退職、新入社員、大変なのが年末
マイナンバーは源泉徴収、年末調整、雇用保険、健康保険、厚生年金、法定調書(支払調書、源泉徴収票など)で使われます。まず一つ目の波は3月の退職シーズン。退職日から1ケ月以内に源泉徴収票を発行し、健康保険などの異動関係の書類が必要となります。次は4月の入社シーズン。新入社員が入ってきますので厚生年金や保険関係の手続きを行わなければなりません。次の波が年末。
給与所得の源泉徴収票は2017年1月までに提出しますが、マイナンバーを記載しなければなりません。日常的には従業員が休職、復職した場合の手続きで必要になります。また出向、転籍の場合、出向先などへマイナンバーは提供できません。もし必要なら事前に相手先と委託契約、代理契約を結んでおく必要があります。
マイナンバーの取り扱いは細心の注意を!
個人情報保護法では過去6ヶ月以内に扱う個人情報が5,000を超えない事業者は、個人情報取扱事業者から除外されますがマイナンバーはそういうわけにはいきません。自分一人だけで事業をしているなら別ですが、アルバイトやパートを雇っている個人事業主にはマイナンバー保護義務が発生しますのでご注意を!マイナンバーは個人情報と同じで漏らさないよう細心の注意が必要。一生涯使う番号ですので、漏れると影響がめちゃくちゃ大きくなります。マイナンバーは行政機関で名寄せすることが目的ですが、漏洩してしまうと行政機関外で精度が高い名寄せができてしまいます。
レンタルビデオの履歴や病気の履歴が漏れても今までは名前で名寄せするしかなく、同姓同名がたくさんいれば、意味がありませんでした。ところがマイナンバーで名寄せできれば、この個人はどんな趣味で、どんな病歴があるかまで分かってしまい、細かな個人情報として売買することができます。ベネッセの個人情報漏えい事件でたくさんの個人情報が流出してしまいましたので、これをベースとしてマイナンバーで名寄せされると、売買価値が高まります。
4年以下の懲役または200万円以下の罰金
ですので罰則規定が設けられています。従業員がマイナンバーを含む個人情報を名簿屋などへ売ってしまえば4年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。企業にも従業員と同じ罰金刑が科されますが、それよりも社会的信用がなくなってしまいます。マイナンバーの監督組織「特定個人情報保護委員会」から指導などがあると公共事業などで指名停止措置となります。許認可事業をしている場合、会社がつぶれてしまいます。取得したら保管をどうするか考えなければなりません。マイナンバーをファイル管理するなら暗号化し、アクセスする人が限られた端末などへ入れ、ログで誰がアクセスしたか追跡できるようにしておくとよいでしょう。また退職したなら、法令において定められている保存期間を経過した後に確実に消すことが必要です。
小さな企業では社会保険事務所へ提出する書類作成を外部の社労士事務所に頼んだりしていますがマイナンバーを取り扱う業務を委託するころは可能です。ただし委託する側は委託先の監督義務が生じます。また再委託も可能ですが、委託元の許諾が必要で、委託元は再委託先まで監督しなければなりません。
希望者には個人番号カードを発行し身分証明となる
マイナンバー通知カードには顔写真がないので身分証明書としては使えません。希望すれば顔写真付きの個人情報カードが発行されて身分証明として使えます。表には名前、住所、生年月日、性別が、裏面にマイナンバーが記載され電子証明書が標準でつきます。有効期間は20歳以上なら10年、20歳未満は成長に伴って顔が変わりやすいので有効期間は5年になります。個人番号カードが住基カードと同じような扱いになるので、2016年1月から住基カードの新規発行は行われません。電子申告も住基カードの電子証明書(有効期間 3年間)ではなく、個人番号カードで電子申告する形に変わっていきます。
※2015年12月までに発行された住基カードは有効期間内(発行日から10年間)は使えます。
企業の準備としてまずはマイナンバーを扱う総務、経理、人事、IT部門の教育&社員研修を行います。店長などがマイナンバーの本人確認を行う場合は、店長にもしっかり教育しておかなければなりません。
あわせてどの帳票でマイナンバーが必要になるか洗出し、システム変更が必要であれば変更を行います。社内規定の見直しと運用を考えていきます。
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