千年の歴史を誇る首都遺跡、ホアルー

ディン・ティエン・ホアン祠

ディン朝の初代皇帝ディン・ティエン・ホアンを祀るディン・ティエン・ホアン祠。この辺りは周囲の景色がまたすばらしい

古代より、ベトナム北部は漢や隋、唐といった強大な中国王朝の支配下にあった。この支配から脱したのが10~11世紀の呉朝、ディン(丁)朝、前レ(黎)朝、李朝だ。このうちディン朝、前レ朝、李朝初期に首都として繁栄したのがホアルー(華閭)だ。

ホアルー周辺は奇岩・奇峰が連なる天然の要塞。10世紀中頃、ベトナム北部は群雄割拠の時代にあったが、ディン・ティエン・ホアン(丁部領)はここに城壁を巡らせて首都とし、968年にディン朝を打ち立てた。
ディン・ティエン・ホアン像

ディン・ティエン・ホアン像

ディン・ティエン・ホアンの死後、中国・宋の攻撃を前に生前の部下だったレ・ダイ・ハン(黎大行)が王位を継いで前レ朝を建国。宋と南のチャンパー王国を打ち破り、ホアルーを増改築して一時代を築いた。

レ・ダイ・ハン没後、国は分裂の危機にあったが、1009年に太祖、リー・コン・ウァン(李公蘊)が統一して李朝を興す。当初の首都はホアルーだったが、翌1010年にタンロン(昇龍)へ遷都した。こちらも「ハノイ -タンロン王城遺跡中心地区」として世界遺産に登録されている。
レ・ダイ・ハンが建立したニャッチュ寺

レ・ダイ・ハンが建立したニャッチュ寺。本堂は10~11世紀のままで、当時の様子をよく伝えている。ハノイにある同名の寺はこれを真似たものだ

これらの王朝は中国という超大国からの独立を模索しつつ、その冊封体制(君臣関係)から完全に脱することができないという難しい状況にあった。王宮・寺院・王墓を中心としたホアルーの首都遺跡も中国の影響が色濃く、赤や金・銀・黄で彩られた王宮は中国王朝のそれを思わせる。一方で、屋根など木造部分にはベトナム独自の様式が見られ、両者の折衷・調和が見られる。 

ホアルーの見所は、王墓であるディン・ティエン・ホアン祠やレ・ダイ・ハン祠を中心に、王宮や城壁跡、ニャッチュ寺(一柱)をはじめとする数々の寺院。こうした遺跡の周辺の景色がまた見事なので、こちらもお見逃しなく。

「チャンアン複合景観」のその他の見所

バイディン寺から望むチャンアンの山々

バイディン寺から望むチャンアンの山々。バイディン寺には黄金の仏像や巨大な鐘など、数多くの見所がある

これまで紹介してきた場所以外にも、「チャンアン複合景観」には数多くの見所がある。世界遺産に登録されたエリアは南北10km、東西7kmほどなので、バイクやレンタカーを借りたり、バイタク(バイク・タクシー)を貸し切れば、たくさんの見所を訪ねられる。

■ハンムア寺
ハンムア村にある寺で、山の頂上へと続く道があり、タワー・カルストの上から周囲を眺めることができる。北は水田に浮かぶハンムア村の奇岩・奇峰群、南はタムコックの絶景で、苦労して山を登るだけの価値はある。

■トゥンナン
タムコック、チャンアンと同様、世界遺産エリアにあるクルーズの名所。水田と調和したタワー・カルストが特に美しいが、他と比べて観光客は少なく、周辺の村に暮らす人々の船が多く見られる。もうひとつのクルーズ地であるヴァンロンは世界遺産エリア外。
バイディン寺の釈迦仏殿と多層塔

バイディン寺の釈迦仏殿と多層塔

■バイディン寺
世界遺産エリアの外、北西方面にある寺で、規模では東南アジア随一といわれる。寺の創建は11世紀に遡るが、その1kmほど離れた場所に新寺が建てられ、2010年以降に三関門、鐘楼、釈迦仏殿、観世音殿などが次々と竣工した。釈迦如来、弥勒菩薩、観世音菩薩などの巨大な仏像が安置されており、羅漢の回廊には500体もの像が並んでいる。

■モイ洞窟
2010年、モイ洞窟から石器や火の使用の跡、果物や野菜・貝殻・動物の骨をはじめ、30000~12000年前に遡る先史時代の遺物が発見された。東南アジア最古級の人類跡であるがいまだ発掘は終了していない。モイ洞窟以外にも先史時代の遺物はさまざまな洞窟で発見されており、今後の発見に期待が寄せられている。