バルセロナを彩るガウディ建築とサグラダ・ファミリア聖堂
グエル公園では砕いたタイルで作られた、色鮮やかなモザイクが随所で見られます。
現代では天才建築家と呼ばれるガウディも、建築家への道は決して容易なものではありませんでした。貧しい家に生まれたガウディは、学費と生活費を稼ぐため、幼い頃から建築現場で働く日々が続きました。21歳で建築学校へ進学したものの、兄と母が相次いで亡くなり、老いた父と病弱な姉、そして知的障害のある姪の暮らしを支えるために働きながら建築を学び、ついに建築家の資格を得たのは26歳のときでした。しかし学校で学ぶ建築理論よりも、建築現場で実践として学んだ豊富な経験こそが、その後のガウディの自由な発想と空間造りに大きく役立つこととなりました。
ガウディの才能が世界に認められるきっかけとなったのは、1878年パリ万国博覧会に出展されたガウディ作の手袋用ショーケース。このショーケースに才能を垣間見たバルセロナの実業家グエルは、自らガウディ宅を訪ね、交流を深めるにつれガウディの世界観に魅了されていきます。実業家として莫大な財を築いたグエルは芸術愛好家でもあり、その後数多くの建築をガウディに依頼します。まだ世に知られていなかった若き建築家のガウディは、グエルという強力な理解者を得て、その才能を自由に、独創的に開花するチャンスに恵まれたのでした。
バルセロナで必見のガウディ建築と入場見学ツアー
ブルーやオレンジのカラフルなタイル装飾に、渦巻く天井や波打つ壁の邸宅、そして世界で唯一、入場料を取る工事現場と呼ばれるサグラダ・ファミリア聖堂。バルセロナを彩る数々の斬新な建築は、20世紀初頭にアントニオ・ガウディによって生み出されました。バルセロナに来たならはずせない、必見のガウディ建築とその見所をご紹介します。
■ガウディ未完の分譲住宅地 グエル公園
グエル公園の波打つベンチ 座り心地を良くするため人のお尻で漆喰に型を取っています
ガウディの良き理解者となったグエルの支援により、バルセロナにはグエル公園、グエル邸などグエルと名のつくガウディ建築が多く残されています。中でもグエルとガウディ2人の夢と遊び心が詰まっているのが、カラフルなトカゲや波打つベンチで有名なグエル公園です。当初は分譲住宅地として設計され、雨が濾過されて貯水される地下タンクなど宅地としての機能性も備えていました。分譲事業としては失敗し未完に終わりましたが、ガウディとグエルは遊び心満載の実験的試みを取り入れ、広い敷地で自由に理想の建築世界を追求したのでした。グエルの死後、土地は市に寄贈され公園として開放されましたが、観光客の増加に伴い2013年より一部有料化され入場者数にも制限が設けられました。公園という名ではありながら、並ばず入場するには事前予約が必要です。
■ガウディ・ワールドが広がる最高傑作 カサ・ミラとカサ・バトリョ
渦巻く天井と湾曲が続く壁と窓 カサ・バトリョ内部には直線が見当たりません
50代となったガウディが手がけ、ガウディ建築の完成版と言われるのが、集合住宅として建てられたカサ・ミラとカサ・バトリョです。直線や角を嫌い、自然界が生み出す形状を建築に取り入れるというガウディの建築理念が、見事に凝縮された傑作です。波のように大きくうねる外壁だけでなく、直線がことごとく排除され、壁やドアなどすべてがゆるやかに湾曲している内部は必見。人間の手に心地よく収まるよう緻密に設計されたドアノブや、太陽が差し込む角度に合わせてグラデーションに塗られたタイルなど、隅々まで計算され尽くされたガウディ・ワールドが広がります。入場チケットを事前予約すれば、長い列を横目に並ばずいつでも入場できます。
■ガウディが生涯を捧げた集大成 サグラダ・ファミリア聖堂
樹木の柱が生い茂るかのような、サグラダ・ファミリア聖堂内部
ガウディ建築の集大成となるのが、現在も建設中のサグラダ・ファミリア聖堂です。晩年のガウディは他の仕事をすべて中断し、不慮の事故で亡くなるまで12年もの間、聖堂建設に没頭しました。完成までに数百年はかかると予測したガウディは多くの模型とスケッチを遺し、後継者たちにより現在も、ガウディの意図を読み解きながら形に変えてゆく作業が行われています。樹木のような柱や枝が広がるように絡み合うアーチ、自然光が射し込む聖堂内部はまるで森を思わせ、自然界と建築を融合させたガウディ建築の真髄が感じられます。年間300万もの人が訪れるサグラダ・ファミリアは、繁忙期には数時間待ちとなることもあります。ゆったりと内部を見学するには、事前予約とガイドツアーがおすすめです。