糖尿病治療は食事と運動と薬が基本です。ヘルシーな野菜と魚がトレンドです(c)KAWAI Katsuyuki
食事療法
1) 糖尿病の食事療法のプランの立て方には数通りの方法があります。日本では伝統的な(a)食品交換表を使うように指導されていますが、 (b)食品交換表の炭水化物グループのみにポイントを絞る (c)炭水化物トータル量をグラム単位で管理する (d)消化吸収できる糖質(炭水化物)のみをグラム単位で計算する方法などがあります。食品交換表はカロリーと各栄養素をバランスよく取れるように工夫されていますが、そのぶん煩雑でとても覚えられるものではありません。
(b)、(c)、(d)は今話題の炭水化物に焦点を当てたカーブカウンティングのメソッドの相違で、国によっては「炭水化物」の糖質と食物繊維の仕分けが明確でないため、このような選択があります。日本の食品成分表は炭水化物の糖質と食物繊維が分かれていますから(d)がそのまま利用できます。
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2) なぜ炭水化物(糖質)を心配するのでしょうか? 例えばご飯やパンに含まれている"でんぷん"はブドウ糖が長く連なったものです。でんぷんは直ぐにブドウ糖に消化吸収されて血液に入り、体中でクリーンで高カロリーのエネルギーとして利用されます。しかし、血糖値をコントロールしている肝臓、筋肉細胞や脂肪細胞はインスリンがないと食後に増えたブドウ糖を取り込めません。糖尿病患者はインスリンの欠乏あるいは作用不足のため、どうしても血糖値が高くなってしまいます。その高血糖が血管や神経を損傷するのです。
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3) しかし、糖質性食品は決して悪玉ではありません。炭水化物(糖質)のほとんどは植物性の食品から得られます。つまり、野菜、果物、ジュース、豆類、穀物(米飯、パン、パスタ等を含む)、砂糖、加糖食品(スウィーツ、キャンディ、ビスケット、ソフトドリンクetc)などですが、牛乳も糖質を含んでいます。砂糖/その加工食品を除けばヘルシーな善玉食品そのものです。
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4) 糖質制限食が注目されていますが、炭水化物は食事療法の敵? 味方?で解説したとおり、炭水化物摂取量の唯一解はありません。今、話題の糖質制限食では毎日決められた量の糖質を摂取することになっています。なんとなく簡単そうですね? ところがところが(!)、糖質を計算するカーブカウントは詳細な指導と練習を積み重ねなければとても身に付くものではないのです。いい加減なダイエットでは主食を抜く程度の話が通用していますが、糖尿病では全身の安全がかかっていますからそんなレベルの話ではありません。
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経口薬とインスリン
5) 2型糖尿病の病態は一人ひとり違います。しかも少しずつ進行していきます。そのため、いろいろな薬が用意されています。今日使われている種類の異なる血糖降下経口薬は7種類です。- スルホニル尿素薬
- 速効型インスリン分泌促進薬
- αグルコシダーゼ阻害薬
- ビグアナイド薬
- チアゾリジン薬
- DPP-4阻害薬
- SGLT-2阻害薬
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6) 自分判断で薬を増減したり、やめてはいけません。薬の効果は人によって異なります。担当医は駆け引きをするあなたのゲーム相手ではありませんから、問題があれば遠慮なく相談して自分に合った薬をみつけましょう。
7)インスリンは糖尿病患者の支えです。今日のインスリン注射は小さな極細のペン型の針を使いますから痛みはほとんどありません。2型糖尿病でもインスリン注射は珍しくありません。なぜならインスリンが不足しているから外部から補充するので、決して患者の失敗ではないのです。インスリン治療は自然の流れです。
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血糖自己測定
8)経口薬治療の患者が血糖自己測定を行ってもA1Cが低下するかどうかは証明されていません。しかし、どうしても目標のA1Cが達成できない患者が、診察日直前の3日間に集中的に血糖測定を行うことで生活習慣や薬の課題が明らかになるのは確かです。コントロールの悪い2型の患者には血糖測定が経口薬でも健保適用になるケースがあります。担当医に相談しましょう。■関連記事
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低血糖と高血糖
9) インスリンとスルホニル尿素薬を使っている患者は低血糖になるリスクが高くなります。低血糖ならブドウ糖の補給、高血糖ならインスリンの追加ですが、2型糖尿病なら食後高血糖をエクササイズで下げることも可能です。低血糖と高血糖の症状はさまざまなので、常に心構えとブドウ糖の用意を怠ってはいけません。■関連記事
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合併症予防
10) 糖尿病治療は合併症にならないように不断の努力を続ける毎日です。慣れれば、それは理想なヘルシーな日常生活であることが分かります。だんだん上手になりますから諦めてはいけません。■関連記事
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