歳をとると記憶力は下がるのか?

忘れて思い出せない

「あれ? 何だっけ?」と忘れたとき……

「歳のせいか、だんだん記憶力が悪くなった……」
「物忘れがどんどんひどくなって……」
「若いころはもっと記憶力がよかったのに……」

あなたはこんなふうに記憶できないことを、年齢のせい、記憶力の低下のせいにしていませんか?

確かに、歳を重ねると脳の神経細胞はだんだんと減っていきます。

しかし、脳の働きを決めるのは神経細胞の数ではありません。
個々の神経細胞のつながりである「神経回路」の数なんです。

そしてこの神経回路の数は、歳を重ね、その中で経験を重ねるごとに新たに増え続けることがわかっています。

つまり、あなたは若い頃より、記憶力は低下していません、むしろ向上しているのです。

記憶は「行動」である

これについて、脳科学に関する多数の著作がある池谷裕二・東大准教授は、次のように述べています。

「歳のせいで覚えが悪いという嘆きは、たいへんな間違いであり、多くの場合は努力不足である」

池谷准教授は、記憶できる・できないは、「記憶力」といった能力の問題ではなく、「努力」、つまり記憶のための行動が不足しているというのです。

では、記憶のための行動とは何でしょう?

それは「くり返し」です。

若い頃であれば、何度も何度もくり返していたのに対し、歳をとるにしたがって、そのくり返しの量が減っている、ただそれだけなのです。

実際、5000人ものお客様の名前を覚えているホテルマンも、記憶力というより、お客様の名前を書いた人名録を日々くり返し読んでいます。(『ビジネスマンのための「行動観察」入門』松波 晴人著 講談社現代新書)

記憶は「能力」ではなく「行動」なのです。

(このホテルマンの記憶の細かいコツはこちら↓
5000人の名前を覚えるホテルマンの記憶術の基本はコレ
 

ほんの少しの癖の差が記憶を左右する

『ビジネスマンのための「行動観察]入門』

5000人のお客様の名前を記憶するための行動とは?

前ページで解説したように、記憶するには、記憶のための行動、つまり「くり返し」をよりたくさん行うようにすればいいのです。

実際、相手の名前をすぐに覚える人の行動を観察すると、その人は頻繁に相手の名前を口に出し、何回もくり返して覚えています。

一方、「覚えられない……」と嘆いている人ほど、くり返すことをしていません。

覚えたいことをすぐにくり返しているかどうか。


このちょっとした行動の癖の差が、覚えられるか覚えられないかを左右するのです。

「記憶力が悪くて……」
「物忘れがひどくなって……」

と言っている人は、そうやって嘆いている時間がもったいないです。そうやって投げているために、くり返すという行動が減っているかもしれません。

嘆くのをやめて、覚えたいものをくり返すことに時間を使えば、もう「記憶力が悪くて……」と嘆くことは少なくなっていくでしょう。

覚えているうちに思い出す

「くり返せと言われても……」

「くり返し」を大変だ、面倒だと感じる人も多いでしょう。

そんな人に「くり返し」を楽にするコツをお伝えします。それは……

「覚えているうちに思い出す」

これです。

それでは、今お伝えしたコツをもう一度、思い出してください。

おそらく、あなたはこの「覚えているうちに思い出す」というコツを2回どころか、3回、4回と頭の中でくり返したでしょう。

そうなんです。覚えていると、すぐに思い出せるのでくり返しが一気に楽になります。

そして、くり返すことでさらに強く覚えられます。なので、すぐに思い出せるので、さらにくり返しが楽になる、というわけです。

思い出すことは、ほかの人からは見えません。

このため、よく記憶する人は「記憶力がいい」と能力が高いからと言われがちですが、実際にはこういった「思い出す」といった見えない行動によって、効果的に記憶しているのです。

あなたも「記憶力が悪くなった……」と嘆く前に、覚えているうちに思い出すことで、くり返しの回数を増やしてみてください。

必ず、「記憶力が良く」なりますよ。

・関連記事

記憶術基本講座1——イメージ記憶術