ケトン体は尿と血液から測ることができます。これは試験紙を尿に浸して色の変化で濃度を判定します。

ケトン体は尿と血液から測ることができます。試験紙を尿に浸して色の変化で濃度を判定します

意識を失うような低血糖を起すたびに子どもの知能が低下するという説がありますが、科学的には証明されていません。

それよりも「DKA(糖尿病ケトアシドーシス)」が記憶力を悪くするという論文があります。なかなか説得力がありますよ。1型糖尿病の子どもを持つ親は、さぞご心配でしょうね。でもDKAは防げるのです。


DKA(糖尿病ケトアシドーシス)についての気になる論文

アメリカの小児医学の専門誌『The Journal of Pediatrics, (2009/10/15のオンライン版)』に載ったものですが、糖尿病ケトアシドーシス(以下DKA。詳細は後述)を経験したことのある子どもは、持続的な記憶力のトラブルを抱えるというショッキングな内容の論文があります。

もちろん少人数の研究で十分な根拠に基づいたものではないので悲観しすぎることはありません。しかしDKAは予防も早期治療もできるものですから、もう一度担当医とシックデイの対応を打ち合わせておいてください。シックデイというのは、糖尿病患者が発熱、下痢、嘔吐をきたし、または食欲不振のため食事ができない状態、つまりsick dayのことです。

記憶力低下とDKA

上記の論文はDKAを経験したことのある33人の1型糖尿病の子どもと、DKAを一度も経験したことのない29人の1型の子どもたちに記憶力のテストをしてみて分かったことです。中にはDKAで入院して1型糖尿病と診断されただけの子どももいました。

驚いたことに、記憶力が悪いのは、ずうっと以前にDKAを経験した子どもたちでした。どうも、この記憶力の低下はしつこく続くようなのです。特に年少時にDKAになった少年たちの成績が悪かったのです。研究者はDKAを起す前に1型糖尿病の診断をするように呼びかけていますが、これは医療サイドの責任ですね。
特に子どもにみられるDKAの重い合併症には、死亡率の高い脳浮腫(液体の過剰蓄積)がありますが、輸液の過多や注入速度によっては脳にダメージを与えることもあります。

DKA(糖尿病ケトアシドーシス)とは

DKAは、食欲がないのでインスリン注射をしなかったり、あるいはインスリンポンプが壊れていた等で起きる極度のインスリン欠乏と、インフルエンザや風邪、手術や心臓発作や脳卒中のときに分泌されるストレスホルモン(カテコラミンやコルチゾル、アドレナリンなどは血糖を上げる作用がある)の相乗効果で、高血糖、高ケトン血症、アシドーシス(酸血症)をきたした状態です。重症になると昏睡から死亡することもある急性合併症で、直ちに治療を開始して速やかに専門医のいる医療機関へ移送するのが望ましい危険なものなのです。

DKAは1型糖尿病に多く発症しますが、2型の高齢者にもありますので油断してはいけません。

体の中ではこんなことが起きています。

インスリンが欠乏するとエネルギー源のブドウ糖が筋肉や脂肪細胞に入れないので血糖値が高くなります。それなのにからだはブドウ糖が不足していると判断して、肝臓に蓄えてあるブドウ糖を放出させるので更に血糖が上がります。インフルエンザの時のようなストレス状態では血糖を上げるストレスホルモンがインスリンの作用を抑えて更なる血糖上昇を招きます。この高血糖を尿から排泄するために多尿になり、強い脱水とナトリウム、カリウムなどの電解質が不足します。吐き気や嘔吐、腹痛が伴いますから、水や食物が取れません。

一方、インスリンが欠乏すると脂肪細胞から多量の遊離脂肪酸がエネルギー源として放出され、それが肝臓でエネルギーを取り出すためにケトン体という物質に作り変えられます。遊離脂肪酸のままでは脳の中に入って行けないので、脂肪酸をアセト酢酸とかベータ=ヒドロキシ酪酸、アセトンのような水溶性の高エネルギー物質に変えるのです。この3種類の物質がケトン体と言われるものです。

特に前の2つは有機酸ですから、血液(通常はpH 7.3~7.4)をpH 7.3未満の酸性に傾けてしまいます。これがアシドーシス(酸血症)です。

DKAとは糖尿病による高血糖とケトーシス(ケトン体濃度が異常に高まる)とアシドーシス(酸血症)の危険な状態のことで、これが名前の由来です。

次回はDKAのサインとその対応法についてご紹介します。


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