超簡単な「百人一首」の覚え方! 「ゲーム」が記憶を加速する
覚えるなら百人一首!
いま子どもたちに大人気のテレビ番組「妖怪ウォッチ」に出てくる妖怪キャラクターの名前です。その数は何百にものぼるとか……。朝の子ども向け番組で、そのキャラクターの絵を見て1分間でどれだけ多くの名前を言えるかというコーナーがありますが、出演者の子供たちが難しい名前をスラスラと答える様子に大人はびっくりしてしまいます。
一緒に見ている小学校2年の長男に「お前もわかるの?」と聞くと、「あの子たちはゲームやっているから覚えているんだよ」との一言。わが家ではゲーム機をまだ買っていないので、その恨みを込めての一言です(苦笑)
それはともかく、子どもは(大人もそうですが)熱中するとそればかりを考え、大量にくり返すのでたくさんのことを覚えます。そしてそれを加速するのが「ゲーム」です。
「勝ちたい!」とか「レベルアップしたい!」という強い思いと努力をかきたて、その成果が目に見える形で表されるため、否が応でものめりこみます。ただそのエネルギーと記憶力を、妖怪キャラやモンスターなどの名前を覚えることだけに使うのはもったいないと思いませんか?そこで家族と過ごす時間が多くなる時期におススメしたい「ゲーム」が百人一首です。
百人一首とは?
「百人一首」と聞いて、「古文でやった……」と高校の授業を思い出して、嫌な気分になった人もいるかもしれませんね。また、人気少女漫画『ちはやふる』の競技カルタを思い出して、「あれ、一度やってみたかったんだ」という人もいるかもしれません。なかには、「ひゃくにんいちくび?? 何のこと?」と思われた方がいるかもしれません。簡単に百人一首についてご説明しておきましょう。これは「ひゃくにんいっしゅ」と読み、百人の人が詠んだ短歌(和歌)を一つずつ集めたものです。歴史上、さまざまな「百人一首」があるのですが、通常、「百人一首」というと藤原定家がまとめた「小倉百人一首」を指すのが普通です。なお、「短歌(和歌)」というのは、五・七・五の上の句と七・七の下の句からなる日本特有の歌のことです。
「小倉百人一首」の最初の歌は、天智天皇が詠んだ歌ですが、
「秋の田の 仮庵(かりほ)の庵(いほ)の 苫(とま)をあらみ わが衣手(ころもで)は 露にぬれつつ」
となります。(この歌は「五・七・五」ではなく、「五・七・六」となっていますが、これは「字余り」と呼ばれます)
で、なぜこれが「ゲーム」になるかといいますと、この「小倉百人一首」はカルタになっているからです。下の句だけが書かれた札(取り札)を並べ、読み手が上の句からすべて書かれた札(読み札)を読み上げて取っていくのです。
もうおわかりのように、速く取ろうと思えば、どこにどの札があるのかを覚えるのもそうですが、まずは上の句を聞いた時点で下の句が思い出せるよう覚えておくことが必須になります。そのため、この「百人一首」カルタをやりはじめると、勝つために少しでも多くの歌を覚えようとするわけです。
この百人一首カルタ、一度やりはじめると意外にはまります。この機会に百人一首を覚えてみませんか?百も歌なんか覚えられないと後ずさりしている人がいるかもしれません。そこで、みなさんに超お手軽な「百人一首」の覚え方を伝授しましょう!
記憶には、「とにかく絞る」が効果的
年末年始こそ百人一首!
前に進むためには、「とにかく絞る」こと。
具体的には、自分が「これなら!」と少しでも覚える歌を一首選べばいいのです。百もあるわけですから、一つぐらいあなたが気に入る歌は見つかります。選ぶ基準はあなた目線で構いません。百人一首の読み札には読んだ人が描かれていますから、その顔やたたずまいで好みの人を選んでもいいでしょう。男性であれば“絶世の美人”として知られる小野小町の「花の色は……」、女性であればイケメン・プレーボーイだったという在原業平の「ちはやぶる……」でもいいでしょう。また、歌ですから自分にとって心地よい音が流れるものを選ぶのも一つです。
このようにまずは一つ選ぶことです。そして、一つ選んだあともさらに「絞り」ましょう。せっかく、「五・七・五 七・七」というようにわかれているわけですから、まずは最初の「五」に絞ってくり返せばいいのです。たとえば、「秋の田の」や「花の色は」といった部分だけに絞ってくり返すのです。そして、そこが馴染んで覚えてきたなと思ったら、だんだんと範囲を広げていきます。その際、今覚えたところとつなげていくのがポイントです。
「秋の田の 刈穂の」
「花の色は 移りにけりな」
といったように、少しずつ範囲を広げてくり返していくのです。こうすれば、量に圧倒されずにくり返しが自然と起こるようになり、だんだんと覚えられるようになってきます。とにかく欲張らずにまずは「絞り込む」。そして「くり返す」。そしてだんだんと「範囲を広げる」。これが百人一首にも限らず、記憶することの秘訣です。
「美人シリーズ」「イケメンシリーズ」で覚えていく
こうやって一首でも覚えることで、この一首があなたにとって大きな一歩となります。おすすめの広げ方としては、覚えた一首との何らかのつながりをたどって覚えていくことです。たとえば、美人の歌がいいなあということで小野小町の「花の色は……」を覚えた人は、同じく美人と思う作者のものを覚えていくのもいいでしょう。「イケメンシリーズ」もありですね。また、言葉繋がりで広げていくのも効果的です。「花の色は……」でいえば、同じく「花」から始まる歌に、の「花さそふ……」という歌があります。
なお、このように歌の始まりの言葉が同じか違うかで覚えていくのは、ゲームの勝負どころでもとても重要になってきます。「決まり字」というのですが、上の句のここまで詠まれれば、下の句が特定できる箇所のことで、それを意識すればより効率的に覚えることができるのです。
たとえば、「花」だけでは、まだ「花の色は……」か「花さそふ……」のどちらかはわからないのですが、「花の」までいくと、小野小町の歌であることが決まり、下の句の書かれた「わが身世にふる ながめせしまに」という札を取ることができるというわけです。
できるだけラクをしたいと思う人は、「じゃあ、全部覚えなくても、決まり字までと、下の句を覚えてしまえば、カルタというゲームでは勝てるのでは?」と気づくかもしれません。確かにカルタゲームということからすれば、それでいいですし、そのほうがより「絞り込む」ことになるので、そこから取り組むのも一つです。
百人一首の勝ち方
最後に、超効率的に7首を覚える方法をお伝えしましょう。それは「むすめふさほせ」という言葉です。七文字ですが、とりあえずこの言葉をくり返して覚えてしまってください。実はこの七文字、「一字決まり」となる歌の音を集めたものです。つまり、「む」から始まる歌は一つしかないので、「む」という音が出ればある歌に決まるのです。
「む」で始まる歌は
「村雨の 露もまだ干ぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ」
という歌なので、「む」という上の句の始めと下の句の「きり(霧)」だけを覚えてしまえばいいということになります。なので、「む きり」というのをくり返して覚えればいいことになります。同じように、「す ゆめ」「め くも(が)」「ふ むべ」「さ いづ」「ほ ただ」「せ われ」といった具合に覚えれば7首をカバーできるのです。
こうやって覚えつつ、カルタを楽しむなかで、さらにどんどんと興味がわき、くり返すなかで覚えられるようになっていきます。なお、「ちゃんと意味がわからないと……」「せっかくなら歴史的背景も……」なんて思う人がいるかもしれませんが、あれこれ欲張ると「圧倒されて」くり返しが起きないで挫折する危険性もあるので、それはほどほどにすることがお勧めです。もちろん、自然と「この意味は何だろう?」「この人はどういう人なんだろう?」と興味が出てきたら、調べたりすることはいいです。これは記憶心理学では「精緻化リハーサル」と呼ばれるのですが、関連する情報を知ることでより記憶が強化されます。
まあ、それはともかく、カルタを楽しんで、素敵な時間をお過ごしください!
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