髪の毛を抜く癖がやめられなくなる抜毛症とは

抜いてしまった髪の毛イメージ

髪の毛を抜く癖がやめられなくなる「抜毛症」。重症化すると自分で治すことは難しいため、適切な治療を受けることが大切です

人はそれぞれ、何かしら「癖」を持っています。緊張すると思わず頭をかいてしまう人、貧乏ゆすりをしてしまう人、目を固く閉じて10まで数えないと落ち着かないという人……。もちろん、これらの癖には精神医学的には何の問題もなく、ただ「そういう癖がある」というだけのことです。

しかし場合によっては、エスカレートした癖をやめたいのにやめられず、最初はただの癖だったものが、心の病気に近い状態になってしまうものもあります。その一つが髪の毛を抜く癖がエスカレートした「抜毛症」です。頭皮の一部の髪がすっかりなくなってしまうほど重症化した場合、適切な治療を考える必要があります。今回は「抜毛症」になりやすい人の傾向、症状、原因、治療法にについて詳しく解説します。

抜毛症の症状と心理的ストレスなどの原因

抜毛症は、かつては文献などで病態を知るような稀な疾患だと考えられていましたが、現在では意外に多い疾患であることが分かっています。その発症率は大まかに0.6~3.4%程度。そして、本人が両親の第一子であるケースが多いことも分かっています。また、女性が男性の約9倍と大部分を占めているものの、男性は女性と比べてその癖を隠したがる傾向が強いため、男性の発症率が実際よりもかなり低く把握されている可能性も考えられています。

抜毛症は通常、20代までの若い年代に始まります。抜毛症の症状は、日常生活で何らかの困難に直面し、心理的ストレスが強くなってくることで増悪する傾向があります。

髪の毛を抜く行為自体は言わば強迫的。通常、その直前に何とも言えない不安がこみ上げてきて、その不安に対処するように髪の毛を抜いてしまうことが多いようです。実際、髪の毛を抜くと気持ちがすっきりするなど、一時的とはいえ、気持ちは楽になります。そのため、不安が再び強まってくると、また髪の毛を抜いてしまうことを繰り返してしまうのです。行為がエスカレートしていく可能性には注意が必要です。

強迫性障害と抜毛症の類似点・違い

抜毛症は、本人も髪の毛を抜く癖を恥ずかしく思っていることが少なくなく、また、それをどうしてもやめられない自分に嫌悪感を抱いていることもあります。また、髪の毛を強迫的に抜き続ける行為自体の非合理性も本人が充分認識できている場合が多く、抜毛症は強迫性障害と重なる部分が多い疾患と見ることもできます。

しかし抜毛症は、強迫性障害と比べると強迫観念は明確でなく、また、強迫行為自体も髪の毛を抜く行為に限定されています。とはいえ、抜毛症があることで日常生活に生じる支障も、強迫性障害のレベルではなく気にしなくてよいかといえば、決してそうではありません。

たとえ、強迫行為が髪の毛を抜くという一つの行為に限定されていても、それがエスカレートしてしまえば、日常生活上の支障は大きくなります。また、仮に異性に好意を持った場合などでも、抜毛癖を相手に知られるのを恐れるあまり距離を置いてしまう……といった問題も生じやすいようです。さらに、抜毛症では抜いた髪の毛を口にしてしまうケースも少なからずあります。抜毛行為がエスカレートしてしまえば消化不良なども起こりやすく、場合によっては胃腸障害が深刻化してしまう可能性もあります。

抜毛症の治し方・治療・対策法……薬物療法・心理療法も

抜毛行為にコントロールが利かなくなって来ると、頭皮の一部の髪の毛がなくなってしまうなど、他人から見ても抜毛症の癖が分かる状態になることもあります。一方でかつらを付けるなどして抜毛症を悟られないようにしていることも少なくなく、友人のみならず一緒に暮らしている家族も長期間気づかないというケースもあります。

しかし、たとえ周囲の人に気づかれなくても、抜毛行為が自生しきれなくなっている場合、上記のように様々な問題点が現れやすくなります。自力でこの癖をやめるのは大変困難です。というのも、髪の毛を抜くという行為が気持ちを楽にする手段になっていることはもちろん、脳内環境が病的になっている可能性もあるからです。髪の毛を抜き続ける行為にストップをかけるには、通常、専門家の力を借りることが望ましいです。

具体的な治療法は個々の病態によりますが、一般的には病的になってしまった脳内環境を是正するために、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などによる薬物療法を行います。また、抜毛癖に拍車をかけている何らかの心理的問題に対しては、心理療法などによって対処します。また、もしも髪の毛を抜き続けたことによって頭皮に炎症が起きているような場合、皮膚科的治療も必要になってきます。

髪の毛を抜くという癖も、場合によっては心の病気として適切な治療が必要になることもあります。もっとも、気持ちが落ち着かなったときに髪をつい1~2本抜いてしまう程度ならば、いわゆる癖のレベルで過剰な心配は無用です。ただし、もしも髪の毛を数十分以上抜き続けるような状態になっていたら、抜毛症に近くなっている可能性も出てきます。抜毛症に限らず、一般に心の病気の予後を良好にするポイントは、できるだけ早期に治療を開始すること。まずは「抜毛症」は治療が必要な病気であることを認識し、もしこの病気が疑われる場合は精神科(神経科)を受診し、自身の心理的問題なども含めて相談すべきことを、ぜひ覚えておいてください。
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