東京の高級マンションは割安?
日銀による異次元金融緩和が急激な円安をもたらし、「日本買い」が何かと話題になっている。とくに不動産。米ファンドが購入した「目黒雅叙園」、シンガポール政府投資公社の「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」など高額な取引が続けざまに報じられた。ところが、アベノミクスがはじまる少し前あたりから、マンション市場ではこのような傾向がすでに起きていた。為替云々の前に、そもそも都心の高級マンションが割安だというのだ。香港、シンガポールなどアジアの大都市は相場が上がっているにもかかわらず、東京の不動産はデフレの影響を脱し切れていないと。
下のグラフをご覧いただこう。一般財団法人日本不動産研究所の調査データである。半年ごとに世界各都市の不動産価格を指数化してその変動を見ている。サンプルは1都市1地点。東京は元麻布だ。
単純に指数だけを比べると、香港、シンガポールより東京は価格、賃料ともに低い。ロンドンとの比較においては、いずれも3倍以上の開きがある。ニューヨークも賃料で見れば東京の2.4倍以上。これでは割安との印象を持たれても仕方がないかもしれない。だが、冷静に考えてみよう。
高級マンション市場を占う
上記調査は、あくまでその都市の不動産は半期ごとに相場がどう動いているかを東京との相対比較で定点観測しているのであって、都市間の相場を絶対比較しているわけではない。現に調査は1地点である。高級マンションのカテゴリーに入る代表的な地点をピックアップしているのに過ぎないわけで、「その都市で最も高い地点」でもなく、「高級マンションの平均価格」でもない。仮に他都市のなかで最も希少性の高い地点が調査対象になっていれば、驚くほどの相場が出来上がってもおかしくない。ニューヨークやロンドンでは十分ありえそうだ。
この調査データから読み取れることは何か。それは、東京の中でも元麻布の2倍、3倍をつけてもおかしくない物件が登場しても、それは「世界都市の市場相場においては何ら不思議ではない」とみる。いや、そう捉えたいといったほうが正しいかもしれない。東京の都市力がニューヨーク、ロンドンに匹敵するならばありえない話ではないだろうし、今の日本はそれを目指している。
たとえインフレが起こっても全部は上がらない!?
東京の土地利用は独特といえるかもしれない。都心部の昼夜間人口の差が極端に違うこと(「マンハッタンにあって東京にないもの」参照)。東京圏は巨大で広範囲である。高度経済成長期に郊外型ニュータウンを推進、鉄道網の発達もドーナツ現象を促した。山の手に住むあこがれも「高台地の良好な住宅街」を転々と広げた。関東大震災後に中央線に移住する人が急増したと聞くが、特有の風土・自然も住宅地の広域化を導く要因だったと考えられる。
間違いなく言えることは、これからは「コンパクトで効率的な都市」が望まれ、利便が良い「都心マンションのニーズ」はさらに高まる可能性があるということ。さらにその中心部は不動産価値の上昇が十分考えられること。世界の他都市に並ぶほどの最高相場をつける物件は極少だがすでに形成され始めている(「超高級マンションの新相場形成!? 坪単価1400万円超」参照)。都心部の中でも利用価値の変わらないロケーションは同様のトレンドは示さないか、仮に連動したとしても緩やかだろう。
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