糖尿病/糖尿病の経口薬・インスリン

インスリン導入はどんな判断で行われるのか!?

1型糖尿病では危険な高血糖やケトアシドーシスを防ぐため、多くの場合は診断の初めからインスリンが使われます。ゆっくりとインスリン分泌能を失っていく2型糖尿病では食事と運動の見直しから始まって、やがて経口薬になり、いずれはインスリンへの変更か、経口血糖降下薬とインスリンとの併用を覚悟しなければならない時がくるでしょう。

執筆者:河合 勝幸

インスリン

マニアックな私は3種類のインスリンを使っています。ピッツァやパスタのように高脂肪食の時は、アスパルトとレギュラーを50/50の比率で用います。

1型糖尿病では危険な高血糖やケトアシドーシスを防ぐため、多くの場合は診断の初めからインスリンが使われます。ゆっくりとインスリン分泌能を失っていく2型糖尿病では食事と運動の見直しから始まって、やがて経口薬になり、いずれはインスリンへの変更か、経口血糖降下薬とインスリンとの併用を覚悟しなければならない時がくるでしょう。

その判断は担当医が行いますが、今月(2012年4月)からヘモグロビンA1c(以下HbA1c)の値が従来の日本標準値(以下JDS値)から国際標準値(以下NGSP値)に移行したのに伴い、血糖コントロールの医師の判断が国際水準にならってとても明解になるので、一般医と糖尿病専門医の間にあった目標値のばらつきが少なくなると思います。

血糖コントロールの目標は7%未満(HbA1c/NGSP)に

糖尿病合併症を防ぐためにはHbA1c/NGSPを7%未満にしようというのが世界の共通目標です。従来のJDS値では6.6%未満ということになります。
日本の医療は血糖コントロール指標を「優・良・可・不可」と評価して、まるで成績表のように患者の点数をつけていましたが、せっかくNGSP値を採用したのですから血糖コントロール目標も欧米並みに7%未満と明確に一線を画さなければ国際化の意味がありません。

日本のように「優」と「良」とを比べたら、どう考えても優の方がよさそうですが、実際にはHbA1cは出来るだけ低い方がよいという科学的根拠はないのです。
糖尿病患者が血糖を正常値に近づけようとすればするほど、インスリンによる体重増やシビアな低血糖のリスクが増大します。ですから、目標は患者の年齢や体の状態で医師が判断します。
2型糖尿病で厳格な血糖コントロールを目指したら、かえって死亡率が高くなって計画変更を余儀なくされた治験がありましたね。
さて、このように多くの2型糖尿病者がHbA1c/NGSP値7%未満を目指すとします。この値は平均血糖値に換算すると154mg/dl以下を意味します。これを達成するには空腹時血糖値がおおむね130mg/dl以下、食後2時間血糖値が180mg/dl以下でなくてはなりません。

もし、経口血糖降下薬が十分に作用せずに目標HbA1cを達成できなくなれば、治療法を再検討するタイミングです。
GLP-1受容体作動薬(バイエッタやビクトーザ)をインスリンの前に導入される患者もいるでしょう。
いずれにしても治療期間が長い2型糖尿病患者はどこかでインスリンの補充が必要になるポイントがあります。
早朝空腹時血糖値をコントロールするために夜のインスリンが追加される人もいますし、各食事前のインスリンで食後2時間血糖値をコントロールする人もいるでしょう。

2型糖尿病はインスリンが十分に作用しないインスリン抵抗性と、インスリンが不足している状態の組合せですから、経口薬がどのくらい効果が続くかを予知することは出来ません。
インスリンか経口薬かの問題ではなく、あくまでも目標は血糖のコントロールなのです。

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