糖尿病/糖尿病の経口薬・インスリン

インスリン事始め(4) インスリンアナログ(2ページ目)

用途に応じたインスリン製剤があることを前回説明しました。しかし、人間のインスリンはもともと一種類しかありません。ですから、それぞれが理由があって構造を少し変えて役割を果たしています。

執筆者:河合 勝幸

インスリンは元来くっつきやすい構造を持つ

インスリンは極微小なベータ細胞で作られてストックされます。そのためインスリンはなるべくコンパクトな形になるように定められています。

まず2分子がくっついて2量体になります。更にこの2量体が3個くっついて6量体という構造になります。これはとても安定した形状で、6量体がどんどん集まって巨大化してインスリンの結晶になります。問題は安定した6量体を注射しても大きすぎて血管に入れないのです。2量体や1分子になって始めて皮下注射したインスリンが血液中に入れます。

これが少し時間がかかるのです。

ですからR(レギュラー)を速効型と行っても作用が発現するまで30分はかかります。そのため食事ごとにRを注射する時は食事の30分前に注射しなければなりませんでした。

そこで15分もあれば作用が発現する超速効型インスリンが作られました。イーライリリー社が開発した「リスプロ」(商品名ヒューマログ)はインスリンのB鎖の末端から3番目(プロリン)と2番目(リシン)のアミノ酸を入れ替えたものです。

ノボ・ノルディスク社の「アスパルト」(商品名ノボラピッド)はB鎖末端から3番目のプロリンをアスパラギン酸に入れ替えました。こうするとくっついたインスリン同士が互いに肘で反発しあったり(リスプロ)、アミノ酸のプラスとプラスの電荷を向き合わせることによって反発させる(アスパルト)ことが出来ます。つまり6量体のインスリンを分解しやすくしたものなのです。もちろん安定性も確かめられています。

基礎インスリンとして広く使われているグラルギン(商品名ランタス)はA鎖末端(21番目)のアミノ酸アスパラギンをグリシンに換えて、更にB鎖末端に2つのアルギニンを付け加えたものです。こうすることによって酸性(pH4)下で溶解するようになって、ヒトの体内のような弱アルカリ性ではインスリンが沈殿してしまうようなインスリンが出来ました。注射をするといったんインスリンが沈殿して、これが少しずつ溶け出して24時間にわたって一定のインスリンを供給します。

同じく持続型のデテミール(ノボノルディスク)はB鎖末端に脂肪酸をくっつけて、それが体内のアルブミン(タンパク質)に結合して少しずつ溶け出す仕掛けになっています。

これらのインスリンアナログは安全性は確認されていますから安心して使ってみてください。

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