記憶術/記憶術の例

論述の覚え方……量に圧倒されずに記憶する方法

記述式・論述式では分厚いテキストの内容を記憶することが求められます。今回は量に圧倒されない論述の覚え方をご紹介いたします。どうすれば、楽に確実に記憶できるのか? そのポイントは2つの「急がばまわ〇!」。いきなり細かい知識を覚えようとしないでください!

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

<目次>

論述の覚え方は? いきなり細かい知識を覚えようとしない

論述の覚え方

ヨーロッパの国名覚えてますか?

あなたが記述式、もしくは論述式の試験を受けようとしているのであれば、テキストの記憶が欠かせません。なぜなら、記憶していなければ何も書けないからです(ちなみに択一式の場合、今回紹介するレベルの記憶は必要ありません。ほとんどの問題では、書かれている文章を見て、それが正しいか間違っているか判断できればいいからです)。

しかし、テキストをめくって覚えようと思っただけで圧倒されてしまう人がほとんどでしょう。

なぜ圧倒されるのか?

それは、「いきなり細かいことを覚えよう」とするから。そして、これは我々の脳が苦手とすることだからです。

池谷裕二・東京大学大学院薬学部准教授は、『記憶力を強くする』(講談社)で次のように述べています。
「一般に記憶とは決して厳密なものではなく、かなり曖昧でいい加減なものであるといえます」
「ちがいの大きなものを区別できるようになってからでないと、小さいものを区別できるようにならないのです」
そして、記憶のためには「まずは大きく捉える」ことを勧めているのです。
 

急がばまわれ! 分けて階層化する

「まずは大きく捉える」とは具体的にどういうことか、ヨーロッパの国名を覚える場合を例に解説してみましょう。

ヨーロッパの国名を挙げてみると……

アイスランド、アイルランド、アルバニア、アンドラ、イギリス、イタリア、ウクライナ、エストニア、沿ドニエストル、オーストリア、オランダ、ギリシャ、クロアチア、コソボ、サンマリノ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルコ、ノルウェー、バチカン、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベラルーシ、ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、マケドニア、マルタ、モナコ、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、ルクセンブルク……(50音順)

いきなりこれを覚えようとしても圧倒されますよね。

このとき「まずは大きく捉える」ために何を行うかというと、「分けて階層化」するのです。たとえば、東西南北の4つでヨーロッパを分け、一つ階層を増やしてしまうのです。

最初に覚えるのは北欧・西欧・東欧・南欧の4つの言葉。これなら簡単に覚えられますよね。覚えたいのは国名ですから、必要のない区分名を覚えるのはムダなようですが、脳にとってはこうやってまずは大雑把なところから覚えていくのがやりやすいのです。

いわば、「急がばまわれ」です。

例えば、「ヨーロッパの国は?」という問いだと圧倒されてしまいがちですが、

「北欧の国は?」
「西欧の国は?」


というように、すでに覚えた区分名ごとの問いであれば、それぞれに含まれる国数は少なくなり、圧倒されにくくになります。

このように、階層を増やして区分名を覚え、だんだんと細かいところに入ることで、結果的に楽に速く覚えられるのです。
 

まず覚えるのは目次から

細かい知識をじっくり覚えてませんか?

細かい知識をじっくり覚えてませんか?

さて、試験勉強でテキストを記憶するときは、どうなるでしょう?

テキストの場合、読む人が「分けて」階層化しなくても、もともと、「分けて」階層化されています。

そうです。章タイトルや小見出しなどがすでに付けられていますから、まずはこれを利用し、覚えていけばいいのです

さらに便利なことに、ほとんどの本には目次が付いていて、そこには章タイトルや小見出しなどがまとめられています。目次であればせいぜい10ページ未満ですから、量的にも圧倒されることはないでしょう。

もちろん、初めて読むテキストですから、目次項目もなじみのない言葉が並んでいるはずです。また、タイトルや小見出しは抽象的な言葉が多いですから、とっつきにくいとは思います。

しかし、これもまずは部のタイトルなど一番大きなくくりのところから入っていけば、せいぜい10個未満になるでしょうから、量的に圧倒されることはありません。

まずはそこだけでも馴染んで記憶していき、次にその下の章タイトルを記憶していけば、楽に記憶できます。そして章タイトルが記憶できたら、その下の小見出しへとだんだんと細かいところに入っていけばいいのです(なお、目次項目はイメージ記憶法を使えば、もっと短時間で楽に記憶することが可能です。参考記事はこちら→記憶術基本講座1——イメージ記憶術記憶術基本講座2——空間記憶術

また、拙著 『合格(ウカ)る技術』(すばる舎)、『「1分スピード記憶」勉強法』(三笠書房)に具体的な手順が掲載されています)
 

急がばまわせ……覚える・思い出すをくり返す

記憶においてもう一つ忘れてはならない脳の性質があります。

それは「くり返し」。脳はくり返すことでだんだんと記憶していきます。このため、章タイトルなどを記憶する際に、一つ一つをじっと眺めて覚えようとするのは非効率です。

それよりも、章タイトル全体ををさっと見て、思い出そうとしてみる。全部思い出せなくても構いません。思い出せるところだけ思い出せばいいです。その後、再び章タイトル全体を見ます。すると、「ああ、そうだった、そうだった」と思い出せるものもあると思います。

次に、そこから目を離して思い出そうとしてみましょう。この時も、思い出せるところだけ思い出せばいいです。がんばる必要はありません。

そして、章タイトル全体を見る。すると、さっきよりも思い出せるものが増えているのに気がつくと思います。

このように、覚える際に、がんばって覚えようとするよりも、覚える―思い出す(忘れる)ことをくり返せば、楽に、しかも速く覚えられます。

「急がばまわれ」ならぬ、「急がばまわせ」なのです。

いきなり細かいところに入らず、

1:「急がばまわれ」でタイトル・見出しから覚える
2:「急がばまわせ」で覚える・思い出す(忘れる)サイクルをまわす


これによってテキストを楽に覚えられるようになります。ぜひお試しください!

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