「皮膚むしり症」では、いったん皮膚をむしり始めると、なかなかストップがかかりません。その跡ははっきり残りやすく、行為にストップをかけるためには精神科受診が必要になってきます
皮膚むしり症の症状、具体例、自分で治すことはできるのか、克服法と、適切な治療法についてわかりやすく解説します。
<目次>
「皮膚むしり症」とは女性に多い心の病気
皮膚むしり症はその名の通り、ニキビをつぶす……などといった行為がエスカレートして、むしるレベルにまでなってしまった場合のことを指します。むしる場所は顔・胸・腕・足など、身体の多くの部位がその対象になり得ます。むしったあとは真皮が露出して、出血を伴うこともあり、あとがはっきり残りやすいです。場合によってはその部位に炎症や細菌感染などが起こり、皮膚組織の損傷がさらに深刻化する可能性もあります。
皮膚をむしる行為は、いわば強迫的です。その行為の最中、ストップをなかなかかけられません。場合によっては数時間、我を忘れたように皮膚をむしり続けてしまう場合もあり、皮膚むしり症は強迫神経症に関連のある心の病気とされています。
かつて、皮膚むしり症は強迫神経症の一形態とみなされていましたが、2013年に米国の診断マニュアルがDSM-5に改訂してからは、強迫神経症からは独立して精神疾患の1カテゴリーになっています。
皮膚むしり症では心的ストレスが強い時、その傾向が増悪しやすい傾向があります。「むしる」行為自体は身体のその場所における何らかの問題を正すといった観念が関与する場合もありますが、「皮膚をむしっている最中は気持ちが軽くなる」といった要素もそれがエスカレートしていく要因です。
なお、皮膚むしり症の大部分は女性です。症状の始まりは思春期前後が多くなっています。皮膚むしり症の発症率に関しては幅が広く、200人に1人程度といわれることもあれば、1~5%の人が一生のある時期に発症することがあるといわれています。
皮膚をむしる行為・癖による傷跡、気持ちの落ち込み
皮膚をむしる行為は、それをコントロールできていれば、爪をかんだり、指を口に入れるような悪い癖といった程度で済むことでしょう。しかし、皮膚むしり症ではそのコントロールを失ったために、以下のような状態になりやすいです。- 皮膚を頻繁にむしり、そのあとがいくつも体にはっきり残っている
- いったんむしり始めると、なかなかストップを掛けられず、はっきり傷ができるまでむしり続けてしまう
- 皮膚をむしらないようにどんなに我慢しても、その衝動の強さに、むしってしまう
- 皮膚をむしったあとは、自分を恥じる気持ちや気持ちの落ち込みが大きくなる
- むしったあとを隠すために、念入りなメイクアップなど、相当な労力を費やしている
皮膚むしり症の克服法は? 精神科で適切な治療を
皮膚むしり症は、あまり世間的には認知されていない病気だと思います。そして、家族や友人など周囲の理解はなかなか得られないかもしれません。例えば、友人同士でテレビを見ていた時、知らず知らずのうちに顔の皮膚をむしりだしたら、相手はなかなかそれを受け入れられないのではないでしょうか。もしこのように、むしる行為にストップを掛けられない状態になっていれば、自分を恥ずかしく思う気持ちも生じやすく、自信もなくなるなど、ネガティブな心理傾向になりやすいです。また傷跡を隠すために、外出する際は暑い季節でも服を着込んでしまい、場合によっては外出そのものを控えるようになる可能性もあります。
むしる行為にストップを掛けるためには精神科(神経科)を受診され、心理療法・薬物療法などの治療を受けることが望ましいです。皮膚むしり症は世間的にあまり認知されていないこともあり、本人は「むしる行為」には解決法がないと思い込んでいることも少なくありません。
皮膚むしり症は「決して人には言えないような悪い癖」などではなく、心の病気の1タイプです。具体的には強迫神経症に関連する。この皮膚むしり症は精神科的治療によって対処すべき問題である事は、どうか皆さま、今回の記事を通じて頭の片隅にでも置いておいてください。
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