マネジメント/マネジメント事例

ドーナツは語る!セブンとローソン、真逆の戦略とは(2ページ目)

時期を同じくしてコンビニエンスストア業界首位セブンイレブンと2位ローソンが、新たな戦略を打ち出しました。セブンイレブンは店頭でオリジナルのドーナツを扱い、ローソンは大手ネット通販を店頭で申し込めるサービスを開始します。業界の覇権を巡る火花の散らし合いと言えるこの戦いですか、戦略思考の面からはある意味真逆を行くものでもあるのです。業界主導権争いに見るその思考の違いを分析します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

ローソンはアマゾンだけでなく、10月には高級スーパーの成城石井も傘下に収めています。現時点で、成城石井とどのような業務の連携が展開されるのかは公表されていませんが、「あくまで成城石井の名前は残す」としており、やはり水平展開の一環として捉える事ができます。

解説

ローソンの専用端末でアマゾンの通販が可能に

ローソンの玉塚社長は、このような様々な業種との協業、提携を中心とした水平展開を「オープンプラットフォーム(開かれた基盤)」と呼んで拡大方針で臨むことを明言しています。これは、コンビニの利便性と言う最大の特性を他業種に開放することで、資産として活用する戦略を選択したと言っていいでしょう。

あくまで本業強化にこだわるセブンイレブンと、異業種との連携に活路を見出したいローソン。一見、同じように店舗集客に腐心しているように見える両社ですが、戦略的にはまさに好対照と言える道を歩んでいるのです。

違いが鮮明になったリーダー戦略とチャレンジャー戦略

なぜ両社はこんなにも戦略が異なるのでしょうか。競争地位別戦略の考え方がそこには存在するのです。業界1位のセブンイレブンと2位のローソンは、業界におけるリーダーとチャレンジャーの関係にあります。通常、チャレンジャー企業はリーダーと同じ戦略を取っていたのではシェアはなかなか縮まらないと言われています。

そこでチャレンジャーは一般的に、低価格戦略などによりリーダーとの差別化を明確化して顧客の取り込みをはかります。しかしコンビニの場合には、ビジネスモデルの基本が定価販売であり、価格のダンピングは24時間営業のコストを吸収できなくなるリスクがあるため、低価格戦略は取りにくいのです。

すなわちローソンは、価格以外の部分でリーダーであるセブンイレブンとの差別化をはかる戦略に打って出た。成城石井の買収やアマゾンとの提携は、玉塚社長曰くの「オープンプラットフォーム」戦略の先鞭であり、ここに来ての戦略的相違の鮮明化は、ある意味セブンイレブンに対するローソンの業界覇権をめぐる宣戦布告であるとも言えるのです。

業界1位を行くセブンイレブンはまさに王道を歩むべく、ドーナツ戦略による垂直展開で本業の強化をはかり、それを追う立場の2位ローソンはセブンイレブンとの差別化を狙って異業種との連携による水平展開拡充に一層注力する。コンビニ業界の今後の覇権争いは、競争地位別戦略のケーススタディとしても大いに注目したいところです。
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