女性のパワー

地球規模で文化の融合が起こり、価値観が多様化した現代。混沌とも呼べる時代、日本の文化を引っ張っているのは誰であろうか。私は断言する。女性である。我が国の歴史を振り返れば、そんな時代があった。藤原氏や源氏などの貴族達が陰湿とも思える権力闘争を繰り広げる中、平安の文化を引っ張ったのは紫式部や清少納言だった。

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平安時代の女性パワー


彼女らは生まれたばかりの平仮名を駆使し、国風文化の主人公となった。紀貫之にいたっては「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」と男でありながら女のフリをして『土佐日記』を書いたほどだ。平安と平成、かように似てはいるが、大きく異なる点がある。平安文化は特定の女性が牽引役だったが、平成はそうではない。現代文化は一般の女性がその推進役を担っているという点だ。

ウイングを広げた女性達

以前なら「男もすなる」だった世界に大きくウイングを広げた女性達。社会は彼女らに異名、いや、称号を献上する。例をあげよう。

いわく「ドボジョ」。土木分野で働く女性達のことだ。
いわく「リケジョ」。理系の女子学生や研究職の女性だ。

それは趣味の世界でも如実だ。一昔前なら、お茶やお花など分野が限られていた「女性のたしなみ」。今や、彼女たちはその鎖を切った。

「鉄子」という言葉をご存じだろうか。これ、鉄道好きの女性を表す称号なのだ。引退する列車に別れを告げたいと、遠く離れた駅まで足を運ぶ女性の多さに、私たちはもはや驚きもしない。私も郷田真隆同様にプロレス好きだが、先日観戦に行ったプロレス会場には、女性の声援、ヤジが響いていた。大分県別府市での試合だったが、

「やったれライガー、ああ、何しとんねん。そこで、飛ばんかいっ」

と関西在住を強く示唆する女性陣の真後ろに座らせていただいたのである。彼女らはその言動よろしく、アレクサンダーのように遠く九州まで遠征してこられたのだろう。ご存じない方のために一応記しておくが、ライガーとは新日本プロレスの獣神サンダーライガー選手のことである。小柄ながらロープ最上段から体当たりをぶちかます、歴史に残る名レスラーである。

「山ガール」は登山好きの女性達。昭和を代表する男性ボーカルグループ・ダークダックスが歌った「娘さんよく聞けよ山男にゃ惚れるなよ。山で吹かれりゃよ若後家さんだよ」なんてフレーズは、もはや通用しない。

 

「ショー女」のすすめ

さて、本題である。実は趣味としての将棋文化も、ほぼ男性独占の状態であった。朝ドラ『マッサン』は大正から昭和初期の物語だが、たびたび出てきた将棋シーンは男だけ。これについては『朝ドラ「マッサン」の将棋は日本人の底力だ』を参考にしていただきたい。

ガイドが子どもの頃、つまり、昭和40年代。縁台で将棋を指すのは、おじさん連中に限られていた。その頃の世相を『鋳鉄(ちゅうてつ)の扉を開けた棋士~杉崎里子』に書いているので、こちらも、ぜひご一読願いたい。そして悲しいことに、今も同じような状態が続いているのだ。

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子ども教室でがんばる女の子


例えば、我が大分県の将棋大会に参加する女性の割合は1%に満たないし、ガイドが主催する子ども将棋教室将星会でも女子は男子の1割程度である。もちろん、その分、がんばって将棋を学んでいるが、悲しいほどに少ないのが現実だ。 将棋は、現代に生き残った「男もすなる」ゾーンなのである。その現状を憂い、私は声を大にして、というか、フォントを太くして提案したい。

世の女性の皆さん。「ショー女」と呼ばれてみませんか。「ショー女」。もちろん、私の造語である。ひょっとしたら、既に、どこかでどなたかが使用されているかも知れないが、その際はごめんなさい。造語ではあるが、読者の皆さんには、きっと、おわかりいただけるであろう。そう、「将棋が大好きな女性」への称号だ。

すでに将棋を愛してくださっている女性の皆さんは、さっそく「ショー女」を名乗っていただきたい。今回は、そうではなく、将棋なんて興味なかったなあっていう未体験な貴方に「ショー女」への道を最短距離でガイドしたい。

「ショー女」の必要条件とは何か

ますは「ショー女」になるための必要条件を確認せねばなるまい。「プ女子」を例に考察していこう。「プ女子」自身がリング上がらぬように、「ショー女」は将棋の対局経験を条件とはしない。しかし、楽しんで観戦できなければならない。大会会場まで足を運ばずとも、テレビやネットの対局で十分である。

そして、一緒にネット観戦している友人や仲間の横で「やったれライガー、何しとんねん。そこで、飛ばんかいっ」と同レベルの情熱を披瀝することができれば、もはや一流の「ショー女」である。将棋の場合、実際の会場での雄叫びはご遠慮いただかねばならないが、要するに、磨くべき必要条件は観戦力なのである。

私は丹下団平になる

「プ女子」は、自分がライガーのようになりたいとは思っていない。ライガーの躍動を目にすることが好きなのである。同様に、純粋に対局観戦を楽しめる力こそ、「ショー女」の条件なのである。では、その力をどうやってつけていくか。ガイドしていこう。現時点で将棋にまったく興味がなくとも大丈夫。貴方は「明日のショー女」となれるのだ。 そのために、今回の私は丹下団平になるぞ、ショージョォォォ。

※丹下段平:昭和の名作漫画『あしたのジョー』に登場するジョーのコーチである。少年院にいるジョーに葉書を使った通信教育をする。そのタイトルは「あしたのために」であった。ジョーがダウンすると「立てえ、立てえ、立ってくれえ、ジョォォォ」と叫ぶ。ちなみに下記のような顔である。

 

「ショー女」への近道 (あしたのために、その1)

「ショー女」への近道は、まず、誰かのファンになることだ。つまり、ごひいきの棋士を見つけることが始まりだ。断っておくが、これは男性棋士、女性棋士を問わない。「プ女子」にだって、男子プロレス派もいれば、女子プロレス派もいるのだ。いずれにせよ、「やったれライガー」と叫ぶべき対象を持つことが重要なのだ。思い入れのある棋士の存在が、あなたを「ショー女」へと導いてくれるのである。

あしたのためにその1:同郷を探す

では、どうやって選ぶか。ガイドがおすすめする一つは出身地での選択である。その棋士があなたと同郷なら、親近感が深まること間違いなしではないか。一例をあげよう。

「私、菅井竜也さんのファンなの。なにせ、同じ岡山生まれでしょ。二人とも、きび団子で育ったのよ。あの指し方はきび団子で鍛えたものよ」

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お団子もショー女へのアイテムだ


郷土のお団子が棋士と貴方を結びつけてくれるのである。素晴らしい、実に素晴らしい「ショー女」フレーズである。 では、どうやって、棋士の出身地を調べるか。日本将棋連盟の棋士紹介HP、または、日本女子プロ将棋協会の紹介HPを見れば一発である。以下の選択基準も上記のHPを参考にしてくれい、ショージョォォ。ああ……、舌の根も乾かぬうちですが、くどいようなので段平調は控えます。

あしたのためにその2:たとえば王子様を探す

生まれ故郷なんて関係ない、私は見た目重視なのという方もいるだろう。この選択においては「たで食う虫も好きずき」であり、好みの問題もあろうから、自分の目でしっかりと選んでほしい。いろいろな差し障りがあるのでガイドは口をつぐみたい。が、それではガイドとしてどうかとも思うので、一つだけ、実際に耳にしたある女性の言葉を紹介しよう。

「金井 恒太さんって素敵ねえ。ウィーンに住んでいたって言うんだけど、まるでプリンスよ、金井王子よ」

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王子様と呼ばれた金井恒太


あしたのためにその3:年齢で探す

年齢で選ぶのも良いかもしれない。

「渡部愛ちゃんと私の妹と同い年なのよ。ああ、あんな妹だったらなあ」

「森下卓って、私のパパと同じ年なのよ。信じられない若さよねえ」

ごひいき棋士の年齢まで知っているというのは、かなり、高度な「ショー女」であると言えよう。

あしたのためにその4:チャンピオンを捜す

「プ女子」の中にはチャンピオン好きの方もいる。とにかくベルトを巻いたレスラーが好きという方だ。将棋にも大小様々なタイトルがある。「ショー女」にだって、タイトルホルダーを応援したい人がいるだろう。また、タイトル戦はテレビ、新聞、ネットなどのメディアで楽しめるので応援のしがいがあるはずだ。

「将棋はやっぱり名人よ。今の名人位は羽生さんだから、羽生さん命なの」

ちょっと浮気っぽい感もあるが、これも一興のフレーズである。

あしたのためにその5:ユニークさで探す

その他、「だじゃれ王」豊川孝弘(『マツコ・有吉絶賛の「豊川孝弘」-棋界の音二郎』)などいろいろな特徴を持つ棋士が山のようにいる。将棋界はユニークな人材の宝庫なのだ。過去記事コンテンツの将棋棋士紹介を参考にしていただけたら幸いである。

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だじゃれ王・豊川孝弘


「ショー女」への近道

ごひいき棋士が決まったら、さらにネットで検索し、その情報を手に入れる。血液型や失敗談などのエピソードも知ることができるだろう。だが、ここで重要なのは、得意戦法である。思い出していただきたい、「プ女子」の雄叫びの後半部分を。

「ここで、飛ばんかいっ」

このフレーズは、ライガーがロープ最上段からの体当たりを得意としていることを知らなければ出せないものである。同様に「ショー女」はごひいき棋士の得意技を知っておく必要がある。一つのポイントは「飛車」がどこに動くかである。例えば、鈴木大介が飛車を盤面の真ん中に構えたとしよう。チャンスである。どうぞ思う存分、叫んでいただきたい。

「待ってました。大ちゃんお得意、パワー中飛車!」

もう、あなたは超一流の「ショー女」である。

「ショー女」への道

最後に、将棋の簡単なルールを知っておくと、より楽しい観戦ができる。これは、完璧に知る必要はない。「プ女子」だって3カウントでフォール、反則は5秒以内ということは知っているだろう。だが、3ウエイ戦の勝敗決定ルールなどは知らずとも、あの声援やヤジはとばせる。

では、どこまで知っておかねばならないか。駒の名前と動かし方である。たった八種類の駒だ。そう難しくはない。これは以前の記事(将棋の駒の動かし方と初心者が指しがちな禁じ手4つ)をお読みいただきたい。

「ショー女」からの道

「ショー女」……いかがであろうか。最初に書いたように、将棋は圧倒的に男性中心の世界である。私は、とにかく「ショー女」として、まず形から入ってもらえるようガイドしてきた。ご批判もあろうかと思う。だが、である。だが、最初は形先行であったとしても……である。

きっと将棋に触れてくれた「ショー女」の皆さんには、その楽しさ、奥深さを知ってもらえるものとも確信している。その時こそ、将棋界の風景が一変する時である。そして、その時、私は丹下団平の役割を終え、All Aboutにこう書くつもりだ。

「男もすなる観戦記といふものを、女もしてみむとてするなり……」

【敬称に関して】
文中における個人名の敬称について、ガイドは下記のように考えています。

  1. プロ棋士の方の活動は公的であると考え、敬称を略させていただきます。ただし、ガイドが棋士としての行為外の活動だと考えた場合には敬称をつけさせていただきます。
  2. アマ棋士の方には敬称をつけさせていただきます。
  3. その他の方々も職業的公人であると考えた場合は敬称を略させていただきます。

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