リビタが戸建て分野に参入
成人式を含む1月の三連休は、住宅需要が年間で最も盛り上がるタイミング。その初日、リノベーションで知られる「リビタ」の一戸建て現場説明会があると聞き、取材で訪ねた。午前10時半に到着。世田谷の閑静な住宅街は人通りもまばらだ。住所は北烏山1丁目。最寄りは京王線「蘆花公園」駅。徒歩13分である。昭和の高度経済成長期に造成された住宅街であろう。南間口のしっかりとれた区画に庭を取り、上階にベランダの付いた二階建て住宅が並んでいる。都市計画図上は第一種低層住居専用地域、建ぺい率/容積率は40%/80%(地区計画有)。
11時から始まる説明会は満席。一部メディア関係者もいたが、ほとんどが一般の購入検討者。関心の高さを伺わせると同時に、リビタの集客力に驚く。同社の特徴は、単にリノベーション再販を手掛けるだけでなく、希望に応じてプランニング(リフォーム)を替えたり、ときには物件探しからサービスを提供するところ。
「不安の可視化」に独自性
プログラムは1時間10分。物件自体の解説は手短に、ほとんどが「一戸建てリノベーションの注意点」に費やされた。日本住宅品質検査センターの代表取締役松田氏が20分を受け持ち、住宅の品質について解説。内装・設備を取り払った躯体だけの状態で「一戸建て中古物件購入を失敗しないために」を聞けるのだから、これほど恵まれた場はないといえる。例えば、屋根裏の雨漏り跡に生えたカビ。「結構な年月を費やさないとここまで浸食しない」。1階の水まわりにもトラブルが。「在来工法の浴室は漏水が付きもの。年代的にも防水技術が発達していなかった」とすべてを開示する。もちろん改修して再販するのだが、手を入れる前の状態を共有することに独自性を感じる。
良いも悪いもありのままを共有する場面は、特長を連呼するこれまでの住宅販売とは一線を画すものだ。参加者はお子さんを連れている世帯も少なくなく、家族全員が新居選びに関心を持って取り組んでいるのがわかる。隅々まで完璧にコーディネイトされたモデルルームとの違いをどう受け止めているだろう。
永続性の高い街並みに寄与
住宅購入は「街並みを買え」とも言う。今回の「北烏山の家」も例に漏れないだろう。世田谷らしい低層住宅街である。当該物件の敷地面積は182.18平米。建物は116.08平米。容積を余らし、和の植栽を施した空地はゆとりを思わせ、その積算が街並みの穏やかな雰囲気を醸し出している。都市部では、この手の物件は更地にしてから「分割して売却」されるケースが散見できる。都心に近く、そもそも住宅需要は旺盛な地。土地を半分にすることで手の届きやすい値段にできるわけだ。間口に十分なゆとりを持たせた区割りであるため、半分にしても6メートル以上確保できる。だがそうなれば、家並みはやや窮屈に、緑地は分断を余儀なくされる。景観の変化は避けて通れない。
今回の現場説明会では「いっそのこと解体して建てたほうが…」と思ってしまうほど手のかかる事業に見える。が、熟成した街並みに永続性を持たして継承するには魅力的な手法だ。可変性に富んだ軸組工法の利点を生かし、性能を現在の基準に引き上げて次のオーナーに引き渡す意味は大きいといえるだろう。
「北烏山の家」は今後耐震性や断熱性を高めるための工事を施し、4月に販売する予定。リビタの一戸建てリノベーション事業としては7棟目の現場となる。今後同社は青葉台(神奈川県)、桜丘(世田谷区)、三鷹(三鷹市)、聖蹟桜ヶ丘など今後8つの現場で販売を予定している。
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