低層マンションと「地下住戸」について
地下付き建物を建てるには、相当な費用を要する。(当然のことながら)建設に入る前に地面を掘らなければならないからだ。その土を運び出すにもコストがかかる。作業の足場も確保しなければならないが、道路が狭ければその分交通整理の人手も要り、運搬車両の行き来も増やさなければならない。地下住戸はそれだけのコストに見合う価値があるのか。築年数の古い低層マンションを見ているとわかるが、以前は地下住戸のある分譲マンションは少なかった。15~20年前に改正された「地下部分や共用部の容積率不参入」が増加を促したのである。つまり、採算の厳しい第一種低層住居専用地域で、実質的に「制限以上の売床」を確保することが可能になった。これが地下住戸増加の背景である。
容易に想像のつくことだが、地下住戸の窓の向こうはコンクリートの壁。採光上のデメリットや閉塞感から、その売れ行きが思いのほか好ましくない例も散見された。が、設計上の改良を繰り返し、最近では地下住戸が売れ残るというケースは減少。奥行きを広く取り、専用テラスの魅力付けがその主たるものだ。外構上の工夫と合わせてプライバシーにも配慮がなされ、手の届きやすい価格で一戸建てに近い感覚の暮らしができる、と評価を高めていった。
「ハナレ」のある地下住戸
「ザ・パークハウス上鷺宮」は、地下住戸をさらに進化。テラスの向こう側に別棟「ハナレ」を設けた(一部住戸)。テラスの奥行きがたっぷり取れたからこそため可能で、この辺りは敷地の大きさと低い建ぺい率の効用であろう。右の間取り図をご覧いただくと、リビングダイニングに比べて、テラス面積がいかに広いかがおわかりいただけるだろう。販売員の説明では、94平米のモデルルームタイプ(下の画像)で7,700万円(予定価格)前後を見込んでいるとのこと。坪換算で約@270万円程度するのだから、(個人的には)地下階評価も随分と向上した感がする。これも市場の移り変わりというものか。
スケールをいかした共用部
建物はA~C棟に分棟し、南向きが中心。90、100平米といった広めのタイプも用意されている。玄関側に吹き抜けを設けたり、サイクルポートを設置するなど、商品企画上にも敷地の広さが優位に転嫁されている。想像するに、本物件は竣工販売のほうが売りやすいのではないか。理由は、スケールを感じさせる建物ほどその傾向が強いからだが、「ザ・パークハウス上鷺宮」に関していえば、車寄せの設えが異常に立派であること、中庭と南面の庭が(規模を象徴する)季節感を醸成すること、建物内部のライブラリーラウンジをはじめとする共用空間に地下の有効活用を実感できること等を主だった特長として感じたわけだが、いずれも青田(工事中)では確認できないものばかりだ。
中庭(プライベートガーデン)や提供公園(パブリックガーデン)を南に臨む住戸は結構人気が集まりそうな予感がする。棟の間には平置き駐車スペース。住戸選びは好みが分かれそうだ。第1期分譲は5月を予定している。
【関連記事】
「ザ・パークハウス上鷺宮」立地と敷地条件
「第一種低層住居専用地域」は、なぜ人気が高いのか?
【プロが厳選】2014年の注目マンション