憂鬱な気分が続くとき、有効な対処法・解消法はあるの? 

「憂うつ」のレベルを自己評価する際、それが原因で日常にどのような問題があらわれているかが大きなポイントになります

憂うつな気持ちが続いているとき、それをよく乗り切るためには精神医学的な基礎知識は役立ちます。たとえば、抗うつ薬の効き具合にもそれに関連するポイントがあります


気持ちの浮き沈みは誰にでもあるものです。時には、起きてからずっと冴えない気持ちで一日が終わってしまうこともあるでしょう。冴えない気持ちの原因は、睡眠不足や体調不良、気分の乗らない予定や天気の悪さなど様々だと思いますが、これといった原因がなくても憂鬱な気持ちが続くこともあると思います。
 
今回は、憂鬱な気分の解消に役立つ、精神医学的なアプローチ法を解説します。
 

まず「憂鬱な気持ち」を自覚できていることは、精神医学的に重要

憂鬱だと感じるときは、自分の気持ちが憂鬱な状態だ、と自覚できているときです。当たり前のことを面倒に言い直しているように聞こえるかもしれませんが、精神医学的にこの点は重要です。どの精神症状も、本人が自覚できる問題と、本人には自覚がなく周りが気づく問題の2つに分けられます。
 
本人が憂鬱だと悩んでいる場合、周りの目にも元気がなく見えることが多いです。これはごく自然で、何も問題ありません。一方で、心の病気を発症していたり、心の病気の状態に近くなったりしている場合、本人と周りの感じ方に開きが出てしまうことがあります。

たとえば、本人は憂鬱でたまらないのに、周りは本人の顔に笑みが浮かんでいるのを見て、何か良いことがあったのかと勘違いしてしまうようなこともあります。本人が周りを心配させないように無理をして笑顔を浮かべている場合もありますが、心の病気の問題症状として、場合によっては表情をコントロールできなくなっている可能性もあります。たとえば、この例のように、気持ちは憂鬱感でいっぱいで悲しいのに、顔に笑みが浮かんでしまう場合を含め、「感情表出」に関わる問題があります。これは統合失調症などで、一部の患者さんにはっきり現れることがある症状です。その原因やメカニズムは現代でもはっきりとは解明されていませんが、前頭葉の機能などに何か問題がある可能性が指摘されています。
 
話が本来の「憂鬱」から少し脱線しているように思われるかもしれませんが、まずは自分が憂鬱だと自覚できていることは、自分で解消できるタイプの憂鬱感かどうかを判別する上で、重要です。また、周りの方に憂鬱感が必ずしも分かってもらえるわけではありません。自分の気持ちに気付き、その深刻さを理解してもらうためには、様子を見てもらうだけでは充分でなく、しっかりと話をしないと分かってもらえないこともあることは、しっかり覚えておいていただきたいポイントです。
 

憂鬱な気持ちの原因は「脳内の機能の不調」……努力や気合いでは変えられないことも

憂鬱を始め、気持ちの落ち込みは、精神医学的にはそれに関連する脳内の機能に不調が現れていることを意味します。そして、この不調のレベルが進んでしまった状態が、うつ病のレベルだとも言えます。
 
「精神症状は治療が必要なものではなく、努力や気合で対処できる問題だ」という考えもしばしば耳にしますが、これは心の病気に対するよくある誤解の一つです。こうした誤解の背景には、いわゆる「心の病気」の原因が、「心」という抽象的なものではなく、人体を構成する器官の一つである「脳」内の不調にあるということが、十分に理解されていないことが挙げられると思います。
 
「憂鬱」という気持ち一つをとっても、本人も周りも、気持ちの問題であり、脳内の問題として考えることはあまりないでしょう。
 
一方で、「抗うつ薬」と聞けば、多くの方が、うつ病の治療薬であると分かると思います。それではなぜ、抗うつ薬がうつ病に効くのか。うつ病の症状を和らげるのか。それは、うつ病に関連する「脳内の機能」を、薬が調整してくれるからです。その点が頭に入っていれば、うつ病を発症するということ自体も、気持ちの問題ではなく、脳内の機能に不調が現れたからだということが、理解しやすくなると思います。憂鬱も含めた精神的な不調は、気持ちの問題ではなく、脳内の機能の不調の問題なのです。つまり、深刻な状態で治療を受けずに放置していれば、努力や気合で対処しようとしても、事態が深刻化していく可能性があるということです。
 
では、憂鬱な気分が続く場合は、自分で解消しようと考えずに、精神科を受診すべきなのでしょうか? 受診が必要か、まだ自分で対処できるレベルなのか。その判断を間違いないために押さえておきたいポイントがあります。
 

憂鬱な気持ちで精神科や心療内科受診を考える目安

憂鬱な気持ちを含め、精神症状のレベルの深刻度は、まず日常生活に現われている問題の大きさからチェックするのがよいでしょう。精神疾患の原因は一般に脳内の不調ですが、現時点では脳腫瘍などの明らかに画像検査で見てわかる問題などを除き、精神疾患の原因になっている脳内の不調を検査する方法がありません。そのため、まずは日常生活に現われている問題の大きさを知ることを、診断の助けとします。

例えば、うつ病を診断する際の診断基準は、米国精神医学会が発行する「DSM」などの国際基準で、細かくその基準が示されています。基本的なポイントは、「日常生活にかなりの悪影響を及ぼす抑うつ症状が、2週間以上持続しているか」ということです。言葉を変えれば、現われている抑うつ症状のために、普段の自分とはかなり違う日常が2週間以上続いていたら、脳内の不調はかなりのレベルと考えられ、もはや自力で対処できるレベルを超えている可能性があると判断します。
 
もしも普段の自分ではないような憂鬱な気持ちの自覚があり、その憂鬱感が原因で日常生活が普段通りに回せなくなっている場合、その状態が1週間以上続いた場合には、うつ病の可能性なども考えるようにしたいところです。自力で対処できる問題を越えている可能性もあることにはご注意ください。

一方で、自分では憂鬱感でいっぱいで気持ちが落ち込んでいると思っていても、普段通りの日常生活がそれなりに回っている場合は、通常、心の病気のレベルではありません。憂鬱だけれど職場や学校などでやるべきことはそれなりにできている、そして、家族や友人との人間関係もそれなりに維持できている場合は、その憂鬱感には自力で対処できる余地があると考えて良いでしょう。
 

自分でできる憂鬱な気持ちの解消方法

ここまでのチェックで、まだ精神科や心療内科を受診するレベルではないと思われる方は、自分でできる憂鬱感の解消法を試してみましょう。では憂鬱感を解消するために、具体的に何をすればよいのか? ここで役に立ちたいのが、抗うつ剤の知識です。

抗うつ剤にはいくつかのタイプがありますが、基本的には、飲んですぐ効くような即効性のある薬ではありません。一般に数日から1週間ぐらいして効果が現れてくるものです。この「飲んですぐ効かない」という部分は決して治療薬の欠点ではなく、むしろ優れた利点といえる面があります。なぜなら、飲んですぐにすっきりと気分が良くなるような薬があったとすれば、少なからず、それを乱用してしまう危険が出てくるものです。実際に気分が下がっているようなときは、通常、日常生活に何か厄介な問題や悩みを抱えているものです。仮に即効性のある薬を飲んで憂鬱感から解放されたとしても、また薬の効き目が切れて問題を思い出せば、再び同じ薬を飲みたくなってしまうでしょう。そのまま依存症になってしまう可能性も出てきます。一方、抗うつ薬は薬を飲んだ直後は、効いているのか、いないのかが、よく分かりにくいため、またすぐ飲みたくなるような薬ではなく、乱用や依存症につながる危険はほとんどないと言えます。
 
憂鬱な気持ちが続くとき、落ちた気持ちを上げるために何をしたら効果的なのか分からない場合は、この抗うつ薬のしくみも参考になります。
 
すなわち、「何かをしたことで、すぐに気持ちがすっかり明るくなるようなこと」はあえて避けてみては、ということです。たとえば、飲酒やギャンブル、ストレス発散になるような買い物などは、瞬間的に気持ちが上がるかもしれませんが、それが冷めるとすぐに元の憂鬱な状態に戻り、また同じ行動を繰り返したくなってしまいます。よくない習慣への依存という、さらに憂鬱さを深刻化させるような問題にもつながりやすいものです。

それゆえ、先に述べた抗うつ薬のように、「行動した直後はその効果が良く分からない。でもしばらく続けていくと、徐々にその効果が実感できてくるようなもの」を考えて試すことも考慮してみてください。

具体的なものは個々人で違いがあると思いますが、運動であれ、早起きであれ、少しだけいつもよりも健康的な朝食習慣であれ、読書や勉強であれ、何かしら心と身体によい効果が現れそうなことを試してみるのです。最初は試行錯誤が続くかもしれません。向き・不向きは人によって違うからです。

これは例えるならば、百円玉貯金のようなものと言えるかもしれません。
 
憂鬱な気持ちになるたびに、貯金箱に百円玉を入れていくとします。百円玉を1枚入れてみた程度では、その直後に気持ちがあがることはないでしょう。しかし、憂鬱な気持ちになるたびに、1枚1枚と増やしていくと、貯金箱は徐々に重くなっていくと思います。このように少しずつでも、自分自身の知見を貯めていくのです。ここまでは例え話ですが、憂鬱な気持ちになるたびに、実際に百円玉貯金をするのもおすすめしておきます。憂鬱な気持ちとそれに対する試行錯誤を繰り返すうちに、少しずつちょっとした貯金も増え、憂鬱な気持ちが戻るころには自分に何か素敵なご褒美が買えるようになっている可能性もあります。
 
以上、今回は憂鬱な気持ちが長引くときの対処法として有効な、精神医学的な方法について解説しました。場合によっては自力では対処できない憂鬱感もあること、自分で解消できそうなときも即効性は求めずに、試行錯誤をしていくことが確実な方法であることを、ぜひ覚えておいてください。
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