの方法(ジャズ版ケヴィン・ベーコンゲーム、ディベート、ブラインド・フォールドテスト)を3回に分けてご紹介します。その第三弾は「ブラインドフォールドテスト・ゲーム」です。楽しんで学んでくださいね!

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド


第三問  演奏曲目「今宵の君は」


ここでは、ハンク・モブレージョニー・グリフィンジョン・コルトレーンと言う3人のテナーサックスが出てきます。登場する順番を当ててください。

  1. ジョン・コルトレーン → ジョニー・グリフィン →ハンク・モブレー
  2. ハンク・モブレー → ジョン・コルトレーン →ジョニー・グリフィン
  3. ジョニー・グリフィン → ハンク・モブレー →ジョン・コルトレーン
  4. 上野樹里 → 古畑奈和 → 宮本大

答え:3番 ジョニー・グリフィン → ハンク・モブレー →ジョン・コルトレーン

ア・ブローイング・セッション+1

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ジョニー・グリフィン「ア・ブローイング・セッション」より「今宵の君は」

テナー・サックスにこだわった問題です。このアルバムでは、リーダーのジョニー・グリフィンのほかにハンク・モブレージョン・コルトレーンというモダンを代表するテナーが参加しています。

9分半もある長い演奏ですが、グリフィンが最も得意とするプレイできるギリギリのハイスピードで、聴く者を飽きさせません。ポイントは、それぞれに個性豊かな三人の違いを聴き分けられるかにあります。

さあ、それでは早速急速調の曲「今宵の君は」を聴いてみましょう。まずは、ドラムのアート・ブレイキーの粗削りなイントロから、リーダーのグリフィンによってテーマが始まります。ブリブリいう音はグリフィンの特徴です。このテーマ部分で最初のテナーがグリフィンだとわかれば、もうしめたもの。

この曲「今宵の君は」は、有名なスタンダード曲。1936年のハリウッド映画「有頂天時代」で、華麗なダンスで人気絶頂だったフレッド・アステアによって歌われヒットしました。

16、16、16、20小節のテーマ1、テーマ2、サビ、テーマ3というやや変則的な曲です。アドリブに入るとテーマ3は最後の4小節をカットして、合計64小節になります。作曲したジェローム・カーンの代表的な美しいテーマを持っていますが1コーラスが長い難曲です。

その優雅な曲がグリフィンに手にかかると、暑苦しいばかりに情熱的な曲になってしまいます。

こういった何人かで集まって行う録音ですと、周りのことも考え、テーマ部分でも分け合ってやる場合が多いのですが、グリフィンはお構いなしにサビ(曲の真ん中の展開部)も自分で吹き、そのままアドリブに突入します。

このアドリブに入ったところで、サックスが入れ替わっていないとわかれば第2段階クリアです。グリフィンは、急速調に乗り、次第に熱を帯び3コーラスに渡るアドリブを展開します。

次に出てきたのがトランペット。録音当時(1957年)日の出の勢いで注目されていた新星、リー・モーガンです。さすがジャズ界期待の星、リーです。とんでもない速さを苦にせずに、個性的で構成力のある素晴らしい2コーラスのアドリブを聴かせてくれます。

その後に4小節遅れて出てきたのが、もう一人のテナーサックスのハンク・モブレーです。ハンクは名手ですが、歌いまわしや独特の間に味があるタイプ。ミディアムテンポの曲では抜群にはまったソロを聴かせてくれますが、こういった速い曲では、まったく実力を発揮できません。テーマを感じさせる出だしですが、入れる場所を間違えています。

そのまままったくスピードについていけず、きっと人柄の悪いグリフィンに心の中で毒づきながらプレイしたことでしょう。ちょっとハンクが、気の毒です。

そして、リズムに乗りきれないままギブアップするかのように、2コーラス目の5小節目で唐突にプレイを止めてしまいます。驚いたのは、次にプレイする予定だった三人目のテナー奏者ジョン・コルトレーン。

「えっ、ハンクもう終わり?」と思ったことでしょう。でもさすがに、当時メキメキと実力を伸ばしていたコルトレーンです。あわてながらも、なんとかアドリブに入ります。でも、やはりスピードにうまく乗り切れずに苦戦しています。2コーラス目に入ってようやく、本来のリズム感が戻ってきたところで、ドラムのアート・ブレイキーから終わりの合図のようなタムが入ります。そして、主役のグリフィンが割り込んできます。

対戦相手の調子が出てくると、茶々を入れ、そうはさせないのが、バトル・サックスの名手グリフィンの老練なテクニック。そのまま、ドラムのアート・ブレイキーとの8バース(8小節交互に演奏すること)に入り、流れを強引に引き寄せます。

そして、最後のテーマに入り、20小節あたりから、ここまで伴奏しかさせてもらっていないピアノのウィントン・ケリーが今度はグリフィンに割り込むようにアドリブを弾き始めます。このあたりのスリリングなやり取りが、まさにモダン・ジャズを感じさせる部分です。

次の最終ページでは、いよいよ演奏もヒートアップ!最後にはあっと驚く展開が!
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