第2位 ヴァルブトロンボーンの達人 ボブ・ブルックマイヤーのピアノ 「アイヴォリー・ハンターズ」より「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト」
The Ivory Hunters. Double Barrelled Piano (Bonus Track Version)
そのちょっと変わり者のボブと、当時新進気鋭のピアニスト、ビル・エヴァンスとの録音です。ボブはこの時、もちろん本職のヴァルブトロンボーンで呼ばれ、スタジオ入りしました。一方ビルはこの同じ年1959年にはマイルス・デイヴィスの世紀の名盤「カインド・オブ・ブルー」を録音して、乗りに乗っている時期です。
そのビルを前にして、スタジオにもう1台あったピアノを遊びで弾くうちに、乗ってきたボブ。本職のヴァルブトロンボーンを置いたままで、ついにはビルとのピアノ二台で全曲録音してしまったという変わり盤がこのCDです。
それにしても、お相手は絶頂期に入ろうとしているピアノの逸材ビル・エヴァンス。そのエヴァンスと、真っ向から対抗して録音してしまうのですから、もはや余技とはいえない芸域です。
実はボブは、そのキャリアの最初はピアニストでした。グレン・ミラー楽団の人気テナーサックス奏者だったテックス・ベネキーのバンドでピアニストとして仕事をしました。そして、その後ヴァルブトロンボーンに専念して活動していったわけです。
こういった楽器を変えて成功した例は、結構多くあります。テナーサックスの両巨頭、ジョン・コルトレーンとソニー・ロリンズや白人テナーの巨人スタン・ゲッツは最初アルトサックスを吹いていました。ドラマーのアート・ブレイキーはピアニストでしたし、ヴィブラフォン奏者のライオネル・ハンプトンは最初はドラマーでした。
仕事を得るために、楽器を変えるということはよくあることではあったにしろ、さすがにその道の第一人者になった人は、ほかの楽器でもそこそこ立派に仕事をしていたようです。
それにしても、3曲目「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト」で聴くことができるボブのピアノは、相当なものです。ビルに引けを取らないどころか、両者が対等に音楽を引っ張り、そして絶妙なブレンドによって、スウィンギーに創造していくという作品になっています。
そして本職のヴァルブトロンボーンでは、オーソドックスなプレイヤーのイメージが強いボブですが、ピアノは先鋭的なのが面白いところです。実は、ボブはそのオーソドックスなトロンボーンのプレイと、大人しい印象のルックスとはちょっと違う、エキセントリックな面白い男なのかもしれません。
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そのボブが、本職のヴァルブトロンボーンで吹き込んだ名演がコチラ!
ボブ・ブルックマイヤー&フレンズ
メジャー・レーベルRCAだからこそ、集め得た豪華なメンバーに、一歩も引かないボブのトロンボーンを堪能できます。
RCAと契約しているという事実だけでも、実は日本での人気以上にメジャーなプレイヤーだということがわかるボブです。盟友スタン・ゲッツとの「ミスティ」が聴きもの。
次はいよいよ第1位の登場です。天才ドラマーが構築する余技とは思えない広がりのあるオーケストレーションとは?
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