糖尿病/糖尿病の原因・基礎知識

糖尿病のダメージは、頭のてっぺんから足先まで

米国糖尿病協会が「頭のてっぺんから足先までの健康」というキャンペーンを始めました。これこそ、患者一人ひとりが自己の管理目標として定めるべく、当コラムでも折にふれ呼びかけてきたことです。糖尿病特有の眼の障害や腎症、末梢神経の障害はよく知られていますが、糖尿病の影響は全身に及びます。

執筆者:河合 勝幸

2型糖尿病は太っている間に減量できれば全てが好転します。出来るだけ、合併症が出る前に!ですよ。

2型糖尿病は太っている間に減量できれば全てが好転します。出来るだけ、合併症が出る前に!ですよ。

米国糖尿病協会が「頭のてっぺんから足先までの健康」というキャンペーンを始めました。これこそ、患者一人ひとりが自己の管理目標として定めるべく、当コラムでも折にふれ呼びかけてきたことです。糖尿病特有の眼の障害や腎症、末梢神経の障害はよく知られていますが、糖尿病の影響は全身に及びます。それらの症状を簡略に説明し、発症や進行を抑える数値目標を整理してみました。

脳の血管障害

糖尿病は脳卒中(脳血管発作)のリスクを、米国のデータでは2~4倍高めるとされています。脳の血管障害には脳の血管がつまる「脳梗塞」と血管が切れる「脳出血」があります。脳卒中が起きると血流が止まって脳細胞が死に始めて、ときには回復不能なダメージを受けたり、突然死に至ります。

糖尿病はアテローム性動脈硬化症にリンクするので脳梗塞のリスクが高くなります。
一般的な症状としては体の片方が急に力が抜けたり、言語障害、顔の片方が無表情になる、視覚障害、体のバランスが崩れる、激しい頭痛などがあります。糖尿病患者で高血圧、高コレステロール血症を併せ持つ人はリスクが高くなります。とりわけ糖尿病患者は脳の中のあちこちで小さな脳梗塞を繰り返し起こす傾向(多発性ラクナ梗塞)があり、これは脳血管性痴呆につながりますから注意しなくてはなりません。

脳血管障害は一刻を争う病気です。救急医療を受けなければなりません。また、2日間もかけて少しずつ少しずつ悪くなるケースもあり、一度おかしくなっても自然と回復する一過性脳虚血症もありますから放置してはいけません。

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眼の障害

眼底の血管がダメージを受ける糖尿病網膜症は、長期間の高血糖と高血圧そして長い糖尿病歴に関連します。当然のことですが高血糖、高血圧、脂質異常を治療して、糖尿病の眼に詳しい眼科医の検査を指示どおりに定期的に受けることが全てです。

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歯周病

糖尿病コントロールは口腔衛生に影響します。高血糖が続くと歯周病が増悪します。従来は歯周病を治療すると血糖コントロールもよくなると言われていましたが、昨年(2013年)12月に歯周病の治療はA1Cの改善にはリンクしない!? という論文が発表されて話題になりました。[JAMA Dec 18, 2013]

ただし、糖尿病は歯周病を悪くするのは確かです。

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心臓障害

糖尿病のいわゆる3大合併症(目、腎臓、神経)は細小血管合併症ですが、太い血管の障害も起こしやすくなります。これが心臓や脳の大血管障害です。心臓に血液を送り込む冠動脈疾患がそうで、具体的には狭心症と心筋梗塞です。高血圧、脂質異常、高血糖を治療し、ヘルシー食、エクササイズ、体重管理が基本です。

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消化器の障害

長期にわたるコントロール不良の糖尿病は末梢神経障害を起こします。内臓を制御する自律神経も末梢神経の一部ですが、ここにも異常を生じます。消化器の症状としては便秘や下痢、腸に食物を送れなくなる胃無力症(胃不全まひ)などがあります。とてもつらい毎日になってしまいます。

治せない神経障害を予防するには、血糖値を目標レンジに収めるのが第1です。

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腎臓障害

長年の糖尿病と高血糖が自覚症状がほとんどないまま腎臓の糸球体の毛細血管を障害します。定期的な血液・尿検査で初期の異常を見逃さないようにしなければなりません。

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肝臓の障害

過食による肥満がインスリン過剰分泌を招き、それが脂肪肝を引き起こします。脂肪肝になると食後のブドウ糖を多く取り込むことができないので血糖値をさらに押し上げます。脂肪肝を直接治療する方法はありませんが、食事療法と運動療法で肝臓の脂肪を減らすことはできます。

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性機能障害

長期にわたる糖尿病と慢性的な高血糖は男女を問わずに性機能トラブルの原因になります。ペニスの血流障害はEDの元ですし、末梢神経障害でもEDになります。女性も末梢神経障害によるヴァギナの乾きや頻尿などでリビドーが低下し、性器感染症にもかかりやすくなって痛みやかゆみを感じます。

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足(脚)の血管障害

動脈硬化が脚の動脈に起きると閉塞性動脈硬化症になります。太い動脈や中くらいの動脈が狭くなったり(狭窄)、ふさがった(閉塞)状態です。足が冷えたり、歩くと痛みを感じるようになります。早期に、循環器の専門医に診断してもらうのが大切です。糖尿病患者の10~15%に合併します。

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足の末梢神経障害

長い糖尿病歴と高血糖によって、せき髄から手足に伸びる末梢神経に障害が起こります。初期には手足のしびれや感覚の麻痺が現われますが、進行すると患者のQOLを惨めなものにします。糖尿病患者の50%がこの障害で苦しんでいますが、早期に本気になって糖尿病コントロールに取り組めば予防とある程度の回復は可能です。

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検査で見る合併症予防

糖尿病の管理目標は患者一人ひとりによって担当医が判断します。下記リストは指標です。

A1C(NSGP値)                           7%未満
血圧                                         130/80mmHg未満
(家庭血圧の測定)                       125/75mmHg未満
LDLコレステロール                     120mg/dl未満
HDLコレステロール                    40mg/dl以上
中性脂肪                                   150mg/dl未満(早朝空腹時)
アルブミン/クレアチニン レシオ   30mg/g未満
eGFR                                        60ml/min/1.73m2以上
ABI                                           0.91~1.3
BMI                                          18.5~24.9

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