HbA1cは過去1~2ヵ月の平均血糖値を表します。

HbA1cは過去1~2ヵ月の平均血糖値を表すもの。これまで以上に簡便な診断基準として期待できそうです

過去1~2ヵ月の平均血糖値を表わすHbA1cが糖尿病と診断する基準のひとつになりそうです。さらに、これまでのHbA1cの表記方法もその単位も変わりそうな見込み。かなりの混乱を伴うかもしれませんね。

糖尿病の診断基準変更の背景

医師が糖尿病と診断するときの基準は10年程前に数値の見直しがされましたが、基本的にはかなり古いもの。誰が考えても過去1~2ヵ月の平均血糖値を表わすHbA1c(ヘモフロビン・エーワンシー)を使えばよさそうなものですが、これまで様々な問題があって見送られてきました。

当時は世界のどの国でもHbA1cが測定できるという状況ではありませんでしたし、その測定方法も結果もかなりバラつきがあったのです。また、酸素を運ぶヘモグロビンというタンパク質は赤血球の中にあるものですから、赤血球に異常があると正確には測定できない恐れがありました。たとえば一部のアフリカ系アメリカ人に見られる鎌状赤血球や腎臓や肝臓に疾患のある人は正しいHbA1cが表示されない場合があります。

しかし分析法も進歩し、世界共通のHbA1c(これをIFCC-HbA1cと言います)も確立しました。なにより肥満が急増したアメリカでは、患者をいつ診察しても糖尿病と診断できるHbA1cの基準が必要になってきたのです。今までは早朝空腹時血糖値で診断していましたが、これは受診者が前もって8時間以上食事を取らないという準備をしなければならないハンデがあります。

日本でも診察時に高血糖症状なとがあって、しかもHbA1cが6.1%以上だと糖尿病と診断される日が来年あたり来るようになると思います。早期診断、早期治療開始です。

HbA1cか、A1Cか、IFCC-HbA1cか?

以前も書きましたが、日本のHbA1cの測定法(JDS値)は数値が欧米のHbA1cよりも0.3~0.4%低くなります。欧米の方法(NGSP値)が事実上の国際基準でしたし、HbA1cと合併症の関係を研究したDCCTやUKPDSといった大規模試験は全てNGSP値で発表されているので、日本の数値による研究者の論文発表の際にはとても不便がありました。日本語と英語では別の値なのですから。

そこで日本糖尿病学会では従来通りのJDS値に新たに0.3~0.4%高く表示されるNGSP値を併記して患者に提示し、慣れたら今のJDS値をなくしてNGSP値と国際単位のIFCC値にしようと提案されています。最終的にはIFCC値のみにする方向。3段階の移行案です。

難しい表記では患者が混乱するので今のJDS値を衆知のHbA1c、欧米のNGSP値をA1C(大文字)と記載する案も提案されています。アメリカではHbA1cという言葉は読み方も分からない人が大勢いるので、かなり前から単にA1C(エーワン・シー)と表記するようになっていました。私もそれに倣って今までの記事ではA1Cと表記してきましたから、今後HbA1cとA1Cの意味が違うようになると大いに困る事態になりそうです。

ただし、これらの話はまだ正式決定ではないので、その旨ご理解ください。より定量的に糖化ヘモグロビン(HbA1c)を測定できるIFCC方式を国際基準とすることは決まっていますから、いずれ表記方法と単位が変わるのは間違いないと思います。

イギリスでは今年(2009年)の6月1日から従来通りの%表示のDCCT-HbA1c(NGSP値のことをイギリスではこう呼びます)とIFCC値(mmol/mol)を併記するようになりました。2年後の2011年6月1日からIFCC値のみになると発表されています。

日本の3段階で移行する考え方(JDS値→NGSP値→IFCC値)は患者にとって不親切ですね。私は最初から従来通りのJDS値(%表示)とIFCC値(mmol/mol)を併記して、タイムスケジュールを立ててIFCC値のみに移行すればいいと思います。
患者にとって今更わざわざNGSP値を経由してIFCC値にたどり着く意味が分かりませんから。

略語と読み方
JDS (Japan Diabetes Society. 日本糖尿病学会)
NGSP (the National Glycohemoglobin Standardization Program)
IFCC (the International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine. 国際臨床化学連合)
DCCT (Diabetes Control and Complications Trial)
mmol/mol (ミリモル・パーモル)

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