信頼した相手との関係に執着してしまうのはなぜ?
「私だけを見て」「この子さえいれば」――そんな言葉が口ぐせになっていませんか?
恋愛をするとパートナーのことしか見えなくなり、「2人だけの世界」に執着していませんか? その気持ちから「私だけを見て」「すぐに会いたい」という一方的な思いを伝えていると、相手は恋愛関係を負担に感じてしまうかもしれません。
家庭でパートナーや子どもとの関係にのめりこみ、「この人さえいてくれれば」「この子さえいてくれれば」と執着していませんか? 家族を束縛しすぎてしまうと、いつしか家族の笑顔が消え、心の健康も失われてしまうかもしれません。
このようにして特定の人間関係に執着してしまうと、大切な人の自由を奪い、信頼関係が壊れてしまうことがあります。パートナーや家族だけでなく、友情などのその他の人間関係においても、同じような付き合い方をしていないかを振り返ってみましょう。
たとえば、「いつまでもずっといちばんの親友でいようね」というように2人だけの友情にこだわる。教師や上司などの信頼する指導者を親のように慕い、自分だけを評価してほしいと期待する。このように特定の人間関係に執着しすぎると、その人間関係がとても閉塞的になり、息苦しいものになってしまいます。
「自己分化」とは? 感情を引きずらず、自立的に行動できているか
心理学には、「自己分化」という概念があります。「自己分化」とは、家族心理学の礎を築いた一人であるM.ボーエンによると、原家族の影響から心理的に卒業し、自立的に行動できる状態であり、感情のシステムと知性のシステムが分離できている状態のことです。しっかりと自己分化ができていると、過去の家族への思いから解放されているため、楽な気持ちで人生を歩むことができます。自己分化がうまくできていないと、育ってきた家族との関係に満たされない思いを抱えたままでいるため、その後の人生でも「私だけを見ていてほしい」「不安な気持ちを満たしてほしい」というような思いを、誰かに向けすぎてしまうことがあります。そのため、パートナーや子どもなどにその思いをぶつけ、相手を束縛してしまうことがあるのです。
自己分化についてさらに詳しく知りたい方は、「ケンカで分かる!カップルと夫婦の心の成熟度」もぜひご参照ください。
愛情欲求を第三者にぶつけ、関係を壊してしまう原因は?
親のことを否定しても、満たされなかった思いは心の中に残り続ける
育ってきた家庭のなかで上のような満たされない思いを抱えてきた方のなかには、親を拒絶し、家族と会うことを一切やめてしまう方もいます。しかし、無理に離れても、満たされなかった愛情欲求は心の中に残り続けていくものです。
そうした思いを抱えたなかで、パートナーとの出会いがあったり、愛するわが子を授かったりすると、原家族の親子関係で満たされなかった愛情欲求をまるごと向けることで、その人間関係に執着してしまうこともあるかもしれません。
「家族との関係」の影響に気づくことが解決の第一歩
パートナーは強すぎる愛情欲求を向けられると、行動の自由を奪われたように感じ、とてもつらくなってしまうのではないでしょうか。そのパートナーにも同じような強い愛情欲求があると、互いに束縛しあってしまうかもしれません。また、原家族で満たされなかった愛情欲求を子どもに向けていくと、子どもは親にとても気を遣ってしまい、親子関係をとても息苦しいものに感じてしまうかもしれません。上のようなことに心あたりを感じる場合、これまでの自分自身の歩みを振り返りながら、心の奥で抱えている思いに気づいていくことが大切ではないかと思います。そして、原家族によって満たされなかった思いを新しい人間関係のなかで解消しようとしていないか、自分の心をじっくりと洞察していくとよいでしょう。
大切な人とのよい関係を保ちながら、楽な気持ちで人生を歩んでいくためには、自分自身の心のありように気づくことが必要になります。一人で行うのが難しい場合、家族関係の問題や依存症に詳しいカウンセラーや精神科医などの心の専門家に相談しながら行っていくとよいでしょう。