マネジメント/マネジメント事例

3つの基本戦略で紐解くサムスンVSシャープの戦い(2ページ目)

組織マネジメントの中核をなす戦略の策定において、競争優位を勝ち取るための3つの基本戦略の解説をします。実例として、特に様々な面で抜きつ抜かれつの競争が激しい家電業界にスポットをあて、韓国企業サムスンと日本企業シャープの戦略を具体的に取り上げながら、戦略の違いとその成否を見ていきます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

差別化から集中への転換がシャープを苦しくした

差別化戦略とは、他社との差別化をはかり競争を優位に運ぶ戦略のことです。同一市場のライバル他社の製品やサービスと比べてその機能やサービス内容において、市場ニーズを捉えかつ他社に追随されにくい独自性を打ち出し付加価値を生み出します。他社の追随余地の少ない独自性であればあるほど高付加価値商品として認知されるに至り、高収益商品として再投資原資を生みさらなる差別化戦略を推し進めるという流れが確立されます。ただし、差別化商品が大きなマーケットシェアを獲得するのは稀であり、ライバルの逆差別化や低コスト化により差別化の優位性が一気に失われるリスクもはらんでいます。

解説

シャープは戦略の転換が苦境を招いた

日本の家電メーカーでは、古くからシャープが差別化戦略を得意として業界で独自の地位を築いてきました。もともとが筆記用具の差別化商品シャープペンシルから創業した同社は、世界初のダビングデッキなど「他社が真似するものを作れ(創業者:早川徳次)」を旗頭として「目のつけどころがシャープでしょ」のキャッチコピーに象徴される差別化戦略により業界でも一定のポジションを得てきました。しかし、2000年以降の液晶パネルの成功により急激に事業方針をシフトし、一時期は「液晶のシャープ」として集中戦略に転じます。しかし前述のサムスン他海外勢によるコスト・リーダーシップ戦略に敗れ、業績は悪化の一途をたどりました。現在同社は原点回帰を合言葉に、「再度差別化戦略のシャープ」の考え方も踏まえ再建の道を探っています。

集中戦略は、特定の製品、ターゲット、市場などの限定的な領域に、経営資源を集中してより効率的、効果的に成果を上げていくことを目的とした戦略です。ひとつの領域で圧倒的な強さを発揮し確固たる地位を築くことは、他領域にまで影響力が及ぶブランド力の構築にもつながります。しかしながら、ターゲット市場と全体市場の間での顧客の求める製品ニーズの差が小さくなってしまうと、集中効果が激減したり市場そのものが消滅したりするリスクも存在します。上記シャープの液晶パネル市場への傾倒は国産液晶パネルへの集中戦略であったものの、次第にシャープが特化した国産製品の海外生産パネルに対する優位性が薄れ、顧客ニーズが品質から価格に移行する形で集中戦略効果は消滅しシャープは苦境に陥るに至ったのです。

次回も引き続き、基本3戦略の具体例を見てまいります。
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