分譲マンション購入環境の激変
マイホーム市場は「情報の非対称性」が叫ばれて久しい分野である。売り手である不動産会社(マンションデベロッパー)はプロ。かたや買い手は、たいていが人生初の素人だ。とくに、青田売り(工事中)は実物を見ずして契約をするから、トラブルが絶えなかった。「自分が買ったのはこんな安っぽい建物じゃない」など。しかし「住宅品確法」(2000年施行)以後、住宅性能表示制度を活用した物件は紛争処理手続きが比較的容易にできるようになる。耐震偽造問題も売主の信頼性を再認識させた。また、何よりネットの普及が大きい。口コミ、評判が手軽に得られるようになり、不特定多数の視点を共有しながら、物件選別の判断ができるようになったのである。
「瑕疵担保期間の10年保証(前出の「住宅品確法」)」や「アフターメンテナンスの充実」に加え、売り手の「ロイヤリティ向上」思考は顧客の不動産会社に対するイメージを変えつつあるといえるだろう。「マイナス情報を隠さず教えてくれる営業マンを選ぶこと」は理想ではなく、現実化しているのでは。広告表現などにおいても自主的に厳しく規制しているデベもある。この10年前後で新築マンションを「買うとき」の市場環境は大きく改善されたといえる。
「自宅売却」は時間の余裕をもって
対して「売るとき」はどうか。市場にある品揃え(競合物件)と価格について見てみよう。新築マンションは、ポータルサイトや物件HPで情報収集が容易にできる。が、中古マンションはすべてを網羅できるメディアがない。自分が売主になった場合、ベンチマークすべき物件やライバルとなる物件が正確に把握できない。「市場に公開してほしくない」売主もいる。「レインズ(不動産流通機構)」は不動産業者だけが情報を共有できるシステムだが、仲介会社を通してしか知ることができないのである。
価格についてはさらに不透明といえるだろう。インターネットやチラシに出ている価格はあくまで「売却希望価格」。実際に契約に至った値段は、公開されている事例もあるが、あくまで一部である。それも「レインズ」コンテンツであるため、一般に自主的には確認できない。限られた情報のもとに「これぐらいなら売れそうか」と計画を立てざるを得ないのである。
さらに「構造的利益相反の可能性」を秘めていることに留意すべきであろう。仲介をしてくれる不動産会社にとって「早く売ること」が結果的に収益貢献しやすいのに対し、翻ってそれは売主には一般的に有利な条件とはなりにくい。無論、早く売りたい人にとっては「同じベクトルを向く間柄」であることは言うまでもない。
少しでも高く売るコツ
だが、利益最大化のアプローチが異なるからといって、仲介会社を非難するのはお門違いだ。仲介事業は完全成功報酬型。話がまとまらない限りは1円にもならない。契約、決済が成立しなければかけたマンパワー、宣伝等すべての経費が無駄になる。パートナーとなる人とその組織の立場を理解することは成功への第一歩だと言いたい。少しでも高く売るコツは、前提として「時間を有効に使えること」に他ならない。次に、「物件の魅力を価値として評価してくれるパートナーを選ぶ」こと。もし、あなたの所有する不動産が希少性を有しているのであれば、ここは非常に重要なポイント。売却希望価格は往々にして「取引事例比較法」といって、近くの売買事例をもとに算出していくのだが、それはあくまで周辺相場を把握するためのもの。希少価値がありながら、それを付加できないとなれば財産の部分損失に近い。
ただし、勘違いしてはいけないことがある。それは、希少性を認めるのは自分ではない「誰か」という視点だ。ターゲットをイメージできる創造力が不可欠だろう。いざ、売却のための情報公開の準備が整い、内見希望者の受け入れが可能となった段階に入れば、ノウハウはさらに細かく多くなる。このあたりは現場のプロである仲介会社の知見を存分に発揮してもらおう。
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