インスリンの発見
前回の記事では、用途に応じたインスリン製剤があることを説明しました。しかし、人間のインスリンはもともと一種類しかありません。ですから、それぞれが理由があって構造を少し変えて役割を果たしています。その仕組みを見てみましょう。正しい知識がインスリンに対する心理的な抵抗を和らげるからです。

幼児発症の1型の女性で、今では立派なキャリアウーマンの方が「人工的なインスリンアナログは不自然だから絶対に使わない!」と言っています。
ところが私はインスリンアナログは科学の勝利だと思っています。このインスリンアナログとは何でしょうか?

インスリンアナログのいろいろ

アナログ(analogue)とは「類似化合物」のことです。類似しているけど全く同一ということではありません。これに対して正規インスリン(レギュラーインスリン)という物があります。私達が通常R(アール。つまりレギュラー)と称しているのがレギュラーインスリンのことです。

Rはタイプとしては速効性のインスリンですが、なぜレギュラー(正規)と言うかというと、1921~1922のトロント大学(カナダ)で初めて抽出されたインスリンがこれだったからです。ヒトと同じアミノ酸配列で作られたR(レギュラーインスリン)を特に"ヒューマン"と呼びます。日本では入手できませんが、ブタインスリンのRもヨーロッパでは使用できます。

ヒトのインスリンは51個のアミノ酸から構成されているペプチドホルモンです。2つのペプチド鎖(アミノ酸のつながったもの)が互いのアミノ酸"システイン"を介して-s-s結合で結合しています。それぞれの動物によってそのアミノ酸配列が少し異なります。

1922年以来使われてきたウシ、ブタインスリンはヒトと少しアミノ酸の構成が違っているのでアレルギー症状が出ることがありました。そこで遺伝子組み換え技術を使って、ヒトインスリンを大腸菌や酵母に作らせることに研究が進みました。

1982年、ノボ社(デンマーク)がブタインスリンのアミノ酸配列を一部変えて初めてヒトインスリンを合成するのに成功し、同年イーライ・リリー社(アメリカ)が遺伝子組み換えによってヒトインスリンを作ることに成功しました。

これはとても大きな一歩でしたが、まだ問題が残っていました。

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