小野寺修二 世界初演作『赤い靴』
フェスティバルのオープニングを飾るのは、小野寺修二による世界初演作『赤い靴』。キャストは片桐はいり、ソフィー・ブレック、藤田桃子の女性3名。片桐さんは2010年の作品『異邦人』と2013年の作品『カルメン』にも出演し、小野寺さんとタッグを組むのは今回で3作目を迎えます。美術は2009年の小野寺作品『点と線』も手がけたニコラ・ブッフェが担当。アートと演劇、ダンスが混交する小野寺ワールドを提示します。記者発表当日は、振付・演出の小野寺修二、キャストの片桐はいりと藤田桃子が登場。クリエイション中の『赤い靴』から一部を披露し、引き続き会見に臨みました。
ショーイングの模様
小野寺> 青山円形劇場というのは僕にとって非常に思い入れのある劇場で、東日本大震災の時まさにここで公演をしていたり、やはり円形劇場で発表した作品が演劇の賞をいただいたりと、いろいろな意味でキーになっている場所でもあります。
近頃ダンスに限らず演劇にしてもそうですが、作品を発表する場が少なくなっているように感じるし、失われつつあるのではないかというちょっとした恐怖を覚えています。そうした時代のなかで、しかもダンスに特化したフェスで作品を上演するにはどうあるべきか。模索の末、今一番信用している女優さんである片桐はいりさんと、動きでどれくらいものごとができるかということにチャレンジしようという考えに行き着きました。
もうひとり、僕の大好きな女優さんであり、フィジカルシアターに多数出演されているソフィー・ブレックさんも出演します。美術はフランス留学時代からの友人であるニコラ・ブッフェさんにお願いしました。ニコラさんの美術に、片桐さんとソフィーさんという演劇をやってきた身体、そして藤田桃子のマイムによる女性3人の作品をつくろうと思っています。
会見の模様
片桐>小野寺さんの作品はいろいろなピースをみんなでつくり上げていくのが特徴で、私もワークショップの段階では結構踊っているんですけど、本番になると動きは大抵カットされていて(笑)。ただ今回初めて人前で動いていいと言われたので、長年の夢が叶って良かったなと思いつつ、ものすごく緊張しているところです。
演劇にしてもそうですが、気持ちと身体は切り離せないものであり、どこまでがダンスでどこまでが決められた動作なのかわからない部分もある。小野寺さんとはいつも、“第三の道を探りたいね”と言いながらこれまでやらせていただいてきました。動きとも演技ともダンスとも違うような、新しい場所が見えたらなという気持ちです。
ただ最近は俳優さんも踊ったりするし、何でもアリと言われるとまた辛い。そう見られないためにはどうすればいいかということを、これから3ヶ月かけて一生懸命探っていこうと思います。
ショーイングの模様
小野寺>はいりさんはお芝居における“どうしてここで動くのか”“どうしてここで話すのか”という部分を非常に熟知してらして、“相手を見てこう行く”という肌触りが一緒にやっていてものすごく勉強になっています。はいりさんと作業をしていると、もしかするとリズムや音楽、物語やテーマじゃないところに動きがあるのではと思えてくる。踊るためにスタートしていないという部分を上手く形にしたら、新しい動きのアプローチができるのではと……。
僕は今コンテンポラリー・ダンスというジャンルの中に入れていただいていて、それはとても心地良くもあり、チャレンジでもあり、沢山のエネルギーをもらっています。ただ、世の中でいうダンスと自分たちが目指してるものが果たして合ってるかどうかというのはよくわからなくて……。
“何でもダンスって言っていいよ”というのではなく、こうだと信じたことをある種の表現として貫きたい。みなさんに“これはダンスなんです”といちいち説明するのではなく、観てはじめて“これはダンスなんだ”って受け取ってもらえたらありがたい。その精神は曲げずにいきたいし、誇りを持ってこれからも続けていくつもりです。またそれが唯一無二のものになるものになる可能性があるとも考えていて、フェスでは頑張ってそこに着地したいと思います。
photo: Shinsuke Sugino ※画像は 『異邦人』