若い子どもたちは親の愚痴・悪口を受け止められない
子どもの前で愚痴や悪口を、つい口走っていませんか? 不満をまったく口にしないで生きることなど、難しいもの。大きなストレスが重なったり、やりきれないことがたびたび起こるようなときには、不満がたまって窒息しそうになるものです。
そうしたとき、人は少しでも自分の気持ちを楽にするために身近な人に愚痴を聞いてもらおうとします。とはいえ、年齢を重ねると気軽に愚痴を聞いてくれる友人も少なくなります。カウンセラーなどの専門家に話を聞いてもらうのは敷居が高く、料金を心配する人も多いものです。
こうして、愚痴を家族にこぼすことが増えていくものですが、夫や親に話を聞いてもらえないと、結局はいつも子どもに愚痴や悪口を言ってしまう、といったことが増えてしまいます。
しかし、子どもは親の愚痴を受け止められるほど、心が成熟していません。「愚痴を言いたい気持ち、よく分かる。お母さんはやさしいから、人より深く傷ついちゃうんだよね。でも、まずは自分自身を大切にすることだよ、お母さん」などという、うるっとくるような慰めの言葉など、若い子どもには思いつきもしないわけです。
あるいは、表面的に聞いているふりをし、適当に聞き流すような芸当も、ある程度大人にならなければできません。こうして、親の口から流れ続ける愚痴や悪口をただ聞き続けながら、子どもの心は重くなっていき、逃げ場のない気持ちになってしまいます。
愚痴を聞き続けて育つと、物事の捉え方がゆがみやすくなる
親が子どもに愚痴や悪口を言い続けていると、他人や世の中の捉え方にも影響を与えてしまいます。たとえば、娘が母親から「お父さんは、休日に家にいたためしがない。男の人は結婚すると自分勝手になるから嫌になっちゃう」といった悪口をいつも聞かされていたとします。すると子どもは無意識のうちに「男性は結婚したら自分勝手になるもの」と思い込んでしまうでしょうし、将来の結婚に対する期待やあこがれも持てなくなってしまうかもしれません。
同じように、親の愚痴を聞き続けていると、子どもが本来持っている明るく自由な発想が育ちにくくなってしまいます。子どもには誰しも、「自分の力で色々なことにチャレンジしていきたい!」という意欲があります。
一方で、「できなかったら恥ずかしい」「自分には無理なんじゃないか」という臆病な気持ちもあります。しかし、親の口から愚痴ばかり聞いていると、「人生や世の中って結局そんなものなのかな? 自分だってどうせうまくいかないだろうな」といったネガティブな考え方に流されてしまいます。
すると、「今はつらくてもきっと次のチャンスが巡ってくる」といった希望や「楽しいことはきっとある。それを探すために頑張っていこう」という勇気が湧かなくなってしまいます。
親自身が感情との付き合い方を学んでみよう
このように、親の愚痴や悪口が子どもに与える影響は、親が想像するよりはるかに大きなものです。窒息してしまいそうな不満を抱えて、どうしようもなくなってしまうこともあるでしょう。
その時には、「お母さんもやりきれないんだよ…」と少し愚痴を話してしまうことだってあるかもしれません。
でも、そこに留まり続けず、気分や発想を切り換える姿を子どもに見せていけば、子どもはその親の行動を学ぶことができます。
「そうか、愚痴を言わざるを得ないほどつらいときって、誰にでもある。家族にしか話せない気持ちだってあるんだ」ということが分かり、「話して少し楽になったら、気分や発想を切り換えていける。すると、最悪な状況も切り抜けられるんだ」ということも、親の姿から学ぶことができるのです。
気分や発想の切り換え方は、心理療法の中でお勧めの方法がたくさんあります。なかでも、次の3つの方法は、誰でもすぐに取り組める方法です。私もカウンセリングの中でよく使っていますし、効果的だと感じています。
1. マイナスに捉えていたことを「プラスの眼鏡」で捉え直す方法…「リフレーミング」
2. ストレスをためやすい自分の考え方のクセを見直し、言動を変化させる方法…「認知行動療法」
3. 自分の感情をあるがままに体験し、目的に向かって行動する方法…「森田療法」
その他にも、「ストレスフリーの思考術」カテゴリーでも発想転換のコツをたくさん紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。