企業の約8割が「継続雇用制度」を選択
国は、2013年「改正高年齢者雇用安定法」により「継続雇用制度の導入」「定年の引き上げ」「定年制の廃止」のいずれかで「原則、希望者全員を65歳まで雇用」するよう企業に義務づけました。厚生労働省「平成30年 高年齢者の雇用状況(6月1日現在)」によると、「継続雇用制度の導入」を行った企業は1%減少したものの約80%を占めています。詳しく見ると、71%の企業が「希望者全員を継続雇用」しており、「基準該当者65歳以上を継続雇用」する企業は29%に過ぎません。●高年齢者の雇用確保措置の実施状況
- 継続雇用制度の導入 124,135社 79.3%(前年比1.0%減)
- 定年の引き上げ 28,359社 18.1%(同1.0% 増)
- 定年制の廃止 4,113社 2.6%(前年と同じ)
・希望者全員65歳以上の継続雇用制度(71%)
中小企業 80,512社 73.6%(前年比1.1%増)
大企業 88,124社 51.9%(前年比1.1%増)
・基準該当者65歳以上の継続雇用制度(29%)
中小企業 28,950社 26.4%(前年比1.1%減)
大企業 36,011社 48.1%(前年比1.1%減)
では、雇用確保措置がどのような状況なのか、全体と事業規模別にもう少し詳しく見ていきましょう。
大企業も65歳定年が増加
まず「定年制」を見ていきましょう。全体では「廃止」する企業が2.6%(前年と同じ)、「65歳」は16.1%(前年比0.8%増)、「66~69歳」は0.8%(同0.1%増)、「70歳以上」は1.2%(同0.1%増)。では、事業規模別に見ていきましょう。・定年制を廃止(4113社 2.6%)
中小企業 4,032社 2.9%(前年比0.1%増)
大企業 81社 0.5%(前年と同じ)
・65歳定年(25217社 16.1%)
中小企業 23,685社 16.8%(前年比0.7%増)
大企業 1,532社 9.4%(前年比0.9%増)
・66歳~69歳定年(1232社 0.8%)
中小企業 1207社 0.9%(前年比0.2%増)
大企業 25社 0.2%(前年比0.1%増)
・70歳以上定年(1910社 1.2%)
中小企業 1,863社 1.3%(前年比0.1%増)
大企業 47社 0.3%(前年比0.1%増)
大企業でも「65歳定年」が増加しています。
66歳以上が働ける制度のある企業が3割
次に「66歳以上働ける制度のある企業」と「70歳以上働ける制度のある企業」について見ていきましょう。全体では、希望者全員が66歳以上働ける企業は6.0%で前年より0.7%増加し、70歳以上も0.6%増えて5.6%です。全体数には「定年制を廃止」「66歳以上・70歳以上定年」を含みます。
●66歳以上働ける制度がある企業(43,259社 27.6%)
中小企業 39,699社 28.2%
大企業社 3,560社 21.8%
・希望者全員66歳以上の継続雇用制度(9406社 6.0%)
中小企業 8,979社 6.4%(前年比0.7%増)
大企業 427社 2.6%(前年比0.5%増)
・基準該当者66歳以上雇用(15,330社 9.8%)
中小企業 13,867社 9.9%(前年比0.6%)
大企業 1,463社 8.9%(前年比1.2%増)
・その他の制度で66歳以上まで雇用(11,269社 7.2%)
中小企業 9,752社 6.9%
大企業 1,517社 9.3%
●70歳以上働ける制度がある企業(40,515社 25.8%)
中小企業 37,232社 26.5%(前年比3.1%増)
大企業 3,283社 20.1%(前年比4.7%増)
・希望者全員70歳以上雇用(8,793社 5.6%)
中小企業 8,408社 6.0%(前年比0.6%増)
大企業 385社 2.4%(前年比0.6%増)
・基準該当者70歳以上雇用(14,665社 9.3%)
中小企業 13,337社 9.5%(前年比0.6%増)
大企業 1,328社 8.1%(前年比1.2%増)
・その他の制度で70歳以上雇用(11,034社 7.0%)
中小企業 9,592社 6.8%(前年比1.7%増)
大企業 1,442社 8.8%(前年比2.9%増)
大企業も「基準該当者」「その他の制度」などの条件付きですが高齢者雇用に積極的になっています。
職場の影響に「社員の定着率向上やモチベーション向上」
2017年3月、政府は「働き方改革実行計画」をまとめました。この中には高齢者の就業促進が含まれており、これを受けて独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が「60歳以降の社員に関する人事管理」に関するアンケート調査を行いました。
この調査によると、60~64歳の継続雇用者や正社員がいる会社の42%が66歳以降も彼らを活用したいと考えています。では「定年64歳以下、かつ継続雇用65歳以下(=以下「雇用確保措置企業」)」、「定年64歳以下、かつ継続雇用66歳以上(=以下「継続雇用66歳以上企業」)」の企業の60歳代前半社員に対する評価をご紹介します。
●活用の課題は?
<雇用確保措置企業>
- 本人のモチベーションの維持・向上 67.5%
- 本人の健康 64.1%
- 世代交代の遅延・停滞 34.6%
- 本人の健康 69・4%
- 本人のモチベーションの維持・向上 61.5%
- 世代交代の遅延・停滞 36.4%
<雇用確保措置企業>
- 高い専門能力を持っている 86.6%
- 幅広い人脈を持っている 71.8%
- 高い管理能力・指導能力を持っている 69.1%
- 労働意欲が高い 65.2%
- 高い専門能力を持っている 87.5%
- 高い管理能力・指導力を持っている 73.8%
- 労働意欲が高い 70.7%
- 幅広い人脈を持っている 69.6%
<雇用確保措置企業>
- 職場の生産性の向上 75.5%
- 職場の人間関係が良くなる 55.0%
- 59歳以下の正社員の定着率の向上 50.0%
- 59歳以下の正社員のモチベーション向上 48.1%
- 職場の生産性の向上 81.1%
- 職場の人間関係が良くなる 59.8%
- 59歳以下の正社員の定着率の向上 57.0%
- 59歳以下の正社員のモチベーション向上 54.5%
●仕事内容が継続する人の割合
<雇用確保措置企業>
- ほぼ全員 44.9%
- 8割程度 18.8%
- 半数程度 12.1%
- ほぼ全員 46.9%
- 8割程度 20.1%
- 半数程度 12.6%
<雇用確保措置企業>
- 増えている 42.4%
- やや増えている 43.2%
- 変わらない 13.2%
- 増えている 55.2%
- やや増えている 35.1%
- 変わらない 8.3%
<雇用確保措置企業>
- 増えている 25.9%
- やや増えている 41.2%
- 変わらない 32.0%
- 増えている 40.2%
- やや増えている 36.4%
- 変わらない 22.3%
●基本給の決め方は?
<雇用確保措置企業>
- 60歳時点の基本給の一定比率の金額を支給 31.6%
- 60歳時点の職能資格や職位などに対応して支給 25.8%
- 職種や仕事内容に応じて支給 24.3%
- 60歳時点の基本給の一定比率の金額を支給 24.1%
- 60歳時点の職能資格や職位などに対応して支給 24.6%
- 職種や仕事内容に応じて支給 32.0%
<雇用確保措置企業>
- 60~70%未満 25.2%
- 70~80%未満 21.9%
- 50~60%未満 16.8%
- 70~80%未満 20.6%
- 60~70%未満 20.1%
<雇用確保措置企業>
- 精算している 89.2%
- 精算していない 5.4%
- 退職金・慰労金はない 0.7%
- 精算している 80.9%
- 精算していない 11.4%
- 退職金・慰労金はない 0.4%
<雇用確保措置企業>
- 全員を対象としている 8.8%
- 一部を対象としている 4.1%
- 全員を対象としていない 85.7%
- 全員を対象としている 8.8%
- 一部を対象としている 5.6%
- 全員を対象としていない 82.4%
政府は「65歳定年」や「65歳以降の継続雇用」を推進
2019年3月28日に公表された「働き方改革実行計画」には「高齢者の就業促進の取り組み」――「65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業への支援」と「多様な技術・経験を有するシニア層が、一つの企業に留まらず、幅広く社会に貢献できる仕組み」――が明記されています。これからの働き方は、テレワークや副業、兼業、転職など根本から変わりそうです。70歳まで現役の時代はすぐそこまで来ているようです。時代や企業が求める能力は何かを見極めながら、スキルアップ・キャリアアップなどの自分磨きが今まで以上に必要です。【関連記事】
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