採用人数の多い「推薦入試特別奨学生」
沖縄大学の独自奨学金は、2014年度の実績で約400名の採用枠を用意していますが、そのなかで「推薦入試特別奨学生」の採用者数が119名と最大規模になっています。これは沖縄県内の高校に1名ずつの枠が提供されているもので、県外高校は対象外となっているのが残念ですが、地元学生の支援が第一なのは当然のことなので、ある意味仕方ないでしょう。
個人的に特に注目したのが、「児童福祉特別奨学生」と「後援会支援特別奨学金」です。
ハンディキャップのある学生を手厚く支援
<児童福祉特別奨学生>・沖縄県内の社会的養護の環境下におかれる者で、施設長、里親会が推薦する者
・授業料全額(72万円)を免除
現在、高校生の77%が大学や専門学校に進学している一方で、児童養護施設で暮らす生徒の進学率は20%とかなり低く、さらに進学しても3割が中途退学している実情が報告されています。(NPO法人ブリッジフォースマイル 2014年プレスリリース)
児童養護施設で暮らす生徒は18歳になると施設を出なくてはならず、それだけでも大変なので、とても学費まで手が回らないはずです。
沖縄大学の「児童福祉特別奨学生」はそのような環境に置かれた生徒に学ぶ機会を与えるために2014年度に設けられ、初年度は応募者5名の全員が採用されたそうです。
<後援会支援特別奨学金>
・離島、僻地やマイノリティー等の出身学生、母子家庭、父子家庭等の学生
・20万円を給付
母子家庭の多くは厳しい環境におかれています。また、大学や専門学校のない離島出身学生にとっては学費だけでなく、生活費が重くのしかかってきます。
沖縄大学は、社会的にハンディキャップを持つ学生にも目を向け、支援しているのですね。
この2つの制度は一般的な学生募集戦略とは180度異なり、むしろ大学側の金銭的負担が増えるはずです。ともすれば見過ごしがちな問題に対しても向き合う、沖縄大学の真摯な姿勢の表れといえます。
ではなぜ、沖縄大学は奨学金にここまで力を入れるのか。今後の展望について伺ってみました。
理事長みずから企業を回り寄付を集める
「社会的に厳しい環境に置かれていても、意欲のある生徒はいます。学生の経済支援には以前から力を注いでいたのですが、さらに大学として取り組むべきことがあるのではないかと検討し、児童福祉特別奨学生制度を設けました」(入試広報室 比嘉良彰氏)独自奨学金制度の課題はその財源です。沖縄大学はどのような戦略をもっているのでしょうか。
「冠奨学金は全て企業からの寄附で賄われています。2011年に本学の理事長に就任した長濱正弘は、民間企業で社長を務めた人物です。本学のOBでもある長濱理事長が、これまでに培った人脈も使って積極的に企業に寄付を呼びかけ、奨学金を拡充しようと走り回って下さっています」(比嘉氏)
私自身、何度も不快な思いをしましたが、高校や大学に限らず、先生と呼ばれる立場の人は、人に頭を下げるという経験があまりありません。まして、人様からお金を差し出して頂くということであればなお更です。
理事長みずからが積極的に企業を回って寄付を集め、そのお金を奨学金として100%学生に還元する。民間企業の経験を活かした長濱氏のトップセールス営業は、他大学にとっても学ぶべき点があると思います。
そもそも沖縄県には他府県とは異なる文化や歴史があり、他では経験できない様々なことを見聞きできる環境に満ちています。
学費が安く奨学金の充実した沖縄大学で学生時代の多感な4年間を過ごしてみるのもアリだと思います。