公演が続いていますが、切り替えに苦労することはないですか?
奥村>作品の切り替えに関してはそれほど大変ではないですね。ただ平行して作品に取りかかっているときは、なかなか頭が付いていかないことも……。ひとつの作品ならまだいいけれど、ダブル・ビルやトリプル・ビルになるともう大変です。違う作品のリハーサルを平行してやっていて、こっちのスタジオである役を踊って、移動してまた違う作品を踊ってーーとなると、自分でも“今何やってるんだっけ?”なんて訳がわからなくなることも(笑)。『ファスター』のときも大変でした。何度も上演されてる作品だと、教える側も“この音でこの振り”というのを確実に覚えているもの。けれど『ファスター』は英国でもまだ一度しか上演されていない作品なので、“どうだったっけ?”なんて感じで逐一ビデオを見返したりして、振付がなかなか進まないんです(笑)。『カルミナ・ブラーナ』も僕は初めて踊る作品だったので、両方覚えなければいけない。それに『ファスター』の振付が長引いたので、『カルミナ・ブラーナ』に割く時間が削られて、ずっと不安でしかたなかったです。
自分の中でぐっと気分が高まるのは、公演の一週間前くらいから。それまでは主役は主役だけ、コール・ドはコール・ドだけと、パートごとに練習している段階なので、まだ全体像がハッキリしないというか……。一週間くらい前になるとランスルー(通し稽古)がはじまって、他のパートの方とも一緒になるので急に緊張感が出てきます。
ランスルーにしても、やっぱり回を重ねるごとに良くなっていく感じはありますね。ただキャストが多ければ多いほどランスルーもあまりできないので、大作になるとたいてい一~二回しか通せない。『カルミナ・ブラーナ』も舞台稽古でようやく初めて通して、すぐ本番。中日でもう一度ランスルーができて、やっと落ち着いた感じ。だから、初日は僕も含めて何人かはとても緊張してました(笑)。
『パゴダの王子』(2011) 撮影:瀬戸秀美