奨学金は誰もが借りられる学生ローン

日本学生支援機構の奨学金には、無利子の第一種奨学金と僅かながら利息の付く有利子の第二種奨学金があります。無利子奨学金の予算規模は年々拡充されつつあるものの、多くの方が有利子奨学金を利用しているのが現状です。奨学金が実質は学生ローンであることは、これまで何度も述べてきました。
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無利子・有利子別奨学金事業規模の推移

奨学金は、成績と家庭の収入を基に審査されることになっています。
第一種奨学金では、高校での成績が5段階評価で3.5以上などと明確に基準が設けられていますが、第二種奨学金は収入基準さえ満たせば、成績を問わずに採用されているのが実情です。つまり、第二種奨学金は、希望すれば誰もが借りられる学生ローンともいえます。

日本学生支援機構の奨学金は一般のローンとは異なり、「在学期間中は利息が発生しない」「返済が厳しくなった人のための返済猶予」など、利用者にとっていくつかの優遇制度が用意されていますが、滞納すると延滞金や個人信用情報機関登録などのペナルティーが科されます。


奨学金の返還率と滞納率

日本学生支援機構のホームページでは「奨学金事業への理解を深めていただくために」と題して各種データを公開しています。

「奨学金事業への理解を深めていただくために」

当該資料から、まずは一人当たりの借入額を見てみます。

■大学生一人当たりの貸与総額(平成28年3月貸与終了者)
第一種奨学金 237万円
第二種奨学金 343万円


上記の金額であれば、卒業後の返済月額は、第一種奨学金が14,000円程度、第二種奨学金が15,000円程度なので、正規の職に就ければ、決して返済できない金額ではありません。

しかし、第一種と第二種奨学金の併用貸与者などは、返済月額が30,000円を超えることが珍しくなく、その負担感は大きなものとなるでしょう。

次に返還率と滞納率について見てみます。

■平成28年度の新規返還者の返還率
97.3%  
■平成28年度末時点での3カ月以上の延滞率
3.5%

日本人の真面目さを表わしているのか、これらの数字を見ると、ほとんどの人がキチンと、あるいは無理をしてでも奨学金の返済に努めている姿が想像できます。

ここで気になるのが「3カ月以上の延滞率」です。
3カ月以上の滞納があると、個人信用情報機関に登録されてしまいます。

個人信用情報機関への登録とは、いわゆるブラックリスト登録のことを指し、社会生活を送るうえで不自由が生じる可能性があります。

そのため、返済が厳しくなった人のためには「返還期限猶予」「減額返還」と救済制度が設けられており、猶予が認められれば一定期間返済が猶予されるうえ、そもそも滞納者にカウントされません。

3.5%という低い数字ですが、その後の人生を考えるとやはり心配です。
滞納に至った事情は様々でしょうが、奨学金で大学進学したこと自体を後悔することになりかねません。


大学別 奨学金滞納率ワーストランキング

2017年4月、日本学生支援機構ではホームページ上で全ての大学、短大、専門学校の奨学金滞納率を検索できる仕組みを公開しました。

2018年現在、全国には780校ほどの国公私立大学が設置されているのですが、日本学生支援機構が公開した仕組みは個別検索方式のため相対的な比較ができません。受験生や保護者の立場してみれば、中途半端で不完全な情報公開と感じるでしょう。

そのためか、東洋経済オンライン編集部では独自に集計し、大学別の奨学金滞納率ワーストランキングを公表しました。

東洋経済オンライン編集部が公表したワーストランキングの上位20大学を見てみます。

表記された滞納率は、過去5年間の利用者の中で、平成27年度末時点で3カ月以上の滞納、つまりブラックリスト登録者比率だとお考えください。

■ワーストランキング/大学名(設置エリア)/滞納率
1位 至誠館大学(山口県)9.93%
2位 鈴鹿大学(三重県)7.32%
3位 東大阪大学(大阪府)7.28%
4位 沖縄大学(沖縄県)6.66%
5位 芦屋大学(兵庫県)6.45%
6位 日本経済大学(福岡県)5.52%
7位 サイバー大学(福岡県)5.41%
8位 太成学院大学(大阪府)4.85%
9位 愛知文教大学(愛知県)4.84%
10位 四日市大学(三重県)4.83%
11位 プール学院大学(大阪府)4.69%
12位 星槎大学(神奈川県)4.62%
13位 札幌国際大学(北海道)4.57%
14位 武蔵野学院大学(埼玉県)4.55%
15位 九州情報大学(福岡県)4.53%
16位 福知山公立大学(京都府)4.51%
17位 山陽学園大学(岡山県)4.47%
18位 九州国際大学(福岡県)4.43%
19位 福岡国際大学(福岡県)4.42%
20位 同朋大学(愛知県)4.32%

当然ですが、大学ごとに奨学金利用者数が異なるので、パーセンテージだけでなく、詳細の数字を個別に見る必要がありますが、気になるのはエリアが偏在している点です。

関西と九州地区の大学が半数以上を占めていますが、県別に見ると、福岡県(5校)大阪府(3校)三重県(2校)兵庫県(1校)京都府(1校)となります。

福岡県と関西地区の滞納率が高いのは、県民性なのか地域ならではの事情があるのか、機会があれば調べてみたいテーマです。

東洋経済オンライン編集部による滞納率ランキングは以下のリンクからご覧いただけます。

独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング


日本学生支援機構が自己破産件数を公表

「奨学金破産、過去5年間で1万5千人 親子連鎖広がる」(朝日新聞デジタル 2018年2月12日配信)

記事では、奨学金に関する破産が奨学生本人だけでなく、親子の連鎖破産が広がっていることを報じています。

これらの報道を受けてか、日本学生支援機構でも奨学金返済に関わる破産件数を公表しました。

奨学金返還者の自己破産に関する報道について


■平成24年度~平成28年度において自己破産に至った件数
返還者本人:8,108件(うち保証機関分が475件)
連帯保証人:5,499件
保証人:1,731件


上記の8,108件のうち、平成28年度の自己破産件数は2,009件であり、返還者本人+連帯保証人+保証人の三者全てが自己破産に至った件数は13件と報告されています。

奨学金の総返還者410万人に占める自己破産率は0.05%とのこと。
日本全体の自己破産率0.06%と比べると奨学金が関わる自己破産比率がとりわけ高い訳ではないことがわかりますが、保証人まで破産となれば縁戚関係は完全に破綻してしまうでしょう。

このデータで気になったのが、返還者本人の自己破産8,108件のうち、保証機関分が475件と圧倒的に少ない点です。

奨学金を利用するには、親や親戚が連帯保証人、保証人となる「人的保証」と保証機関による「機関保証」のいずれかの方式を選択しなければなりませんが、その割合は人的保証(53.3%)、機関保証(46.7%)とほぼ半々となっています(平成29年4月採用者)。

しかしながら、上記の破産者割合で見ると、人的保証(94.1%)、機関保証(5.9%)であり、ほとんどが親や親戚に迷惑をかける人的保証の選択者であることがわかります。

破産に至る原因は奨学金だけでなく、その他の債務が重なるなど様々な事情が絡み合っていると思います。

昔よりもはるかに学費が高騰した現在、多くの家庭にとって奨学金が必要不可欠な存在となっていますが、見方を変えると、大学経営を支えているのも奨学金です。

抜本的な解決策ではありませんが、返済猶予などの救済制度が認められると滞納者にカウントされないことは先に述べました。

奨学金滞納率ワーストランキングの上位に入った大学関係者の方々には、自分事として捉えて真摯に反省して欲しいと思います。

奨学金の滞納問題に関する報道では、日本学生支援機構だけを批判する傾向が見受けられますが、第二の奨学金受益者ともいえる大学にも社会が目を向ける時期がきていると思います。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。