野菜、果物、全粒穀物、豆類は善玉糖質食品です (c)KAWAI Katsuyuki

野菜、果物、全粒穀物、豆類は善玉糖質食品です
(c)KAWAI Katsuyuki

食後の血糖上昇のほとんどが食品成分の炭水化物(糖質)によるものですから、糖尿病の人がそれをある程度制限するのは当然のことです。ただ、医療プロバイダーの栄養指導で、まず理想体重を基準にしたエネルギー摂取量を決めて、一律にエネルギー比で50~60%を炭水化物で取るように指示するのは、元になる考えはよく分かりますが少し安易すぎるような気がします。

なぜなら、炭水化物の適切な摂取量はとても個人差の大きいもので、例えば使っている薬の種類や分量、目標とする血糖コントロール、体の活動量、インスリン抵抗性の程度、体重の増減や月経などのホルモン変化、あるいはその人の食事の好みや年齢、生活環境などによって大きく変ってくるからです。

血糖値を正常域に保つ糖質の摂取量(グラム単位)は?

体にはブドウ糖しかエネルギーに使えない組織が色々あります。赤血球を例にとりますと、赤血球にはエネルギーを発生させるミトコンドリアがありませんからブドウ糖(解糖系)しか利用できません。脳や神経細胞もクリーンな高エネルギー源のブドウ糖を使います。そのため、ケトーシスを起こさないように少なくとも50g/日の糖質は必要ではないかと考えられています。

1型糖尿病患者に信奉者が多い超ローカーブ・ダイエットで有名なリチャード・バーンスタイン医師の食事指導は、一日わずか30~60gの糖質摂取で正常血糖を目指そうというものです。いささか計算が合わないような気がしますが、体は必要に応じて肝臓や腎臓で乳酸やアミノ酸からブドウ糖を生成(糖新生)できますからなんとか帳尻は合うのでしょう。

以上は極端な例ですが、糖尿病者の食事プランには一日分の糖質摂取量を決めるだけでなく、各食事や間食の糖質を偏らないように分けておく必要があります、一般的には女性は一日3回の各食事で約45gあるいはそれ以上の糖質を取ることができますし、男性は体が大きいですから各食事で60gあるいはそれ以上の糖質を取ることで安定した血糖コントロールができると考えられています。

自分に合った糖質を取っていることを確認する方法

1回の食事で45gの糖質摂取を実行しているとします。まず、カーブカウンティングで約45gの糖質を計算できたら、直前の食前血糖を測定します。そして食事を始めた時から2時間後の食後血糖値を測定し、その差が40mg/dlを超えていなければ糖質と薬、活動量のバランスが取れていると見なせます。いつも食後血糖値が食前血糖値より40mg/dl以上高ければ、カーブカウンティングの精度や血糖降下薬の種類や処方量にも問題がありそうです。

このような食前・食後の血糖測定を、朝・昼・夕、週日・週末に分散して数回行えばパターンが分かりますから、担当の栄養士や医師から食事内容や薬のアドバイスや改善を受けることができます。

糖質制限食から学ぶこと

逆説的ですが、糖質食品をよく知ることで糖尿病患者でも「糖質」を怖がることが減ると思います。糖質制限食とはクリーンで高エネルギー源の糖質をむやみに減らすことではなく、善玉糖質食品を計画通りに必要量取ることであることが自分で理解できるようになります。
糖質と言うと、何か甘い物をイメージしがちなので、ここからは炭水化物と言い換えますが、炭水化物を多く含む食品群は次のようなものです。
  • 野菜
  • 果物
  • 穀物(米飯、パン類、シリアル)
  • 牛乳と乳製品
  • 加糖加工食品(ケーキ、クッキー、ソフトドリンク)
野菜、果物、全粒穀物、牛乳となればヘルシー食品の代表です。これらの炭水化物食品と過不足のないタンパク質、ヘルシーなオリーブオイルや魚の油たっぷりの食事は、体のエネルギーレベルを高め、空腹感もなく、糖尿病合併症だけでなく、いろいろな生活習慣病からも守ってくれます。

15年以上も前から米国糖尿病協会は3大栄養素摂取比率の推奨をやめています。なぜなら、糖尿病者の食事は血糖値、血中脂質、血圧、体重の目標を達成するものでいいのです。それは、ある人にとって炭水化物を制限するものでしょうし、別の人には野菜や未精白の穀物、豆類をより多く取る食事になるでしょう。
文字通り摂取制限をすべきなのは、飽和脂肪酸とトランス型脂肪酸、コレステロール、食塩ぐらいなものです。
私は糖尿病者の糖質制限食というものは、ヘルシーな糖質食品を選び、外部インスリンあるいは自分の体のインスリン分泌能に合う糖質摂取量を各食事で守ることだと理解しています。

ところで、炭水化物や糖質の記事を書く時は、言葉の定義がどうも人によって違うようなので気になって仕方がありません。次回は糖尿病患者にとって「炭水化物とは?」を改めて考えてみます。

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