ジャズ/恋愛シーンで聴きたい名曲ジャズ

恋愛シーンにピッタリのジャズベスト7選……カッコよく演出!

恋愛シーンをカッコよく演出するためにも、お気に入りのジャズ・JAZZのCDは揃えておきたいところ。「でも、何から聴いたら良いのか分からない」という人のために、恋愛シーンにピッタリな定番7選をご紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

恋愛シーンにピッタリのジャズベスト7選!

恋愛シーンにピッタリのジャズ

恋愛シーンにピッタリのジャズ

最近では、ちょっと街に出るだけで色々なお店のBGMに、ジャズが使われているのを耳にします。特に、デートで使うバーや、レストランなどでは、今やジャズは欠かせないトレンド。あなたのお部屋での恋愛シーンをカッコよく演出するためにも、お気に入りのジャズCDは揃えておきたいところです。

「でも、何から聴いたら良いのか分からない」という人のために、今回は、恋愛シーンにピッタリな定番7選を七位から順にご紹介しますね。
 

第七位 超有名ピアノ奏者 ビル・エヴァンス 「ワルツ・フォー・デビー」より
「マイ・フーリッシュ・ハート」

ワルツ・フォー・デビイ+4

ワルツ・フォー・デビイ+4

「ジャズは興味があるけど、ドラムがうるさく感じて……」という方は意外と多いようです。それでも「ジャズはあまり分からないけれど、後ろの方でシャーッというのはすごく好きです」という話も良く聞きます。そのシャーッという擬音で表現される楽器が、実はうるさいと言われているドラムのブラシの事なのです(ブラシとは、ドラムが通常のスティックではなくて、文字通りブラシ状のものでミュートを効かせて演奏する方法、シャー・シャーとかシャカ・シャカという風に聞こえます)。

特にブラシが好きという女性は多いようです。この超有名ピアノ奏者、ビル・エヴァンスによる「ワルツ・フォー・デビー」は、そんなブラシ好きのあなたにピッタリのアルバムと言えます。

このCDではビル・エヴァンス・トリオ(ビル・エヴァンスのピアノとベースとドラムによる三人)のベース奏者、スコット・ラファロにばかり目が行きがちですが、ドラム奏者のポール・モチアンのブラシプレイも見逃せません。

ポール・モチアンは、収録された曲のほとんどをブラシで演奏している徹底ぶりで、このトリオの繊細な音づくりには、ドラムのブラシが計算された物だという事がわかります。

このライブCDは今から52年前の1961年、6月25日の日曜日に、ニューヨークの由緒あるジャズクラブ「ヴィレッジ・バンガード」で録音されました。ライブだけあって演奏の後ろからは、グラスの音やお客の笑い声などが入っていて、聴いている私たちは、まるで雰囲気の良いバーかホテルのラウンジでリラックスしている様な贅沢な時間を過ごせます。

ピンと張りつめたエヴァンストリオの演奏ですが、いつの間にかその緊張感は気にならなくなって、どんどん二人の会話が弾んでしまうという感じです。そのわけは、このCDがジャズクラブの雰囲気ごと全て録音されているからかもしれません。

会話に夢中の内にいつの間にかCDが終わり、また一曲目の「マイ・フーリッシュ・ハート」が始まる。そこで、見つめ合う二人は、ピアノの美しさにあらためてハッとするというような、理想的なCDです。

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第六位 有名アルト奏者、ジャッキー・マクリーン「4,5&6」より
「センチメンタルジャーニー」

4,5&6

            4,5&6

 このCDも何と言っても一曲目の「センチメンタルジャーニー」から聴いてください。この「センチメンタルジャーニー」は、ポピュラーソング「ケ・セラ・セラ」の大ヒットで、アメリカのみならず、全世界的に有名な歌手、ドリス・デイの1944年の初ヒット曲です。その有名なテーマを、ジャッキー・マクリーンは独特のアルトサックスの音色で、奇をてらう事無く、切々と奏でます。
 

ジャッキー・マクリーンと言えば、思春期の甘酸っぱさを思わせるトーンと一言一言語りかける様なプレイが真骨頂。この録音当時25歳になったマクリーンの、10代のメジャーデビュー以来変わらないその瑞々しさは際立ちます。

最初は喜びであったものが、いつしか当たり前になりがちなのが、恋愛感情です。もし、お二人の関係が今少しクールダウンしてきたとお感じでしたら、ぜひこのジャッキー・マクリーンの「センチメンタルジャーニー」を聴いてみてください。

チャーリー・パーカー直系の有りあまるテクニックを持ちながらも、それを感じさせる事無く、聴いている方がはにかむくらいに、ストレートにテーマを歌いあげるマクリーンの純粋さに、お二人が出会った当初を思い出させてくれるかもしれません。いつまでもフレッシュな関係でいたいお二人におススメです。

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第五位 有名ピアノ奏者、アート・テイタムと有名テナーサックス奏者ベン・ウェブスター 「クァルテット」より
「オール・ザ・シングス・ユー・アー」

アート・テイタム~ベン・ウェブスター・クァルテット+3

      アート・テイタム~ベン・ウェブスター・クァルテット+3

このCDは例えるなら、ヨーロッパを感じさせる古い映画のワンシーンです。人気のない曇り空の遊園地。大観覧車をバックに、トレンチコートの襟を立てたオーソン・ウェルズ似の男がどうやら誰かを待っているようです。

流れる曲はCD二曲目の「オール・ザ・シングス・ユー・アー」。バックでは静かにウッドベースのアルコ(弓弾き)が男の状況の深刻さを表し、次のシーンでは乗る人のいないジェットコースターのようなアート・テイタムのピアノが、忙しげに上下降しています。

そこに、ダンディズムを湛えるテナーサックスがかすれたサブトーン(サックスの息が漏れる様な低い音で、ビブラートをかける奏法)で待っている男のテーマを奏で、大人の色気を醸し出します。

テナーサックスでムードを出すのにサブトーンほど、もっとも伝統的でしかも効果バツグンの奏法はありません。でも、あまり使い過ぎると、下品な感じになってしまうのもこのサブトーンの難しいところ。ここではサブトーンの第一人者、有名テナーサックス奏者ベン・ウェブスターによってあくまでも上品に奏でられています。

恋愛シーンでは常に状況に応じたムードを演出する必要があります。このCDは、大人のミッドナイトに最適なムード空間を提供してくれます。二人の大切な時間に、このCDがふさわしいと感じたら、もう二人だけの濃密な恋の時間の始まりです。

恋愛シーンにピッタリな定番ジャズ・JAZZベスト7、第四位からは次のページで紹介します。

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第四位 有名ピアノ奏者 デューク・ジョーダン 「フライト・トゥ・デンマーク」より
「ノー・プロブレム」(危険な関係のブルース)

Flight to Denmark

Flight to Denmark

このCDはまずジャケットが秀逸です。辺り一面の銀世界。そこに人目をはばかるように佇むワケありの男。おそらくは同行した女性の手によって取られたと思われる秘密のショット。二人は決して一緒に写真に収まる事はありません。二人の関係はまさに危険な関係です。
 

そんな想像力を駆り立ててくれるこのCDの一曲目「ノー・プロブレム」には邦題で「危険な関係のブルース」という題名がついています。この曲の作曲者で演奏しているのは、ピアノ奏者のデューク・ジョーダンです。

この曲は、彼の出世作でもありますが、トラブルに巻き込まれた思い出の曲でもあります。そのトラブルとは、何と自分の作曲したこの曲が、他人の曲として先に有名になってしまったのです。自分の分身とも言える大切なものが、人の手に勝手に渡ってしまった男の悲哀をデューク・ジョーダンほど感じている男はいないかもしれません。

曲の冒頭、ドラのようなシンバルの響きが、何か劇的な変化が起こった事を暗示しています。続いて流れる不安定なドラムのリズムに、確信を思わせるベースのリズムが重なります。そして、冷やかに覚悟を決めたピアノの音色が、二人の逃避行を思わすテーマを淡々と綴って行きます。

恋愛シーンでは、この手の訳ありな話は日常的に起こりがちです。それでも、恋は恋。人の気持ちは誰にも止める事が出来ません。道ならぬ恋もまた大人の一つの答えかもしれません。

「ノー・プロブレム」(問題無し)という題名は、恋の逃避行を続ける二人の必死な思いを投影しているのかもしれません。

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第三位 有名トランペット&ボーカル、チェット・ベイカー「枯葉」より
「シー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」

枯葉

       枯葉

恋愛シーンでは、おそらくは出会いと同じ数だけ別れがあります。昔の恋人を懐かしみ、惜しむ気持ちを歌詞に込めたこのCDの二曲目のバラード「シー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」。

この曲はもともと「ヒー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」という題名で、女性が歌うものでしたが、ここでは男性トランペット&ボーカルのチェット・ベイカーによって「ヒー」を「シー」に代えて歌われています。他にも歌詞の部分で「クイーン」を「キング」に代えており、自分があなたにとっての恋の王様だったと歌われる部分には、別離を受け止められない切なさ、深い後悔を感じます。

やさしいストリングスに支えられるように、どこか頼りなげに歌いだすチェット。歌い上げるごとに感情がこもり、ちょうど演奏が始まって2:00のところで「アイム・ソー・ブルー」と心からの絶唱を響かせます。

続くチェット自身のトランペットの間奏にも、取り返しのつかないものごとを静かに受け止めようと努力している姿を感じます。そして、その姿にこそ、ロマンチックな香りが宿っています。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、人は皆老いて、ついには誰もが命のともしびを消す運命にあります。チェットが歌うものは、去って行った恋人に見立てた過ぎ去りし自分の時間だったのかもしれません。ドン・セベスキーのストリングスとボブ・ジェームスのエレクトリックピアノがあくまでもやさしくいたわるように演奏されるのが印象的です。

もし、あなたが大切な人との別離に苦しむ時が来たのならば、是非とも思い出してほしい演奏です。

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第二位 超有名トランペット奏者 マイルス・デイヴィス 「クッキン」より
「マイ・ファニー・バレンタイン」

クッキン

       クッキン

人は誰もが、簡単に手に入るものより、苦労して得たものの方を大切に思うそうです。それは恋愛シーンもまったく同じ。ロミオとジュリエットの昔から、手の届かない所にあるからこそ、さらに愛しさが募るのが恋愛のダイゴ味です。

そんな甘くない辛口の恋愛シーンを求めている人には、恰好のBGMがこの超有名トランペット奏者のマイルス・デイヴィスによる「マイ・ファニー・バレンタイン」です。
 

ピアノのレッド・ガーランドによる美しいシングルトーンのイントロ(前奏)に続き、おなじみのテーマがマイルスによって奏でられます。そもそも、この曲はスタンダードとして、多くのミュージシャンに取り上げられ、あらゆるジャズのスタンダードの中でも最も有名な曲と言ってよいもの。あなたもこのメロディはどこかで一度は聞いた事があるはずです。

マイルスは、その有名な甘いテーマをそのまま吹くのではなく、あくまでもマイルス自身の歌としてフェイク(くずし)をしながら綴って行きます。そこには決してスイートミュージックではない、マイルスの考えるこの曲のビターな世界が展開されています。

マイルス・デイビスといえばミュート(トランペット用の弱音器、ベルと呼ばれるトランペットの先端に差し込んで使う。マイルスはハーマン社の物を愛用)プレイと言われるほど、ミュートでの演奏を好んでいました。この「マイ・ファニー・バレンタイン」はそんなマイルスのミュート演奏の決定版と言われるものです。

また、この「マイ・ファニー・バレンタイン」という曲自体もマイルスの演奏が決定版の一つとされているものです。マイルス自身もこの曲が気にいったのか、この後ライブなどで頻繁に取り上げる重要なナンバー(曲)になっています。

もしこのマイルスの演奏が気にいったのなら、沢山ある他の演奏家のこの曲も是非集めてみてください。きっと、多くのあなたの気にいる演奏に出会えるはずです。すべては出会いから始まる恋愛シーン、好きな曲との出会いも同じです。

恋愛シーンにピッタリな定番ジャズ・JAZZベスト7、次のページではいよいよ第一位の登場です。

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第一位 超有名テナーサックス奏者、スタン・ゲッツ 「ザ・ドルフィン」より
「タイム・フォー・ラブ」

ザ・ドルフィン

ザ・ドルフィン

いよいよこの「恋愛シーンにピッタリな定番ジャズ・JAZZベスト7」も第一位の登場です。

曲は「いそしぎ」などのヒット曲を多く書いている作曲家ジョニー・マンデルの「タイム・フォー・ラブ」。このCDでは、二曲目に入っているバラードです。演奏するのは、超有名テナーサックス奏者、スタン・ゲッツ。

前奏も無く、曲はゲッツのテナーサックスから始まります。ピアノが絡む最初のフレーズから、周りの世界は二人だけのものに変わります。

ここでのゲッツのテナーサックスは、得意のビブラート(音を伸ばす時にふるえる様に音程を上下させる方法)を駆使して、魅力的なテーマをさらにしっとりと歌い上げて行きます。

それにしてもスタン・ゲッツほど恋愛シーンにピッタリのジャズミュージシャンはいません。6歳からニューヨークのブロンクスで育ち、16歳から有名トロンボーン奏者ジャック・ティーガーデン楽団でプロ活動に入りました。都会っ子で早熟な白せきの美少年、ゲッツ。それに、「リリカル」と表現されたあのやさしい音色です。当時の仲間の証言にもあるように、さぞかし女性にもてた事でしょう。

そんな、粋なゲッツだからこそ、洗練された大人の恋を表現できると言えます。恋愛シーンでは真面目なだけではすぐに飽きられてしまいます。ハラハラさせるくらい、もしくはちょっと悪いのではと思わせるくらいの余裕が、むしろ人間的な幅となり恋愛をさらに情熱的なものに変えるのです。

そういった意味ではゲッツのテナーはまさにプレイボーイのテナー。ゴリ押し一辺倒ではなく、引く事や駆け引きにもたけた大人のテナーです。しかも、普段は高い音域を使って、男の優しさをさらっと見せる事にもためらいません。そして、場面によっては躊躇なく突き放すクールなところにさらに魅力を感じてしまうのです。

テーマの部分の1:40のところでは、高いところからテナーサックスの一番低い音まで流れる様に、しかも力強く鳴らして見せます。ここがプレイボーイテナー、ゲッツの真髄。すぐに、高い音でやさしく撫でるようにテーマに戻るのが心憎いばかりです。

曲を切々と吹き終え、そのゲッツの後には、ピアノのルー・レヴィのソロが続きます。このピアノソロも素晴らしいですが、ゲッツはというと、観客の拍手を背に浴びながら、おそらくはグランドピアノの中からウイスキーグラスを取り出しグッと一気にあおり、後ろを向いたままでタバコに火をつけたのではないでしょうか。そんな冷たい姿にも、観客の目は釘づけだったはずです。

恋愛シーンでは、たとえ周りの人すべてを敵に回しても、目の前の相手の心に火をつける事が出来ればOKです。今回ご紹介したCDが、少しでもあなたの恋愛のお手伝いが出来る事を祈っています。

さあ、それでは私も恋を探しに出かけてきますね。また次回お会いしましょう。

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