おふたりは振付に興味があるタイプですか?
大貫>僕自身はあまり振付の才能はないと思っていて……。宮尾>そう? よくイベントとかでソロをつくってるじゃない?
大貫>あれはインプロだから。僕はたぶん演出家タイプで、ゼロから新しく生み出すよりも、何か既存のものに加える方が得意なんです。振付のように、何もないところから生み出す作業には苦手意識があります。
宮尾>大貫くんみたいに動けるタイプのダンサーは、振付けたときに相手が動けないことに疑問を抱きはじめてしまう。だから大変だと思う。
大貫>それはあるかも。この前、自分の弟子がコンクールに出場したんです。結果は三位。彼の成長のためにと思ってやったことですけど、そこで面白い発見があって。振付けをしていると、自分がしたい動き、自分が考えてるものを与えていることに気付いた。自分で自分をつくり出そうとしているというか、自分で自分にダメ出ししている感じになっていたんですよね。審査員の方には、“作り込みすぎて彼の資質が見えなかった。あの作品における彼の動きは見えたけど、彼そのものが見えてこなかった”と指摘されました。振付ってそのひとの何かを活かしたり、演出家の意図を汲むことが必要じゃないですか。けれど僕は、それを裏切ったり、自分の方へ、自分の方へと寄せたくなっちゃうんです。
宮尾>バレエジェンツ(宮尾さん率いるKバレエカンパニーのパフォーマンスグループ)に振付をしたときも、周りからは“良かったよ”という声をいただいたけど、やっぱり踊っているだけとは違う難しさもありました。聴く曲の量も膨大だし、ダンサーのことも理解していないといけない。踊りと振付を同時に行うのは、考えていた以上にやるべきことが多かったです。振付には踊りとは違う大変さがあり、もちろん違う達成感もある。何より一番難しいのが、自分自身の振付け。あれだけはできなくて……。
大貫>わかる!
宮尾>みんなよく言うけれど、振付家って自分の振りをつくれないんですよね。自分みたいなひとに一回踊ってもらったら、客観的に見ることができていいかもしれない。だから、大貫くん、ちょっとやってくれない?
大貫>無理! ターンとかジャンプとか、宮尾さんができること僕できないもん。