ストレス/ストレスフリーの思考術

その対人不安は何点? 「不安階層表」で克服しよう(2ページ目)

人との会話が苦手、緊張して人とうまくかかわれない――そんな不安があったら、「不安階層表」を作成してみませんか? 下位のステップから段階的に挑戦していくことで、不安を着実に克服していくことができます。不安階層表の作り方、実践のポイントについて、お伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

階層表を作ると、自分の行動傾向が分かる

自助グループで会話に慣れる

100点の課題にトライするより、まずは10点の課題から始めてみる

たとえば、人との交流に不安を感じる人の場合、身近な人(同級生や同僚)との感情交流を最も苦手と捉えていることが多いものです。そこで、この階層表では、同級生や同僚との交流はランキングの上位に位置させ、下位では家族との交流や、同じような悩みを抱えている人たちとの交流を設定してみました。

対人関係の不安を感じる人は、「ランキング上位のようなコミュニケーションができたら」と感じながらも、実際の生活では、ほとんどの時間を0点の行為に費やしています。「100点ができないので0点に留まる」という二分割的な行動に陥っているのです。

大切なのは、100点の行為ができるまでには、いくつかのステップがあり、「いまの自分でも、楽に実行できるステップがある」ということを知ることです。

あせりは禁物! 一つのステップにじっくり取り組む

まずは10点の課題のように、いちばん身近にいる「家族」と食卓で流れるニュースなどの話しやすい話題をネタにし、たわいのない会話を繰り返してみることから始めてみましょう。この「10点」の課題にだいぶ慣れてきたら、次は20点の課題、30点の課題、というように段階的に挑戦していきます。

ただし、成果をあせってはいけません。無理して外向的な自分を装うと、ストレスから気持ちにリバウンドが生じてしまいます。一つのステップを気負いすぎずにじっくり挑戦し、慣れていくことが大切です。たとえば、20点の「あいさつ」では、最初は「会釈」からスタートし、「小さな声であいさつ」「目を見てあいさつ」というように、ステップ内でも段階的に取り組んでいくといいでしょう。

ステップをいつも確認し、日常の中で意識して実践する

また、同級生や同僚との会話を非常に大きなハードルに感じるなら、次に日常とはかかわりのない場所で、同じ悩みを持つ人と交流する機会を持つといいでしょう。前ページの不安階層表の例では30点、40点の課題に、自助グループやコミュニケーション・セミナーの参加・交流を設定しましたが、自分に合う会に参加し、お互いの話をじっくり語り合う体験をすると、対人交流への自信と会話力がついてきます。

この「不安階層表」は、行動療法という心理療法のカウンセリングでよく用いられるツールです。カウンセラーは毎回、宿題として取り組んでいるステップの内容を確認し、達成できたことや困難な場面を振り返りながら、上のステップに段階的に挑戦していけるように、かかわっていきます。このカウンセリングは不安の克服にとても効果的ですが、自分でできそうな人は、この表を見やすいところに掲示して、実践してみてもいいでしょう。
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