あなた向けの商品が、すぐ届けられますけど、どうされます?
日本通信販売協会によれば2013年度の通販売上高は5兆8,600億円(前年比8.3%増)。1998年度以来、15年間増加し続けています。ここ10年間の平均成長率は7.7%。通販が伸びると重要なのが物流で、特に末端の物流センターから顧客宅までのラストワンマイルをどう攻略するかが鍵になります。あなた向けの商品が、すぐ届けられますけど、どうされます?
アマゾンが2013年12月にアメリカで特許取得したのが、顧客が注文する前に商品を配送する「投機的出荷」。英語名は「Anticipatory shipping」でAnticipatoryには「予想して、見越して」という意味があり、shippingは「輸送」という意味です。
顧客がアマゾンで買うか実店舗で買うか検討する時、重要な要素が商品が届くまでの時間。そこでアマゾンが考えたのが顧客が買いそうな商品をあらかじめ顧客近くの物流センターまで移動させておくこと。これなら「すぐ近くに商品があるけど、どうする?」と顧客に提案できます。
では、どうやって顧客にあった商品を選ぶのでしょうか?
ビッグデータを駆使して商品を推薦
あなた好みの本をレコメンデーション機能で推薦
アマゾンではデータベースを駆使し、同じ本を買った人がよく買っている別の本を推薦し、関連購買を誘います。これは協調ベース型と呼ばれるやり方。同じような興味や嗜好をもつ人をグループ化し、そのグループに属する人は同じような行動をするだろうという仮説で商品やサービスを推薦します。検索したキーワードや閲覧だけした商品も分析に使われています。
定期的にアマゾンが顧客へおすすめ商品をメールで送っていますが、まもなく商品が家に届くまでの時間が表示されます。そして顧客は「面白そうな本が30分以内に届くのなら、わざわざ本屋まで行くことはないな。」とアマゾンの術中にはまります。
長年のつきあいで顧客の嗜好がよくわかっているデパートの外商は顧客にあった商品を携え訪問販売していますが、この外商に近いことをシステムで実現することになります。
空中配送でラストワンマイルの配送時間を短くする
空中配送でラストワンマイルの配送時間を短くする
ドミノ・ピザ社でも、ピザの宅配に小型無人ヘリコプターを考えており、名前は「ドミコプター」。ピザを2枚載せて運ぶヘリコプターで、こちらも実験中。グーグルは「ドローン」と呼ばれる飛行機型無人機を使った物資の配送システムを開発中です。
いずれも信号や渋滞を気にせず運べる「空飛ぶ宅配便」となります。ただ課題も多く、飛行許可や航路となる住宅地の許可をいかに取るか、庭先に運ぶため顧客が確実に現場にいること、受取の確認方法、風雨時の対応をどうするかという問題があります。
再配送率をいかに下げるかが鍵
再配送率をいかに下げるかが鍵
物流では配送コスト(人件費+輸送費+システム費)を常に考えなければなりません。ネットスーパーで無料配送していた事業者が配送コストが吸収できず中止となることもありました。配送コストを上げる大きな要因が再配達。宅配便の再配達率は6割にもなっており、CO2削減の観点からも問題になっています。
送る側が届ける相手のことがよく分かっている場合は配送依頼時に時間指定してもらえますので、再配達率を減らせます。問題は相手のことがよく分からない場合。そこで宅配業者が力をいれているのがメール登録。宅配業者のサイトにメール登録しておくと、荷物が届く予定日・時間帯を事前にメールで知らせてくれます。荷物が届く前に、サイトを通じて受取日・時間帯や受け取り方法を変更できるので再配達率を下げることができます。ただメール登録する人を増やすPRが必要。
再配達率を下げるために宅配業者が活用をはじめているのが主婦パート。各地域で主婦パートを雇い、セールスドライバーがまず主婦宅まで荷物を運びます。主婦パートには自宅周辺へ荷物を届けてもらいます。主婦ですから地域や住民のことがよく分かっており、配送先の生活時間にあわせた配送が可能になります。
実際、離島などでは地場の運送会社が複数の宅配会社から配送業務を請け負っており、地域密着の会社なので地域や家庭の不在時間もよく把握できているため再配達率をなるべくなくし物流コストを下げています。
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