国家公務員も「再任用制度」により65歳まで働けるように

定年後、後輩に長年培った仕事のノウハウを伝えることができるのは再任用ならではかも知れない。

短時間だから働き続けられるのかも知れない


平成25年4月1日施行の「改正高年齢者雇用安定法」により、民間企業の就労者は希望すれば原則65歳まで働き続けることができるようになりました。

国家公務員も「再任用制度」により原則65歳まで働き続けることができます。「再任用」とは、国家公務員法に基づいて採用することを指します。

平成28年7月1日現在の再任用職員は10,405人(前年より1589人増)で、短時間勤務が70.4%を占めます。生涯賃金と公的年金で民間サラリーマンより頭ひとつ抜きんでる(?)といわれる公務員は、60歳定年後の就業をどのように考えているのでしょう。

人事院「平成29年度退職公務員生活状況調査の結果について(平成30年3月)」から、平成28年度に60歳で定年退職した一般職国家公務員の退職前と退職後の考えをご紹介します。

無収入を避けるため、65歳までフルタイムで働きたい

まずは、退職「前」の考えを見ていきましょう。

60歳定年退職後も「働きたい」は84.4%、「働きたいと思わない」は15.6%で、10人に8.5人が退職後も働きたいと考えました。理由(複数回答)は「生活費が必要」が最も多く88.3%。理由のトップ3は次のとおりです。

1位「生活費が必要」 88.3%
2位「健康によい」 31.8%
3位「将来に備えて蓄える」 30.0%

働き方は、「フルタイム勤務」が55.7%、「短時間勤務」は38.5%です。短時間勤務では、「週当たりの勤務日数を減らす」働き方を約8割の人が希望しています。

何歳まで働き続けたいと思ったかというと、「65歳」が55.3%、次いで「70歳」が15.6%。「65歳以上まで」働きたいと4人に3人が考えています。

定年退職後の働き先は約8割が「国の機関」を希望

退職後の就業希望先のトップは、「国の機関(行政執行法人を含む)のフルタイム・短時間再任用職員」で78.5%。次いで「問わない」7.2%、「民間企業」5.7%、「政府関係機関・地方公共団体等」3.7%と続きます。一般職国家公務員が抱く定年退職後の姿は「フルタイムで再任用職員として国の機関で65歳まで就労」のようです。

60歳定年退職者の9割近くが実際に働き続けている

100歳まで元気で生きるために、夫婦で1年くらい身体のオーバーホールをしたいな!

妻の体調が思わしくない……。


次に、定年退職「後」の就業状況を見てみましょう。60歳定年退職後、「仕事に就いている」が86.1%、「就いていない」は13.9%。退職前の調査より働いている人が約2ポイント増えています。

仕事に就いてない人のうち45.9%が「しばらく休んだのち、また考えたい」と考えていますが、「自分自身の健康状態に不安」「家族の健康状態など家庭の事情がある」と健康上の問題を抱える人も少なくありません。

国の機関で働く人が8割。民間企業で働く3割強は「紹介」で就職

就労先は、「国の機関(行政執行法人を含む)のフルタイム・短時間再任用職員」が80.8%、民間企業は6.9%です。

民間企業等での職種は、役員(取締役・監査役等)、顧問・相談役などが9.1%、事務系業務(管理職を含む)が40.7%、技術系事務(管理職を含む)13.0%、専門職(医師、看護師、教師、税理士等)4.7%です。仕事を探した方法のトップは「友人・知人の紹介」34.7%で、次いで「ハローワーク、人材紹介所等のあっせん」20.2%、「新聞、情報誌、インターネット等の求人情報を見て応募」13.0%です。

国の機関よりも民間企業のほうがフルタイムの割合は多い

再任用されて国の機関で働く人の50.6%がフルタイム勤務です。短時間勤務者は47.4%で週3.7日、28.4時間働いています。

一方、民間企業等で働く人はフルタイム勤務が77.7%を占めます。短時間勤務は週3.7日、22.7時間と再任用より6時間近く短くなっています。

給与に半数以上が不満

再任用で「国の機関(行政執行法人を含む)のフルタイム・短時間勤務」している職員は「仕事内容」や「勤務形態・勤務時間」には6割超が「満足」「ほぼ満足」していますが、給与については半数超が「やや不満」「不満」を感じています。

仕事内容
満足  23.6%
やや満足  40.8%
どちらともいえない  20.2%
やや不満  8.1%
不満  5.0%

給与
満足  4.6%
やや満足  16.5%
どちらともいえない  24.1%
やや不満  28.0%
不満  24.5%

勤務形態・勤務時間
満足  20.5%
やや満足  42.8%
どちらともいえない  20.8%
やや不満  8.2%
不満  5.2%

待遇などに不満も

再任用で働いている人は、次のような不満や不安を持っています。

1位 「給与、福利・厚生の面での処遇が十分でない」 49.6%
2位 「期待されている役割があいまいで戸惑うことがある」 38.6%
3位 「定年退職前のようにモチベーションを維持できない」 37.4%

8割が「定年年齢の引き上げ」を希望

今後の高齢者雇用の制度については、「定年年齢の引き上げ」を約8割の人が希望しています。「現行の再任用制度で希望者全員を雇用」「定年制の廃止」を希望する人もいます。以下にそれぞれの理由をご紹介します。

「定年年齢の引き上げ(選択制)と現行の再任用制度(短時間再任用を含む)の併用」  48.5%
<理由>
  • 60歳以降は個々人の能力・体力・家庭状況に応じて柔軟な働き方ができるほうが良いから  81.9%
  • 個々人の生活設計等の状況に応じて、退職手当の受給時期を自由に選択できるから  34.7%
  • 60歳以降は個々人の能力・体力等に応じた職責の仕事をするほうが良いから  34.2%
「定年年齢の引き上げ(一律)」  28.4%
<理由>
  • 満額年金支給開始年齢(65歳)までの雇用が保証される  78.9%
  • 自分を含め周りを見ても、今の60歳台はまだまだ働けると思うから  44.2%
  • 基本的に60歳以前と同様の仕事が続けられるので、これまでの経験や知識を十分に活用できる  37.3%
「現行の再任王制度で希望者全員を雇用」  13.2%
<理由>
  • 60歳以降は個々人の能力・体力・家庭状況に応じて柔軟な働き方ができるほうがよい  71.9%
  • たいていは60歳定年を前提にライフプランを立てており、定年後にやりたいと思っていたこともやりつつ、仕事もして、充実した定年後の生活を送りたいから  54.1%
  • 希望すれば満額支給開始年齢(65歳)までの雇用が保障されるはず  45.9%
「定年制の廃止」  3.9%
<理由>
  • 個々人の能力・体力・生活設計等の状況に応じて、退職の時期を自由に選択できるから  71.7%
  • 年齢にかかわらず、能力・実績主義を徹底し、公務の能力向上を図ることができる  31.9%
  • 高齢化が進展する中で、年齢にかかわらず何歳までも働き続けられるようにすべき  30.1%
●「定年年齢の引き上げ」 49.5%
<理由>
「満額年金支給年齢(65歳)までの雇用が保障されるから」 75.3%
「自分を含め周りを見ても、今の60歳台はまだまだ働けると思うから」 46.9%
「基本的に定年前と同様の仕事が続けられるので、これまでの経験や知識を十分活用できるから」 44.1%

働いていれば黒字家計だが、働いていないと月13万円超の赤字に?

短時間勤務で山登りを楽しみつつ悠々自適の生活をする。再任用があってよかった!

趣味を楽しむのは案外とお金がかかる。働くぞ!


2013年度以降、60歳定年退職者には「公的年金の空白期間」があります。実際の家計収支はどうなっているのでしょうか。ゆとり度は、「いくらかゆとりがある」「ゆとりはないが赤字でもない」と「時々赤字になる」「常に赤字で生活が苦しい」が拮抗しています。勤労世帯、働いていない世帯それぞれの平均収支は次のとおりです。

●勤労世帯
収入 41.3万円
・フルタイム勤務世帯 44.8万円(うち本人給与32.6万円)
・短時間勤務世帯 36.6万円(うち本人給与21.3万円)
支出 36.0万円

働いていない世帯
収入 19.9万円
支出 33.3万円

働いていない世帯では13万円強の赤字。赤字は金融資産を取り崩して対応していますが、「節約を徹底する」人もかなりいるようです。

赤字への対応方法
「退職手当の取り崩し」 67.9%
「退職手当以外の預貯金等の取り崩し」 61.1%
「節約を徹底する」 42.8%

「夫婦2人世帯でゆとりある生活を送るために必要な生活費はいくら?」に対しては、勤労世帯は33.9万円、働いていない世帯は30.8万円で、定年退職後も働けばクリアできる金額です。

退職前に知っておきたかったことは「お金」関係

退職後の生活や生涯設計について考えるようになった時期は「50歳代後半」が最も多く、きっかけは「自分の年金支給開始年齢を知って」でした。

彼らが退職前に知っておけばよかったと思ったこと、上位3つは次のとおりです。

「年金、保険などの知識」 58.9%
「退職金などの資産運用の知識」 33.3%
「税金・相続などの法律知識」 26.4%

公務員の定年年齢を65歳に。検討を開始。

2033年度に65歳定年になりそう。ちょうど僕が退職する時だ!

やったー! 定年が65歳に引き上げられるらしい。


定年が60歳の場合、公的年金を受給するまでに無収入の期間が発生する恐れがあるため、民間企業には「改正高年齢者雇用安定法」で原則65歳までの雇用を義務付けました。国家・地方公務員には、定年年齢を65歳に延長する方向で検討が進んでいます。検討内容の一部をご紹介します。なお、「定年年齢の引き上げ(一律)」は、前出の再任用者の3割弱が希望しています。

<検討内容の例>
  • 2021年度から3年毎に1歳ずつ延長し33年度に65歳にする。
  • 60歳以降の給与体系を見直し給与水準を抑制する。
  • 中高年を中心に60歳までの年功的な給与カーブを見直す。
  • 役職定年を設ける。
  • 60歳以降は短時間勤務も選択可能にする。
今後さらに検討を進め2019年の通常国会に「国家公務員法改正案」など関連法案を提出し、21年度からの着手を目指しています。「リタイアは65歳以降」の幕が上がります。

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