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ジャズメンと結婚!ジャズにおける夫婦のそれぞれ(2ページ目)

ある意味狭い世界で生きているジャズプレイヤーは、男女の出会いの場もありそうでなかなか……。多くの場合が、同業者か熱狂的なファンと知り合い、結婚に至っているようです。今回は、ジャズと言う特殊な世界で、同業者同士で結婚した3組の夫婦、それぞれのお話をお送りいたします。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

 

仕事を通して支えあった2人 ジャズヴォーカル界のファースト・レディ エラ・フィッツジェラルドと文字通り低音で支えたべーシスト レイ・ブラウン

ジャズ界きっての実力派であり人気ヴォーカリストの、エラ・フィッツジェラルドは、そのファースト・レディのあだ名の通りに、終生を忙しく仕事に追われました。彼女の人気が、彼女を休ませてくれなかったのです。演奏活動や録音に明け暮れた毎日の中で、9歳年上の姉さん女房の彼女を低音の魅力で支えようとしたのがベーシストのレイ・ブラウンでした。
エラ・アンド・ルイ

エラ・アンド・ルイ 

「エラ&ルイ」より「キャント・ウイ・ビー・フレンズ」
ここでは、テクニシャンのピアニスト、オスカー・ピーターソンやドラマーのバディ・リッチと言った実力者が顔をそろえて、エラをサポート。その上、エラにとっても父親くらいの貫録を備えたトランペット&ヴォーカルの巨人、ルイ・アームストロングとの共演。

そして、何よりもベースのレイ・ブラウンが強力に音楽をささえ、そのかいあってか、いつも以上にリラックスしたエラの歌を聴くことができます。

実はエラとレイはこの1956年の吹き込みの4年前には、5年間に及んだ幸せな結婚を解消し、離婚していました。2人の間には、養子ですが息子も1人おり、お互いが家族としてささえあった時期があったということは事実です。

2人は離婚後も仕事の面では共演することが多く、けんか別れと言うよりも、良い関係の友達に戻ったということなのかもしれません。

この「エラ&ルイ」の録音後、私生活、特に恋愛ではやや迷走してしまうエラですが、レイは仕事を一緒にすることでずっと彼女を支えていこうと思っていたのかもしれません。

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レイ・ブラウンと言えば、何と言ってもオスカー・ピーターソンとの黄金のトリオが有名です。腕達者なスキのないトリオの演奏は、どれもが推薦に値する出来ですが、ここでは、レイがビッグ・バンドを率いた作品をご紹介します。
オールスター・ビッグ・バンド+ミルト・ジャクソン/レイ・ブラウン

オールスター・ビッグ・バンド+ミルト・ジャクソン/レイ・ブラウン

「レイ・ブラウン・ウィズ・ジ・オールスター・ビッグバンド」より「トリクロティズム」
もともと、8歳上のデューク・エリントン楽団のベース奏者ジミー・ブラントンにあこがれていたというだけあり、地味な印象のレイのベースの音が、実はビッグサウンドで、ビッグ・バンドの大音量にも負けない存在感を発する音だということがわかる演奏です。

この曲「トリクロティズム」は、やはり先輩にあたるベース奏者オスカー・ペティフォードの代表作。ベーシスト御用達のような名曲を、レイなりの切り口で、大編成のビッグバンドで表現しています。途中に入るレイのベースソロも聴き物。共演のアルトサックス奏者キャノンボール・アダレイも好調そのものの演奏を繰り広げます。

一見地味ですが名人のレイ・ブラウンは、その実力の通りに一流の人々より声がかかり、幸せな音楽生活を送ったことは間違いがありません。一方9歳上のエラの人生は、その音楽での目覚ましい業績から比べると、淋しいものだったようです。

エラは、晩年病を患い、盲目になり、その上手術で両足を切断されてしまいます。そしてその3年後、レイに先立つこと6年前の1996年にひっそりと亡くなりました。享年79歳。レイは2002年に公演先のホテルで亡くなります。享年75歳。

夫婦としては結局上手くいきませんでしたが、お互いがお互いの仕事と人間性を認め合っていた2人でした。

次のページには、浮気がちな夫をなんとか支えようとする美人シンガーの登場です!

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