景気がいいのにどうしてリストラするの?
リストラは景気に関係なく行なわれるようになってきた
これまで日本企業の特質と言われてきた終身雇用制度は完全に崩壊したのでしょうか? ガイドなりに解説してみたいと思います。
リストラは不況期に始まった
バブル崩壊後の平成不況期に3つの過剰(雇用、設備、債務)が指摘され、事業の再構築を断行する企業が相次ぎました。これがリストラと言われるものです。
過剰設備を廃棄した結果、その設備で仕事をしていた人々が職を失う一方、そこから生まれた設備費と人件費の余剰を原資に、会社は過剰債務(借金)を返済しました。この時から、終身雇用制は実質的に崩壊したと言われています。それだけバブル崩壊のインパクトは大きかったのでしょう。
景気は好景気と不景気との間をぐるぐると循環する性質を持っています。不景気であっても、じっと我慢していればやがて景気が回復し、販売や生産が盛り上がってきます。
景気が回復した時に社内に働き手がいなければ、企業は販売や生産を行なうことができません。そのため、不景気であっても安易に従業員を削減せず、仕事が無くとも社内に抱え込んでおきます。これを雇用保蔵と言います。
余剰人員を抱えることで、企業は人件費負担が増えますが、国の金銭的支援(雇用調整助成金など)もあって、これまでは何とか持ちこたえてきました。
しかし最近は、このような雇用維持の考え方が見直されつつあります。
景気循環ではなく、構造的な問題が背景にあるからです。
構造が変わると、雇用維持が困難になる
たとえば、ITなどの技術の進化速度が速く、それについていけない企業は、一気に「負け組企業」となり、立ち直ることがほぼ不可能となります。一方で、AIやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)による事務作業の合理化が人員削減を加速化させます。そうなると事業を売却するか、撤退するか、リストラするしか選択肢がありません。人員削減は必至となります。
また産業構造の変化やグローバル化、少子高齢化などの人口動態の変化によって、どうしても衰退産業が生じます。衰退産業であれば、景気が回復したとしても業績は拡大できません。不況期に我慢して従業員を抱えていたとしても、その従業員を活かすことができないのです。
そのため、衰退産業の従業員をいつまでも抱えておくのではなく、景気・不景気に関係なく、成長産業に労働移動させようという考え方が強まってきているのです。
企業のガバナンスの変化もリストラ圧力となっている
それと企業のガバナンスが変わってきていることも見逃せません。完全なオーナー企業であれば、「俺の目の黒い内は、安易な人員削減はしない。雇用は維持する」といえば済みますが、多くの大企業の経営者はオーナーではありません。株主の意向を無視することはできないのです。個人株主だけでなく、外国人や投資ファンドなどの機関投資家が株主の中心を占めている企業では、どうしても収益を上げるためのリストラ圧力が強くなるのです。
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