マーケティング/マーケティング事例

再上場のすかいらーくはマクドナルドを追い抜けるか?

創業一族によるMBOを経て6年ぶりに再上場したすかいらーく。上場によって外食業界トップが見える位置まで上昇してきた。一部にはMBOと再上場は成功ではないという声も聞かれる中、このMBOと再上場の成否について、またすかいらーくの未来についてマーケティングコンサルタントの視点で説明します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

外食業界を変えてきた「すかいらーく」

ガスト

すかいらーくグループの中核を担うガスト

2014年10月9日、8年ぶりにすかいらーくが再上場した。売り出し価格による時価総額は約2300億円と約3500億円の日本マクドナルドに次いで外食産業で第二位となる。同社は上場で獲得した資金をもとに駅前や商業施設内での出店計画を加速させる予定だ。

1962年、すかいらーくはスーパーとして横川4兄弟によってスタートした。その後まもなく、ロードサイドにおけるファミリー層をターゲットにしたレストラン「すかいらーく」を展開する。創業以来、すかいらーくは新しいことを次々に仕掛け、外食業界をリードしていく。例えば、メニューにおいてはハンバーグと海老フライを同じ皿で盛りつけて出すという提供方法を生み出した。また、ファミレスとして和食メニューをいち早く登場させたのもすかいらーくだ。1980年代初頭には、POSシステムをメーカーと共同開発し全店に導入した。

そうした動きの中で最も印象的だったのは「ファミレス業態の再構築」に着手したことだ。それまでオールジャンル型であったファミレスを、低価格向けの「ガスト」、中華専門の「バーミヤン」、和食の「藍屋」「夢庵」、コーヒー中心の「ジョナサン」というようにブランドを分けたのだ。

このように創業からMBO(マネジメント・バイ・アウト)までのすかいらーくの歴史は”新しいことへの挑戦”の歴史とも言えるのだ。

創業家によるMBO

”新しいことへの挑戦”によって外食産業をリードしてきたすかいらーくも、経済状況の悪化や競合争いの激化によって苦戦するようになった。上場企業であるがゆえに、業績が悪くなると株主への配慮が必要になり、冒険をしづらくなる。こうして2000年代に入ると、すかいらーくの持ち味を活かしにくい状況が増えていった。

こうした状況を打開するため、2006年に創業家の横川一族を中心にMBOを行い、上場廃止を決定した。そして翌2007年に創業家の横川竟氏が社長に就任し、思い通りの経営を行おうとした。しかし思ったような成果を収めることが出来なかったため、MBOを支援したファンドや組合によって横川社長は約1年という短期間で退任させられてしまった。MBOによってやりたいことがやれるようになったはずなのに、支援者からも従業員からもそっぽを向かれ、仕掛人が退任させられてしまうという皮肉な結果に終わった。

この点において、創業者一族によるMBOは失敗に終わったと言えよう。しかし創業者一族ではなく、企業としてのすかいらーくを見た場合には、成否はどうだったのだろうか?

MBOは成功だったのか?失敗だったのか?

横川社長退任後、いくつかのファンドがすかいらーくの主権を握った。そして2014年10月9日、すかいらーくは再上場した。実は再上場後の時価総額は、上場廃止時に利用した金額とほぼ同等なのだ。つまり時価総額という視点では、企業価値はほとんど変わっていない。率直に言えば、MBOと再上場を手がけたファンドや銀行などの金融機関と、上場廃止時に20%のプレミアムをつけて売却した株主だけが得をしたように見える。

ただ上場廃止前と比べ、すかいらーくの状況は確実に改善し、今や外食産業トップを狙える位置に来ている。その点において企業にとってもMBOは成功と言えるものだったと言える。

現在、すかいらーくの時価総額は外食産業で日本マクドナルドに次ぐ第二位。トップが見える位置にいる。将来、マクドナルドを追い抜くかもしれない。

次ページでその可能性とすかいらーくの強みについて解説する。
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