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中古住宅購入時は年代を確認!新耐震でも倒壊の危険性

新耐震基準なら中古住宅は安心?約2万棟の木造在来工法の住宅の耐震診断をした結果、大地震でも倒壊・崩壊しないとされてきた新耐震基準の住宅でも、高い確率で倒壊の危険性があると発表がありました。では中古住宅を購入する時、何をチェックすればよいのでしょうか(改訂:2018年7月、初出:2015年1月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

新耐震なら中古住宅は「安心」か?

中古住宅を購入する時、耐震性がどの程度あるものなのか、気になりますよね。これまでは1981年6月以降に確認申請を受けたいわゆる「新耐震」の住宅なら安心だと考えられてきました。しかし、実際に木造住宅の耐震診断をした結果、どうもそうとは言い切れないことがわかりました。
 

約2万6千棟の耐震診断を分析

2018年1月に公表された木耐協(もくたいきょう※)の調査データによると、平成18年4月から平成29年11月までの11年7か月に実施した木造在来工法の2階建て以下の住宅を対象とした耐震診断のうち、詳細を把握している約2万6千件の耐震診断結果を分析したところ、これまで大地震時に耐震性に問題があるとされてきた旧耐震(※1)の建物だけではなく、大地震でも倒壊はしないとされてきた新耐震(※2)の建物でも、耐震性に問題がある家が多く見られたという結果が報告されました。

(※)木耐協=日本木造住宅耐震補強事業者協同組合。全国1,100社以上の工務店・リフォーム会社・設計事務所で構成する団体で、地震災害の備えに対する啓発活動や木造住宅の耐震性向上のための活動を行っている(ホームページより抜粋)。

(※1、※2)旧耐震と新耐震の建物の違いについては下図をご覧ください。
 
「旧耐震基準」と「新耐震基準」との違い(クリックで拡大)

「旧耐震基準」と「新耐震基準」との違い(クリックで拡大)

 

1981年が境といわれてきた木造住宅の耐震性

これまで木造住宅の耐震性は「1981年以降に着工し、新耐震基準で建てられたものなら大地震でも倒壊・崩壊しない」とされてきました。その根拠となったものは、1995年の阪神淡路大震災での被害状況です。
 
新耐震基準であれば地震に強いと言われてきたが…

新耐震基準であれば地震に強いと言われてきたが…


大震災後の調査で、倒壊・崩壊した建物の多くが1981年以前に建てられた旧耐震の建物で、1981年以降に建てられた新耐震基準の建物の被害は少なかったことがわかったからです。

そのため国や自治体では、1981年以前に建てられた旧耐震基準の建物の耐震化に力を入れており、自治体で行う無料の耐震診断も一部の自治体を除きほとんどが「1981年以前に建てられた旧耐震の建物」を対象としています。言い換えれば、1981年以降に建てられた新耐震基準の建物であれば安全であると考えられてきたため、耐震診断の補助対象になっていないのです。

そのようなこともあり、1981年以降に建てられた新耐震の木造住宅に住んでいる人の多くは「自分の家は大丈夫」と思っていたのではないでしょうか。また、中古住宅を購入する時も、耐震性の目安として「1981年」を念頭に入れて判断していた人も多かったと思います。

それではこれからもう少し詳しく、建設年代による耐震性の違いを見ていきましょう。
 

調査した全2万6千棟のうち約91%に耐震性の問題あり

木耐協の発表データの内容を詳しく見ていきましょう。発表によると、調査は平成18年4月1日~平成29年11月30日まで11年7か月かけて行われたもので、昭和25年から平成12年5月までに着工された木造在来工法の戸建て住宅 25,918棟が対象です。そのうち、大地震でも「倒壊しない」または「一応倒壊しない」と判定された家は2,312件、全体の8.92%しかなく、残りの23,606件、約91%は大地震で倒壊する恐れがある、ということでした。
 
昭和25年~平成12年5月までに着工した木造在来工法の2階建以下の住宅2万6千棟分の耐震診断結果

昭和25年~平成12年5月までに着工した木造在来工法の2階建以下の住宅2万6千棟分の耐震診断結果


全体の9割以上に耐震性の問題あり、という結果が出たことにまず驚きますが、これは旧耐震と新耐震の建物が混ざった状態での結果です。次に旧耐震と新耐震を分けて分析した結果を見てみましょう。

 

旧耐震の建物は約97%に問題あり

昭和55年年5月以前に確認申請を受けた旧耐震の木造在来工法の住宅 12,665棟に着目すると、そのうち約97%に耐震性の問題ありという結果が出ています。旧耐震ということで、現行の耐震基準が満たされていないほかに老朽化も加わり、大地震が起きた際の危険度がとても高いことがわかります。
 
昭和56年5月以前に確認申請を受けた旧耐震の木造在来工法住宅12,665棟の耐震診断結果

昭和56年5月以前に確認申請を受けた旧耐震の木造在来工法住宅12,665棟の耐震診断結果

 

新耐震でも約85%に問題あり

しかし驚いたのが新耐震基準で建てられた建物の結果です。大地震でも倒壊・崩壊しないとされてきた新耐震の木造住宅でも、耐震診断を受けた建物 13,253件のうち、大地震がきても倒壊・崩壊しないと判定されたものはわずか1,952件、14.7%でした。残りの11,301件、85.27%は「耐震性に問題あり」ということでした。
昭和56年6月以降に確認申請を受けた新耐震の木造在来工法住宅13,253棟の耐震診断結果

昭和56年6月以降に確認申請を受けた新耐震の木造在来工法住宅13,253棟の耐震診断結果


ひとつの注意点として、この調査は2000(平成12)年以降に建てられた比較的新しい建物は含まれていません。実はこの「2000年」が木造住宅における耐震性のひとつの分岐点になっており、この調査結果に影響を与えていると考えられます。

 

2000年にも大きく変わった耐震性

建物の耐震性は大地震が起こるたびに見直され、改訂されています。「旧耐震」「新耐震」と分けられる境目は1981年6月1日の大改正です。ここを境に耐震性は大きく変わったと認識されてきました。

しかし、木造在来工法の住宅に関しては、その後2000年にあった建築基準法の改正でも大きく耐震性がアップしています。具体的にはこの時の改正で、地盤調査が事実上必須になり、柱頭、柱脚、筋かいの接合部に引き抜き防止のために設置する金物の種類が具体的に決められ、耐力壁(たいりょくへき)のバランス配置が必須となりました。詳しくはこちら「戸建て住宅の耐震性は1981年と2000年が転換期」をご覧ください。

 

2000年に改正された内容

この2000年に改訂された内容は木造住宅の耐震性を大きく前進させました。
 
2000年の改正で地盤調査は必須になり、地盤の強さにあった基礎形状が定義された

2000年の改正で地盤調査は必須になり、地盤の強さにあった基礎形状が定義された


大地震時に建物が倒壊するメカニズムを解析すると、
・地盤の強さにあった基礎になっていないため沈下して傾く
・大きな揺れを受けて柱の足元が土台から抜けてしまう
・耐力壁のバランスが悪いため揺れを受けてねじれが生じて倒壊してしまう
などがわかっています。2000年の改訂は、その部分を補強する内容となっています。

以上のことを踏まえ、これから木造の中古住宅を購入する時に気をつけておきたいことを住宅の建設年別にまとめます。

 

1981年5月以前の住宅の注意点

1981年以前5月以前に確認申請を受けた旧耐震の木造住宅は、今回の木耐協の調査で大地震時に約97%に倒壊の恐れありという結果が出ており、阪神淡路大震災での被害状況から見ても、耐震性にはかなり不安要素があります。建物は老朽化も進んでいると考えられます。
 
1981年以前の住宅は耐震診断を受けましょう

1981年以前の住宅は耐震診断を受けましょう


この年代に建てられた中古住宅を購入し住むのであれば、耐震診断は必須です。そして必要なら耐震補強を行いましょう。1981年以前の木造住宅の耐震診断、耐震補強は自治体の補助対象になっている可能性が高いです。それらの費用も購入時の予算に計上しておきましょう。

 

1981年6月~2000年5月に建てられた住宅の注意点

1981年6月以降に確認申請を受けて2000年5月以前に着工した住宅は、新耐震基準であるものの、今回の木耐協の調査では「約85%に耐震性に問題あり」とされました(※)。
(※)調査対象は耐震性に不安を感じて耐震診断を受けた建物に限られるため、「耐震性に問題あり」という数字が高めに出ている可能性もある

不安要素として、2000年の法改正の内容が反映されておらず、耐力壁がバランスよく配置されていなかったり、柱頭・柱脚の接合部に使う金物の使用に不備がある可能性があり、耐震性が十分であると一概には言えません。もし不安に思うところがあれば、耐震診断を受け、耐震補強を行うか判断するべきです。この年代の中古住宅の耐震診断は一部の自治体を除き、全額自己負担になる可能性があります。購入する場合はそれらのことも頭に入れておきましょう。

 

2000年6月以降に建てられた住宅の注意点

2000年の建築基準法の改正の後に建てた住宅は、比較的新しいこともあり、今の段階では大地震でも倒壊しない耐震性を備えていると考えて良いでしょう。ただし、手抜き工事や欠陥工事の可能性もゼロではないため、住んでみて何かしらの不安を感じた時は耐震診断を受けるようにしてください。また、経年劣化が進むと耐震性に影響を与えるため、定期的なメンテナンスを行いましょう。

今回の対象は、木造在来工法で建てられた2階建て以下の住宅です。自社オリジナルの工法を持つハウスメーカー(住宅メーカー)が建てた住宅、3階建て以上の住宅、木造でも2×4工法(ツーバイフォー)工法で建てられた住宅は除きます。
 

耐震診断、耐震補強の費用も見込んでおこう

今後首都直下型地震や東海・東南海・南海トラフをはじめ大きな地震が予想されるなか、命を守るためにまずすべきことは、自宅の耐震性を高めること、耐震性のある家に住むことです。
 
家族の命を守るために、まずは自宅の耐震性を確認してください

家族の命を守るために、まずは自宅の耐震性を確認してください



これから中古住宅を購入予定の方は、建築年代に着目し、どの程度の耐震性があるのか、耐震診断や耐震改修の費用はどの程度かかりそうかなど目安をつけ、購入予算に組み込んでおくことをお勧めします。

【関連サイト】
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 
『81-00木造住宅』の耐震性に関する木耐協調査データ(PDF)

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